一つ目鬼(以降ギガントと呼ぶ)は俺たちにわかりやすく噛み砕いてこれからの説明を行なった。
まず一番にランキングで順位を競い合ってもらうとのこと。
ランキング上位には特別報酬としてポイントの取得。
そして下位のものへの統率権が得られるという仕掛け。
支配されたくなければ上位を取れ。
つまりはそういう事だった。
「ここまでで意見はあるか?」
手を上げたのは女性。
その艶やかな瞳に殺意を乗せ、俺を一瞥する。
「この中に半端者が混じっているようだけど? そいつはどこから紛れてきたのかしら? 不快だわ。つまみ出してくれる?」
「この者はダンジョン最適合者だ。多分だが優勝候補はこの男だぞ? 開始一週間で稼いだポイントが他者を圧倒している」
「! こんな奴が!?」
「他に質問は?」
「ないわ……」
「じゃあ俺からもいいか?」
額から天井に向けてうねった双角が特徴の男が手を挙げた。
ギガントが頷く。
「ここに居る全員のポイントを開示してくれないか?」
「それはできかねる」
「なぜだ? 誰もが自分の戦略を疑っちゃいない。だというのにその半端者が上にいる事実を受け入れられないやつだって居るだろう? 俺だってそこの女と同様にこんな奴がトップだなんて信じられない。公平性の為にも開示するべきだと思うが?」
それ、多分俺のポイントがバグってるって後で文句つける奴だろ?
俺は詳しいんだ。
ギガントがわざわざ俺に開示していいかと確認してきた。
俺は構わないぞと快諾して、ランキングが目の前に形成される。
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ダンジョンマスターランキング【第一期】
1位_42,005,841,000pt【アキラ・イソガイ】
2位_ 10,200,098pt【テルオ・マツダ】
3位_ 9,806,104pt【ミク・カイサキ】
4位_ 9,791,876pt【ジョージ・マイケル】
5位_ 7,789,548pt【キャミー・ブロッサム】
6位_ 5,109,876pt【センクウ・イシカミ】
7位_ 5,004,781pt【タイガ・ジョー】
8位_ 4,807,499pt【タカシ・ホンマ】
9位_ 4,446,729pt【チエ・ホンマ】
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まぁわかってた。
こうなるって。
一人偉そうな態度を取ってた彼ですら、こうまで差が開いてるとは思わなかったのだろう。
1000万ptも取れば流石にトップを取れてるだろう。
だが俺の転移はそれを上回る。
圧倒的大差!
一人だけ百億ptの壁を突き破っている。
それくらいのチートなのだ、転移は。
なんせ無理やり召喚できるからな。
ポイント稼ぎ放題なのだ。
もちろん下野に頼んで蘇生薬も作ってもらった。
その蘇生薬を使うとレベルが1に戻ってしまうのだが、ノウハウだけは残ってるので、再度レベルを上げてもらっている。
ただしズルしたらまたポイントになってもらうからなと釘を刺しておくのも忘れない。
こうして俺のポイント永久機関はできていた。
ダンジョンが欲するのはあくまで経験。
人の肉体の再利用するかどうかはダンジョン側の懐一つ。
だいたいが復活させる義理もないのでダンジョンの肥やしにするが、死体を入れてもマナはそこまで増えなかったりする。
小説やアニメとかだとそこら辺は作品によって曖昧だが、本当のチートは美玲さんの方だ。
なんせポイントはマナの保有量で増加する。
そんなにダンジョン構築にポイントを使っても、一緒にいるだけで15万pt回復する超チート。
あとは仲良くマナ拡張運動をしてるだけで20万、30万と増えていって現在では何もしなくても100万くらいの稼ぎになっている。
そんな一人だけズルしてる状況で必死に追いつこうとするのがそもそもの間違いなのだ。
「最後に俺からいいか?」
「ああ、もうお前を見た目で騙される愚か者はいないと思うが」
「俺はぶっちゃけランキング上位に興味はない。正直なところ、誰かの面倒を見るのも億劫だ。ダンジョンを運営するコツを知りたければ聞きに来い。徒党を組んで俺のダンジョンを潰しに来てもいいぞ? 返り討ちにしてやるけどな」
それは宣戦布告。
表向きはランクCダンジョンと偽装してるが、その実トラップの数々はスキルがどうとかいう次元じゃなく厄介なもの。
まさに殺すための仕掛けが施されている、
どんな精鋭を送ってこられたって安全地帯から高みの見物だ。
なんせ俺のダンジョンは異世界ストリームに繋がっているからな。
表口はこちらの地球だが、裏口から出ればストリーム。
そしてストリームの敷地も俺のダンジョンの範囲に含まれている。
全員が睨みつける中、俺は優雅に立ち上がって転移をして見せる。
それでようやく皆が気がついたような顔をする。
◇
「あいつ! もしかして異世界からの交換留学生か!?」
「あっ! 確か転移魔法だっけ?」
「くそ! そんな奴を敵に回して俺たちはこれから戦わなきゃいけなくなるのか!」
「でもあの人、ランキングには興味ないって話でしょ?」
「だとしてもだ。あれだけの大差……本人にその気がなくてもお偉方はそうは思わないだろう」
二位の男、松田輝雄がギガントを睨め付ける。
それを素知らぬ顔で受け流し、ギガントもまた姿を消した。
残された者達の表情は絶望に染まっていた。