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42. 姫は『土下座』も辞さないそうです

42. 姫は『土下座』も辞さないそうです




 オレは3期生の朽木ココアちゃんの放送事故を助けるために、機材が直るまで突発的にラジオ風な配信をしている。


 《どう?ココアちゃん》


「なんとなくいけそうな気がします」


 《ダメだったら一緒に謝ろうか。姫宮ましろの土下座みたいよねみんな?これからココアちゃんは『姫宮ましろを土下座させた最強の後輩』として語られるんだよ》


「絶対イヤです!そんなことしたら朽木ココアは終わりますよ!なんとしても直しますから!」


 コメント

『姫w煽っていくスタイル』

『オレなら泣くわ』

『むしろ踏んでください!』

『↑通報しました』


 《ねぇココアちゃん。Fmすたーらいぶでお喋りしたい人いる?》


「いっぱいいますよ。まだ話したことない先輩もいますし、一番はリコピン先輩と歌コラボしたいです」


 オレはその言葉を待っていたかのようにディスコードで通話をかける。


 《出てくれるかな?あ。》


 《もしもし……?どうかしましたか……?》


 《ごめんなさい。これ配信中です》


 《え?あ。配信?なんだ配信中だったのね!いきなり『姫宮ましろ』からかかってきたから、終わったと思いましたよ》


「こっこの声は……え?え?」


 《自己紹介お願いします》


 《あっはい。こーもりたちよ、きちんとトマト食べた?夜はこれからよ私の美声に酔いしれなさい。Fmすたーらいぶ2期生の黒夜ルナよ。》


 コメント

『おおリコピン!』

『声いいな』

『こーもり歓喜!』

『突発でルナ様呼び出し姫ぱねぇ』


 黒夜ルナ。銀髪に赤い瞳、白い肌を持つ魔界の崇高なるヴァンパイア。トマトが大好物で『リコピン最高!』が口癖。太陽が苦手なので配信は夜にしかやらない。主に歌の美声は定評があり、歌枠や歌ってみたの動画が上がると『#リコピンの歌』がトレンド入りするくらいの反響がある。ちなみにゲームも上手く、絵も上手い完璧超人。コンセプトは『最高のトマトを探すためにFmすたーらいぶに来たヴァンパイア』らしい。


 ちなみに『こーもり』というのは黒夜ルナのファンネームである。


「はっ初めまして!リコピン先輩!朽木ココアです!」


 《初めまして。まさか初めてが放送事故とは思わなかったわよ》


 《ちなみにましろもルナちゃんとはほとんど初めましてだよね》


 《そうですね。あまり絡んだことはないですし、ましろ先輩とのコラボも実現してないですよね?》


 《うん。機会があればコラボしたいと思ってるんだけどね?それでルナちゃんにお願いがあるんだけど。誰かもう一人呼んでほしいかな》


 《えっと……空いてるのは……あっいた。どうせ暇だと思うから呼び出すわね》


 コメント

『こりゃ謎解き配信より面白くなってきたぞw』

『まさかの展開』

『姫は神』

『リコピンは誰を呼ぶんだ』


 するとルームに1人のライバーが入室してくる。


 《あの……これって指名制なんですの?それとどうせ暇ってルナさんあなた、わたくしをなんだと思ってますの?》


 《じゃあ何してたのよ?》


 《優雅にディナーを楽しんでいましたの!》


 コメント

『この声はまさか……』

『お嬢が来たぞ!』

『自称ましろ姫のライバルw』


 《とりあえず自己紹介してほしいかなクララちゃん》


 《急かしますわねましろ先輩。……みなさまご機嫌よう。Fmすたーらいぶ2期生、可憐に咲く一輪の花。伊集院クララですわ》


 伊集院クララ。金髪ロングで水色を基調としたドレスを着た美少女で、その立ち振る舞いや口調はわがままお嬢様そのもの。意外に常識人で自称姫宮ましろのライバルで清楚担当。しかしどの配信でも常にキレており、雑談配信ではリスナーとのプロレスをしたりとキレ芸が大人気。ライブでのダンスはキレッキレッで、その姿はまるで蝶のように舞うとこちらも大人気。コンセプトは『庶民の文化に触れて成長する最強のお嬢様』らしい。


 《ちなみにクララちゃん何食べたのかな?》


 《牛丼ですわ》


 コメント

『草』

『牛丼お嬢様』

『ディナーとは?』

『化けの皮が剥がれたなクララ』


 《ちっクララお嬢様だろう!ディナーだろうが!夕飯なんだから!文句ありますの?大量に買いますよ?表に出なさい!》


 《おお……これが名物のプロレス芸……》


 《落ち着きすぎですよ。ましろ先輩》


 《じゃあ、クララちゃん。この真っ暗な画面が直るまで、みんなとお話ししてくれるかな?》


「ごめんなさいお嬢先輩。今直してるので……」


 《あら、配信事故でしたのね。てっきりホラーゲームでもやってるのかと思いましたわ。これは失礼致しました》


 そんなこんなで突発的に始まったオレたちのラジオ風配信は2人のおかげで何とか持ち直していた。そして、しばらく雑談をしていた時だった。ふいに画面が切り替わる。


 コメント

『おお!』

『やった!』

『これで助かる』

『よかったぁ』


「うぅ~……直ったぁ……」


 《ココアちゃん泣かないで。ほらほら配信はこれからだからさ》


「ましろ先輩ありがとうございます……リコピン先輩もお嬢先輩も……」


 《せっかくならこのまま難解な謎解き一問やっていこうかしら?》


 《いいですわね!わたくし負けませんわよ、ましろ先輩にもルナさんにも》


 《ふふ。ましろも負けないよ。ほらココアちゃんゲーム起動して》


「みんな優しい……うぅ。」


 こうして無事に復旧できたココアちゃん。オレたちはそのまま謎解き配信に参加させてもらい、ギリギリ放送事故は回避できた。配信後すぐに朽木ココアちゃんから連絡がくる。


 《本当にすいませんでした!》


「良かったねギリギリ直って」


 《はい……本当にありがとうございました……》


 かなりテンションが下がってるみたいだな。まぁ無理もないけど、それでもこれからの配信とかに影響が出るのは困るよな。


「あのさココアちゃん。ましろはね『誰かが困ったら誰かが頑張ればいい』って思うんだ」


 《誰かが……》


「だからココアちゃんもそうやって誰かのために頑張る時が来たら今度はココアちゃんが助けるんだよ。だから今回はましろとルナちゃんとクララちゃんの番だった。それだけだから気にしないでね。ココアちゃんがテンション低いと使い魔さんたちが悲しむよ?」


 《はっはい!私頑張っていつか先輩方を助けます!》


 そう強く答えてくれた朽木ココアちゃん。大丈夫。このFmすたーらいぶは本当にいい人しかいないから。そんなことを思いながら、先輩として助けられたことを少し誇らしくなった。

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