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37. 後輩ちゃんは『同じ』がいいようです

37. 後輩ちゃんは『同じ』がいいようです




 無事に鈴町さんと仲直り(?)したオレは、『双葉かのん』のオリジナル曲作成についてどうするかを考えていた。Fmすたーらいぶでは、デビューして半年くらい立つと色々なことが解禁になる。この前のコラボや今回のオリジナル曲作成もそうだ。半年間はVtuberとして配信の仕事を慣れるようにと事務所の方針でもある。


 一応、桃姉さんに相談したら、とりあえずボカロPに頼むのが主流らしい。何人かピックアップしてもらい、今はリビングでそのボカロPの曲を鈴町さんと一緒に聴いている。


「どう鈴町さん?」


「いっぱいあって……迷います……」


「う~ん。確かにな。でも、あんまり時間もないから、『双葉かのん』のイメージにあった曲調で、鈴町さんが歌いやすい感じの曲を作ってくれてる人に絞った方がいいよ」


 オレはパソコンの画面を見ながら、鈴町さんにアドバイスをする。ちなみに、今流れている曲は、アイドル系のポップソングっぽいもので、『双葉かのん』が歌って踊っても違和感が無い曲だ。


「あの……ましろん先輩は……歌枠とかやらないですよね?」


「男だからな。女性の歌が歌いにくいし、そもそもあまり知らないから。それにあまり歌は好きじゃないし」


「そう……なんですね……」


「ちなみに鈴町さんは好きな曲とか、良く聴く曲とかあるの?」


「……『ホワイトプリンセス』とか、『Shooting Star』とか……です」


「……うん。『姫宮ましろ』の曲だな」


「はい。特に『ホワイトプリンセス』はバンドみたいに疾走感あるリズムとメロディーで、ましろん先輩のお清楚イメージとは違った曲で、でも歌詞はとてもお姫様みたいなそのギャップが良くて……」


「分かった分かった!恥ずかしいからやめてくれ」


 すごい饒舌に話す鈴町さん。まさかとは思ったが……やはりそうか。本当に『姫宮ましろ』が大好きなんだな。一応、オレもその2曲オリジナル曲として歌わせてもらっている。オリ曲が少ないのは声を『姫宮ましろ』の声に違和感なく加工するのが大変だったからだ。


 でも最近は高性能マイクのおかげでかなり近い歌声を出すことが出来るようになったらしいけど……


「あの……ましろん先輩のオリ曲は……確かボカロPの『AME』さんに……作ってもらってましたよね」


「良く知ってるな。オレのはFmすたーらいぶ1期生プロジェクトの一環でオレが選んだ訳じゃないけど1曲目の『ホワイトプリンセス』もそのあとの2曲目の『Shooting Star』も作ってもらったな」


 ボカロPの『AME』。ハイトーンが特徴の曲が多く、可愛さが溢れた歌詞と転調するサビのメロディーが人気のボカロPだ。でも『ホワイトプリンセス』の楽曲はいかにも女の子で可愛らしい感じの曲じゃなかったので安堵した記憶はある。オレは一応男だし、恥ずかしいのは嫌だったからな。


「『AME』さんは……男性ですか?女性ですか?」


「さぁ?オレは直接やり取りしたことないから」


「あの……ましろん先輩。もし……もしもですよ。私が『AME』さんに依頼したら……ましろん先輩に……迷惑かかりませんか?」


「え?別に大丈夫だろ。それにこれは会社の仕事だから。鈴町さんがお願いしたいなら頼んでみるけど」


「本当……ですか?じゃあ……ぜひ……お願いします。初めての曲は……ましろん先輩と同じ人に……お願いしたいから……」


『AME』さんか……会ったこと無いんだよな。どんな人なんだろう?ちょっと興味湧いてきたかも。一応『姫宮ましろ』の曲も作ってくれてるしな。


 それから鈴町さんは、残りの数曲を全部聞いた上で、やはりボカロPの『AME』さんにお願いすることに決めた。


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