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19. 後輩ちゃんは『目』で会話します

19. 後輩ちゃんは『目』で会話します




 オレと鈴町さんが会議室の扉の前にいると、そこに2人の女性がやってくる。


「あらぁ~かのんちゃんじゃないですか。お久しぶりですね。3期生お披露目以来かしら」


「あ!かのんちゃんだ!」


 誰だろうか?でも鈴町さんを知ってるなら他のライバーさんだろうな。オレも会ったことないから3期生の誰かか。


 というより、オレは他のライバーさんの裏を知らないし、そもそも鈴町さんはコミュ障だから鈴町さんを知ってる時点で……とか思うのは少し失礼か。


「あ。マネージャーさん初めまして。Fmすたーらいぶ3期生の『九重キサラ』です」


「同じく『海原あると』です。かのんちゃんのマネージャーさん男の人なんだぁ」


「初めまして『双葉かのん』のマネージャーの神崎颯太です。キサラさん、あるとさんよろしくお願いします」


 九重キサラ。Fmすたーらいぶ3期生で白衣を着ている研究者風の女性。身長は160センチくらい。髪色は茶髪でウェーブがかかったロングヘアー。コンセプトは「Fmすたーらいぶ内のライバーの実態研究をする博士」人気の配信は主に雑談枠でコメントを拾うのが上手であっという間に時間がすぎるほどの面白さに定評がある。


 海原あると。同じく3期生で、黒を基調としたゴスロリ服を身に纏った少女。身長は140センチ程度。髪型は水色のツインテールで、髪を白いリボンで留めている。コンセプトは「可愛いは正義。裏でFmすたーらいぶを牛耳るのが目的」人気の配信はゲーム実況。特にFPS系で彼女の「キルすっぞ!」という発言がトレンド入りするくらいゲームが上手く、界隈ではゴスロリの死神……通称「ロリ神」と呼ばれているらしい。


 なるほど。この2人が鈴町さんの同期なのか。3期生は確か5人だからあと2人いるんだよな


「あの……その……ここ……こんにちは……」


「同期なんだからそんなに緊張しなくてもいいんですよ」


「あはは。かのんちゃん緊張しすぎ!」


「うぅ……でも……人と話すの苦手で……」


 コミュ障全開だな鈴町さん。チラチラとオレに助けを求めているようだが、このくらいのコミュニケーションは自分で乗り越えてもらわないと困る。頑張れ。応援しているぞ。


「そう言えばかのんちゃんさ。姫先輩とユニット組むんだって?『ましのん』だっけ?すごいじゃん!」


「はっはい……」


「本当にすごいわ。同期として応援してるからね。ましろ先輩って裏ではどんな人なのかしら?会ったことないから気になるのよねぇ。もし私が会った時に参考にしたいし」


「えっと……それは……えっと……あの……」


 チラッとこちらを見る鈴町さん。おい。そこでオレに振るなよ。あとバラさないでくれな。


「えっと……ましろん先輩は……いつも優しいです……凄く頼りになります」


「へぇ~そうなんだ。今度一緒にコラボしてみたいな!あとでディスコード送ってみようかな」


「やめときなさいよ。まだ私たちとは絡みもないんだし、いきなり連絡したら迷惑よ」


「そっかぁ。かのんちゃん良かったらそれとなく姫先輩に言っておいてよ!『海原あると』がコラボしたがってるって」


 まぁ『姫宮ましろ』本人がここにいるんだがな……なんかとんでもないことになりそうな予感がするのはオレだけなんだろうか……


 鈴町さんが2人の女子ライバーに絡まれてる中、オレは少し離れた場所で待機していた。しかし少し遠目のこの場所でも分かる。鈴町さんはかなりオドオドしているし、ずっと俯いたままだし……時折、こちらに目で合図を出してくる。……仕方ない。


「あ。かのんちゃんそろそろ時間だ。キサラさん、あるとさんまた今度。」


「あっはい。すいませんでした引き止めてしまって」


「またね。かのんちゃん」


「さぁ行こうか、かのんちゃん」


 そう言って鈴町さんの手を引っ張りその場から離れる。さすがにこのままパニックになって『姫宮ましろ』がオレとか言われると困るしマズイと思い、オレは鈴町さんを連れて事務所の外へと出た。まったく困ったもんだな。

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