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10. 『ましのん』オフコラボ配信②

10. 『ましのん』オフコラボ配信②




「じゃあ次は、2月のこの『バレンタイン特別企画姫チョコプレゼント』配信覚えてますか?」


「ましろのチョコね。覚えてるよ」


「ましろん先輩が、日頃応援してくれている親衛隊の人たちに、バレンタインの特別なチョコを限定でプレゼントしたときのことです!なのにその数、たったの30個!完全に弄んでます!これはどういうことなのか、 説明してください!親衛隊への愛はその程度だったんですか?差別ですよ、これ。かのんも、もちろんもらってませんし!」


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『かのんももらってませんしは草』

『姫になら弄ばれたい』

『時よ戻れ!』


 配信が始まってから、はや1時間。最初はガチガチに緊張していた鈴町さんも、ようやく配信に慣れてきたのか、積極的に色々な話題を切り出してくるようになった。ふと横を見ると、楽しそうに喋る鈴町さんの姿があった。ちなみに、今日の配信はある程度打ち合わせはしているし、簡単な台本も用意している。


 しかし今、オレが追及されている内容は、全て鈴町さんが自分で決めたことだ。本当に『姫宮ましろ』の事が好きなんだなと改めて感心する。


「あれ?かのんちゃんは、チョコをもらえないと親衛隊じゃなくなっちゃうのかな?みんなは、チョコを貰うことが本当の目的じゃなくて、『姫宮ましろ』からチョコが貰えるかもしれない、という夢を見に来ているんだよ?そうだよね?ね?」


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『はっ……はい』

『おっおう……』

『夢は自分で掴みとるもんだ』

『姫の言う通りです!』


「親衛隊の皆さんが、ビビり散らかしてますけど、ましろん先輩……」


「ふふ。ハンカチ貸してあげようか?」


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『怖っ……』

『姫の圧やばすぎぃ……』

『親衛隊涙目でワロタw』

『ましろんマジぱねぇ……』

『お清楚とは?』

『なんかボロが出てきたぞw』


「しぶといですね……はいはい、わかりました。この件はもういいです」


「ありがとう。かのんちゃんは優しいね?」


「皆さん今、横で睨んでますよ~」


「見てるだけだよ?」


「かのんのこと、忘れないでねみんなw」


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『英雄かのんここに眠る』

『お墓建てなきゃ……』

『かしこま』


「こらこら。本当に建てちゃダメだからね?」


「他には何かあるのかな?かのんちゃん?ましろは完全なる白だけど」


「え?今日のところは、限りなく黒に近いグレーですけど、とりあえず勘弁してあげましょう」


 台本はここで終わり。あとは、予定通りエンディングを迎えて、配信終了となるはずだった。今日のコラボで、新人の3期生『双葉かのん』の、風紀を守るという真面目なキャラクターと、『姫宮ましろ』のお清楚とは程遠い、ブラックな一面を見せられたと思う。おそらく『ましのん』コラボは、まずまず成功と言えるだろう。でも個人的にはもう少しインパクトが欲しかったよな。


「そう言えばさ、かのんちゃん。ましろもね、1つだけ、どうしても聞いておきたいことがあるんだよね」


「え?」


「台本と違うかな?」


「なっ……なんのことですか~?台本なんかありませんよね~」


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『かのんちゃん目が泳いでますよ』

『動揺してて草』

『台本とか言ってて草』

『ガチ焦りで笑う』

『姫の逆襲w』


「そう?じゃあさ、かのんちゃんの配信で『コミュ障陰キャ女おつ』って言葉、よく使うでしょ?それが本当かどうか、見習いフェアリーのみんなはきっと気になっているんじゃないかな?」


「え?そっそれは明日では?いや……言わなくてもいいじゃないですか?」


 コメント

『陽キャ説浮上』

『かのんちゃん……』

『姫に逆らうからだw』

『風紀を乱す妖精』


「これは、皆に聞いてほしいんだ。今日はね。ましろの家でオフコラボしてるの。かのんちゃんはね、マネージャーさんに連れられて、午後2時くらいに来たんだけど、それから打ち合わせとかして、午後8時くらいになってたのね。で。マネージャーさんが夕飯買いに行ってくれてね。そうだよね?」


「はい……」


「ましろさ。ふと思ったの。あれ?今日かのんちゃんの声、聞いてないよねって。そしたらかのんちゃん、緊張しすぎて打ち合わせの間一言も話してなかったんだよ」


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『草』

『生粋のコミュ障陰キャ女』

『かのんちゃんは忍術使ってるんだよ』

『やめたげてw』


「えっと……あの……その……」


「裏では、配信前までほとんど話さなかったよね?だから、かのんちゃんは本物のコミュ障陰キャ女です!嘘ついてませんよ、見習いフェアリーのみんな良かったね、かのんちゃんは白ですよ~」


「それ……ガチのやつ……恥ずかしい」


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『嘘じゃなくて草』

『見習いフェアリーは分かってたぞ!』

『暴露おつ』

『それがかのんちゃん』


 そして、オレはそのまま隣にいる鈴町さんを見た。鈴町さんもそれに気づいたのか、顔を上げた。これは、オレの『姫宮ましろ』としての個人的な気持ちだから。ずっと応援してくれていた彼女への心からの感謝の気持ちを伝えたかった。


「でも、そんなかのんちゃんだけど、嬉しいこともあったよ。かのんちゃんは、配信でましろのこと憧れだって言ってくれたけどさ、やっぱり誰しも裏では多少違うし、きっと想像してた人と違うじゃない?でもね、かのんちゃんはましろのことをね『ましろん先輩は、ましろん先輩だからそれでいい』って言ってくれたの。すごく嬉しかったよ。ありがとう、かのんちゃん」


「ましろん先輩……」


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『てぇてぇ』

『いい匂いしてきたんだが?』

『ましのん最高』

『もう結婚しろよお前ら』

『お幸せにな』


「ふふ。もっともっと、今日の裏話とか、二人のことを知りたい方は、明日の『姫宮ましろ』の雑談配信枠を楽しみにしててね?」


 こうして、『双葉かのん』の枠での初めてのオフコラボは、大盛況のうちに幕を閉じたのだった。

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