次は大阪のダンジョンにやってきた。
USJやら万博やら食い倒れやらある賑やかな街並み。
そこのダンジョンはさぞかし賑やかなんだろうなと思ったら、斜め上の経営をしていた。
なんとダンジョンのエントランスに巨大スクリーンがあり、先行して入ったシーカーがダンジョンアタックする様子を配信していた。
どこかでみたことある能力だと思ってあってみたら、案の定。
「お前、こんなとこで何してんだ。木村」
そこに居たのはクラスメイトのウェーイ系配信者の木村だった。
きっと下野と連絡を取り合ってここまで来たんだろう。
転移の真似事ができるからってどこからそんな金を?
まぁいい。こいつが居るなら俺も利用してやるまでだ。
「ちーっす、磯貝。美玲ちゃんも元気してた?」
「木村っち、こっちきてたんだねー」
「そりゃくるっしょ。こんな面白い企画、俺が参加しねーわけねーじゃん。ま、つっても俺は協力者なだけでオーナーは別にいるんだけどよ」
へぇ、俺以外に上層部には向かう裏切り者がいたとはね。
「ようこそおいでくださいました。三嶋ダンジョンさん。ボク、堺ダンジョンのマスターやらせてもらってるものです。木村君とは意気投合しましてね、これはきっと売れるとボクの直感を信じてやったら案の定大儲けですわ。しかし維持費がぎょーさんかかりましてな。今回三嶋ダンジョンさんの融資の件。非常にありがたいんですわ」
なんか知らないうちに業務提携から融資になってるんだけど。
積丹さん、掲示板で何を口走ったんだ?
那覇さんが割とまともだったからと油断してたが、シーカーになる奴も、ダンジョンマスターになる奴も大体頭がイカれてる奴しかいない気がする。
俺はその中で一番常識的だ。
まぁ向こうの言い分はまるっと無視しつつ交渉を開始。
ところどころで俺の保有マナ増幅コンボが取り組まれていたり、規格の面でも新しいものを取り入れたりとやり手な一面も見せた。
ダンジョンを運営するには理想的な環境。
シーカーの入場率も高いように思う。
これ、俺が融資する必要あるのか?
つーか普通に繁盛してるように思う。
聞いたらランキング60位だと言われた。
普通に上位にいるんだよ、ここのマスター。
だが上昇志向がやたら高くて「まだまだここで終わらへん、ボクはもっと上に行ける人材や! そのためにも使えるもんはなんでも使う!」ぐらいの意気込みで応募してきたらしい。
すごくダンジョンマスターとして真っ当な考え方だけど、俺と一緒で金稼ぎがメインの商人タイプなのが好感持てる。
人類は金を落とすカモぐらいの考えだ。
殺すのをメインにするより、いかに搾り取るかの考え。
「よし、いいだろう気に入った。何が欲しい?」
「さすが三嶋ダンジョンさんや。ボクが何を欲してるのかすぐに理解してくれる。話が早くて助かるわー」
俺も商売人として堺ダンジョンさんとの話しはとても楽しい。
木村は最近ダンジョンメインのチャンネルを開いてこっちの世界でも知名度を爆上げしたとか。完全にダンジョン側の手先のくせしてシーカーの味方のツラをする胆力は見習いたいものだ。
「ありがとうございます、これでボクも上に行けますわ」
「しっかし、これだけ上手く回してマナが回らないって、何を投入する気なんだ?」
「あ、それ聞いちゃいます?」
すっごく嬉しそうにこれから行う事を嬉々として教えてくれた。
どうやら俺より先に掲示板で融資を募ってダンジョン同士をシャッフルしようって連盟を立ち上げたらしい。
せっかくダンジョンをブラッシュアップしても、人の周りがよくなくてマナの維持が大変。
だったら一番人気のところから回してもらおう。
そこで関西地方で人気だった堺ダンジョンに白羽の矢が立ち、俺のところに話が来たようだ。
なお、そこも配信前提の契約を結び、転移チケットも配ればより多くのダンジョンにシーカーがやってくる一大テーマパークとしてバンバン客寄せができる。
その時、死んだシーカーのマナを奪うだけ奪って、蘇生して欲しいと行ってきたのは他ならぬ堺ダンジョンだった。
俺のように商売をメインにする彼らしい着想。
ますます好感が持てた。
エントランスの一部を借りて自動販売機を増築。
各階層にもIs両替機と武器の自動販売機をレンタルで貸し出し、俺たちは旅館で懐石を楽しみつつ、木村の配信を見ながらSNSを流し見する。
すっかりこちらの地球の娯楽の一つになってる盛況ぶりだ。
木村は相変わらず元気で、久しぶりにクラスメイトたちの顔を見たくなった。
同窓会、してみるかな。
善は急げととーちゃんに連絡を取り、各親御さんの連絡網を確認。
5年ぶりに高校の同級生で集まることにした。
まぁ、連絡したのは意思確認の意味合いも込めてだ。
無理やり強制召喚してもいいが、桂木先生みたいに恥ずかしい格好で送られてきても困るからな。
エルフからしたら経ったの数年。
けど、あっという間だからこそ全く顔も見てない時間が長く感じるのだ。
ジャキンガルのエルフさんは6000年生きてると聞いて、俺たちもそれぐらい生きるつもりでいたけど、実際に寿命がいくつかわかってないところがあるんだよな。
なんだったら1000歳でおじいちゃんになってるかもしれないし。逆に10,000歳まで生きるかもしれないしで結構ピンキリ。
なんにせよ、渡る世界が多すぎて収集ついてないって言うのが本音。どこで何してるか一回集まって話聞きたいよなって、そんな事を思ったんだ。