39. 姫は『ましのん』のために
そのあとはカレーを食べながらオリ曲についての話をしていくことにする。ちなみに鈴町さんはカレーを大盛にしてもらっている……本当に食べる子だ
「どういう曲のイメージがいいですかねぇ……希望とかありますか?」
「えっと……私……本当にましろん先輩のことを尊敬していて……できれば……『ホワイトプリンセス』と同じ感じでお願いしたいなって……思ってます」
そう言えば鈴町さんの歌って聞いたことないけど、疾走感ある曲なんて歌えるのか?いつもオドオドしてる鈴町さんが?う~ん……ちょっと想像できないな。
「かのんさん。『ホワイトプリンセス』の歌詞って分かりますか?」
「もちろん……です」
「ホワイトプリンセスは名前の通り、『姫宮ましろ』の名前から、コンセプトは白雪姫をイメージした歌詞になってます。いつか白馬に乗った王子様にお迎えに来てもらいたい……そんな切ない気持ちのこもった曲です。」
確かに歌詞はそんな感じだったな。
「双葉かのんは妖精さんなんですよね?それなら、その白馬に乗った王子様を導く……大好きなお姫様のために。みたいな感じの曲はどうですか?」
「あ。……すごく……いいです。ましろん先輩のために……」
「少し『ホワイトプリンセス』のメロディーラインをアレンジして曲の中に入れ込んでみましょうか。もしそれで良ければ、早速取り掛りたいと思います」
「どうだ?かのんちゃん?」
「ぜひ……お願いします」
その後、具体的な打ち合わせを終わらせた。帰り道。鈴町さんは終始上機嫌で鼻唄を歌いながら歩いていた。オレはその横顔を微笑ましく見つめていた。それに気づいたのか、一瞬驚いて顔を赤くする。
「今の『ホワイトプリンセス』だろ?」
「はっ……はっ……恥ずかしい……」
そんな鈴町さんを見てオレは無意識に声を発していた
「可愛いな……」
「へっ?かっ……可愛い?え?」
オレの言葉を聞いてあたふたしている鈴町さん。その姿を見て一瞬で身体が熱くなるのを感じた。
「あっ!いや……その……変なこと言ってごめん!」
「いっ……いえ……別に……その……嫌じゃないので……」
なんだこの甘酸っぱい雰囲気は。これじゃまるで……付き合いたてのカップルじゃないか。もう子供じゃないんだぞオレも鈴町さんも。
……付き合ってもいないのに。とにかく何か話題を逸らさないと。オレは慌てて言葉を発する。
「きっ気に入った曲が出来そうで良かったな」
「あ……はい。AMEさんには……無理な注文してしまったかも……です」
「そんなことはないんじゃないか?AMEさんにとっても『ホワイトプリンセス』は大事な曲って言ってただろ。だからこそ、鈴町さんに合う曲を作ってくれると思うけど」
「ましろん先輩は……AMEさんの話……知ってたんですか?」
「いや?あんな理由があるなんて思わなかったよ。オレは男だし、歌詞が可愛すぎるのは歌いづらいから『ホワイトプリンセス』で良かった。ただそれだけだよ」
鈴町さんはそれを聞きクスリと笑った……ように見えた。そして小さく呟く。
「……もっと……聴きたいです。ましろん先輩の……歌」
「……なら『ましのん』配信で歌枠でもやるか?」
「え?……いっいいんですか?」
「ああ。オレもAMEさんの話を聞いて、『ホワイトプリンセス』を歌わせてもらって誇りにおもうからさ。色々なことを『ましのん』配信でやりたいし。まぁ今は『双葉かのん』のオリ曲が先だけどな」
「ありがとうございます……楽しみにしてます」
嬉しそうな笑顔を見せる鈴町さん。こうしてまた1つ『ましのん』として目標ができた。