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22. 後輩ちゃんは『シンデレラ』らしいです

22. 後輩ちゃんは『シンデレラ』らしいです




「あの……初めまして……Fmすたーらいぶ3期生の『双葉かのん』です。突然連絡してしまい……申し訳ありません……少しご相談がございまして……少し……お通話よろしいでしょうか。……送信。」


 するとすぐに返信が来たようで、画面を食い入るように見ていた。そしてすぐにオドオドしはじめる。


「あの……ましろん先輩……だ……大丈夫みたいです……どど……どうしたら……」


「別に気にせずかければいいと思うぞ」


「でも……私……声小さいですし……緊張して……上手く話せないかもしれません」


「じゃあオレは席外すよ」


「それは……ダメです!」


 鈴町さんは首を横に振りながら涙目で必死になってオレの腕を掴んでくる。


「わ……わかったから離れてくれ」


「あっ!……すいません……」


 オレが離れると鈴町さんは深呼吸をして震える手でマウスを動かし電話をかけ始めた。


 《もしもし?》


「も……もしもし……え……Fm……すたーらいぶ3期生の……『双葉かのん』と申します……」


 やはり電話越しだとさらに小さくて弱々しい声で喋っていた。本当に小動物のような子だな……


 《あら~ずいぶん可愛い声ね。かのんちゃん。初めましてFmすたーらいぶ1期生の『神川ひなた』です。それで私に相談したいことって何でしょうか?》


 鈴町さんはビクッと身体が跳ね上がっていた。あれ?なんか……鈴町さんの様子がおかしい気がする……なんだか怯えているような……するとオレの方をチラッと見て、何かを訴えかけているような眼差しをしていた。……仕方ない。オレはそのまま鈴町さんの目の前のマイクを自分の方にずらし通話をする。


 《もしもし?かのんちゃん?》


「すいません神川ひなたさん。私は『双葉かのん』のマネージャーの神崎颯太と申します。かのんちゃんは極度の人見知りでして……」


 《あー。噂には聞いてますよ》


「ええ。なので今回は私の方でお話をさせて頂きますね。実は『ましのん』のイラストを描いてもらえないかと思いまして。週末のユニット発表のサムネに使いたいんです」


 《あぁ~なるほど。そういうことでしたか。もちろん構いませんよ。私たちは仲間なんですから遠慮せずにどんどん頼ってくれてもいいんですよ。》


 それからしばらく世間話で盛り上がった。鈴町さんも最初はオドオドしていたが、少しずつ慣れてきたのか会話にも参加できるようになっていた。そして本題に入る。


 《それで。どんなイラストがいいのかな?かのんちゃんの意見あるかな?》


「えっと……かのんは……ずっとましろん先輩のこと……見てきて……同じVtuberになって……そして一緒に活動できて……まるで……シンデレラになった気分で……憧れで……」


 鈴町さんは目を輝かせながら熱く語っていく。まさかそこまでとは思わなかったな。


 《そう。そんなに憧れてるんだ。ましろちゃんもきっと喜んでると思うよ。それなら……シンデレラのストーリーみたいな『ましのんてぇてぇ』イラストにしようか。》


「シンデレラ……ですか?」


 《うん。ましろちゃんが王子様役でかのんちゃんがシンデレラ、そして私は魔法使いで登場しよっかな……。いや、せっかくだから全員描いちゃお》


「ましろん先輩が……王子様……すごく良い……」


 そんなこんなで話し合いは進んでいき、配信前までに用意をしてもらえることになった。


「ではお忙しい中ありがとうございます。イラストお待ちしています」


 《いえいえ。お気遣いなく。そうだ。かのんちゃん、ひなたとも今度コラボしようね。楽しみにしてるから。それじゃあね》


 そう言って通話は終了した。緊張しながらもイラストについてはOKを貰えてホッとしたのか、鈴町さんは肩の力が抜けて大きく息を吐いていた。


「ましろん先輩……本当に……ありがとうございました」


「気にするなって。良く頑張ったな。これからはオレも頼っていいから。さっきも言ったけどオレたちは『ましのん』だろ?」


 良く頑張ったな……か。まるで子供みたいだよな鈴町さんは。でも、描いてもらう『ましのん』のイラストについては結構細かく希望を言っていたけどな……。まぁそのくらい普段から自分の意見を言ってくれると助かるんだけどな。


 そしてその日の夜。神川ひなたさんから素晴らしい『ましのんてぇてぇ』イラストが送られてきた。それを見た鈴町さんは大興奮……しているようにも見えた

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