53. 姫は『同期』の空気感が好きなようです
そして色々つまみながら、これからのことを話していく。こうやって同期と話すことはもちろん他のライバーさんとも話したことなかったし、楽しいし新鮮だ。
「あのさ。こうやってましろちゃんが男だってことがわかったし、オフコラボとかしたいよね?」
「オフコラボ!?ひなた……あなた何言って……ましろは男性なのよ」
「リリィちゃん。別にオフコラボ=お泊まりじゃないんだから。それにもう大人なんだし、問題ないじゃない。そのくらい責任とれるような行動するし」
「リリィママって……意外に乙女だね。姫はオフコラボ何したい?」
「え?まぁ……やるならリリィさんのお料理配信とかに参加したいかもな。あれずっと観てるけど、月2で配信でスケジュール見ると半年先まで予定入ってるし。」
「なるほど。ましろちゃんは餌付けされたいと」
「姫はエロいな?」
「え?なんでそうなるんだ!?」
「ましろ……そういう風に私を見ていたの?ショックだわ」
おいおいこれ裏だよね?なんで配信みたいな流れになってるんだこれ?
「あっ!そう言えば『双葉かのん』ちゃんも姫のこと知ってるんだよね?オフコラボとか『ましのん』とかやってるし!それならかのんちゃんも呼べるね!」
「そうだけど……1期生コラボは、かのんちゃんにはハードルが高そうだけど……」
「確かに。私は次の企画一緒でこの前挨拶したけど、すごいコミュ障って言うか、人見知りって感じだったかな」
「そうなの?あたしはまだ話したことないなぁ。話してみたいけど」
「噂通りなのね。私も何度か配信一緒になったけど、配信の時は普通に話せるわよね?」
「彼女の中でスイッチがあるんだと思う。普段はオレもほとんど会話する事ないし。それでも『ましのん』になってからは少しずつ話すようになったけど」
本当に鈴町さんはONOFFがはっきりしている。ただ、たまに見せる女の子らしい一面は可愛いくて、それがギャップ萌えというか……って何考えてんだオレは。
そしてひなたさんとポアロさんがお手洗いに席を立ち、とりあえず一息つく。本当に良かった……なんか泣きそう。するとリリィさんが優しい表情でオレを見つめていた。
「ねぇましろ。私がこの前の同時視聴配信の時に言ったことは本当よ。あなたがあの時頑張ってくれたから、私は辞めなかった。だから感謝してるわ。」
「いや……オレは何もしていないよ」
「直接的にはそうかもね。でも、あなたがチャンネル登録者を増やし続けて、今では『Fmすたーらいぶ』では私とあなたが一番チャンネル登録者数が多い。もちろん、ひなたやポアロだって少ないワケじゃないけど。だから……頑張っていきましょ。これからもみんなを引っ張っていくのは私たちの役目なんだから。途中で辞めたりしないでよ?」
「ああ……リリィさん。こちらこそよろしく」
オレとリリィさんはお互いに笑い合う。そしてしばらく2人で話をしていたら、ひなたさんとポアロさんが戻ってくる。
「あー!ましリリィ始まってんじゃん!2人でイチャイチャしてる!てぇてぇじゃん!」
「リリィちゃん。ましろちゃんが年下で男性だからって。抜け目ないなぁ?かのんちゃんに怒られるんじゃない?大丈夫?」
「違うわよ!そんなんじゃないでしょ!ましろとはこれからの『Fmすたーらいぶ』のこととか、他愛のない世間話してただけよ。ほらましろも言ってやってよ」
「え?……あー。そうなのか?オレはてっきりましリリィが始まったのかと思ってたけど?」
「ちょっとましろ!そんな配信みたいなこと言わなくていいから!ここでは私がお姉さんなのよ?」
そんな感じでワイワイしながら、時間は過ぎていく。そして夜遅くまで飲み続け、オレたちは解散することになった。
「じゃあましろ。またね」
「またね~」
「またね姫」
「ああ。みんな気をつけて」
3人と別れ、オレは電車に乗り込む。まさかこんな日が来るとは思ってもいなかった。ずっと1人だったのに、今は同期と楽しくお酒を飲んでいる。初めてだったけど、やっぱり集まれば同期の空気感が出る。それがオレは好きだ。
それもこれも、全て鈴町さんのおかげだ。本当に感謝しかないな。こうしてオレは1期生に『姫宮ましろ』と打ち明け、そのまま活動をしていけることになったのだった。