桂木先生を見送りつつ、周辺をクラスメイト達が警戒。
例の後輩くん達もMP消費タイプだったらしく、岡戸の指示を受けながら屋上で熟練度上げを行なっていた。
魔法の素質をもらった者は屋上に行くように校内放送で流しつつ、ざわめきの強まる学校は一時間後無事に地球に戻した。
もういっそ、他校からの連絡をもらったらこの方法を使うのが手っ取り早いかもしれんな。
異世界に旅行に行きたいとか言わない限りは手っ取り早いし。
俺の転移のいい点は、人数の制限が無いことだ。
設定範囲はまだ二つしか選べないが、それに括れば人数を無制限で送れるのがいいよな。
地球に戻ってくるなり、校内放送で俺は職員室へと呼ばれた。
どうやら先生方から何かお話があるようだ。
「先程呼ばれた磯貝です。何か問題がありましたか?」
「磯貝君、よくやってくれた。お陰で長年後退していった頭部に光がさしたよ」
第一声を上げたのは美術の顧問である三門先生だった。
一瞬目の前の人物が誰か判別つかなかったが、頭部が薄いという印象の先生がフサフサになっていたらこうなるだろうって雑コラしていく事で漸く当てはまったのだ。
と言うか、見事に肉体が若返っている。確かこの人50代後半じゃなかったっけ? そんな姿は見る影もなく若々しい。
「三門先生は何のスキルをもらったんです?」
「身体活性というものだ。MPに頼らず、一度使用すると一週間待たないと再度使用できないところが厄介だが、お陰で筋肉疲労も眼精疲労も20歳の頃のように若返った。こんな素晴らしい効果なら週一くらい十分待てる」
「お、時間限定のやつは使い込めば待ち時間が減っていきますよ。ソースは俺」
「なに、それは本当か!」
「俺の転移も週一でしたけど、使いまくったら3日まで減りましたし。三門先生もそのくらいで再使用できるようになるんじゃないっすか? そうしたら周りから引く手数多っすよ?」
「それは本当か!」
「嘘ついたってしょうがないっすよ。MP消費系の質問はうちの岡戸が詳しいんでそっちに聞いてください。戦士系の能力はうちの伊藤達が詳しいです。それ以外の熟練度上げ系は城島さんに聞けば教えてくれると思います」
注目が俺に集中するのを避ける為、俺はクラスメイトを生贄に捧げる選択をした。
これじゃあ木村のことを悪く言えないな。
ついでに木村のチャンネルを紹介しておく。
校内放送でも流してもらい、全校生徒、職員がリスナーになった。
これで木村の矛先が俺に向くことは無くなったな。
今や興味のタネは学校中に散らばったからだ。
教室に帰るなり英雄のように持ち上げられる俺。
もはや先生すらスキル持ちで、スキルに浮かれる生徒をどやせないので学級が崩壊している。
いろんな生徒がうちの教室に入り込み、えらい騒ぎだ。
その中心人物が木村。
あいつの能力って地味にやばいんだよ。
鉄筋コンクリート構造の校舎って普通Wi-Fiの通りが悪くて電波が立たないことが多いいんだ。
しかしこいつのスキルはそれを丸っと無視するので近くに寄る、またはそいつを中心に何キロ圏内はWi-Fiが入りたい放題みたいな効果がついてる。
お陰でスマホを私生活の一部として扱ってる生徒からは絶賛されていた。
俺もこいつのおかげで動画見放題なので強くは言えないんだよな。
まぁ絶賛するのは最初のうちだけで、そのうちそれが当たり前になるんだが、問題は放課後だろう。
あいつが異世界に取材しにいく時、ついていきたいと名乗り出る生徒が何人出てくるかで、帰還時の転移場所がすこぶる困ることになる。
いっそ転移指定先に公園のトイレとか追加しておくか?
でもあそこに学生がたむろするのって不自然な気がするし、やっぱり人数を絞ってコンビニ……いや、グループ分けすればいいのか。
向こうから引っ張ってくる時に場所は増える分けだし。
そんなこんなで学級崩壊ならぬ学校崩壊した我が校は、全ての時間が自習になり、俺は残りの教室のストックを消費するように近くの公園やコンビニまでわざわざ出向いて教室に帰還した。
校内どころか校外まで出向くのは俺ぐらいで、他の生徒は学校内でおとなしくしてたよ。
よし、教室のストックが増えてた。これは明日の投稿に使うか。
学校崩壊はたったの一日で収まり、次の日から普通に日常が戻ってきた。教師陣から各家庭に預かった子供達に異変があったらすぐに学校側に連絡してくださいとの旨を伝え、そして事業の一つに異世界見学が増えた。
どうやら授業として時間を設けるから、もう一度全校生徒を校舎ごと運んでほしいと言うオファーを俺にしたいようだ。
そんなの許可しちゃっていいんすかね?
まぁMP消費型は地球じゃまるで何もできないから気持ちはわからなくも無いっすけど。
これ、そのうち親を巻き込んでの授業参観が異世界で行われたりしねぇ?
そんな恐怖に震えながら俺は帰宅した。
家族で食事中、最近ニュースを見ることが多いのは、やっぱり世間の目がどこに向けられてるのか気になるからだな。
ご近所さんは敵だ。
今はまだそうだけど、いっそ巻き込む事で味方にできないか?
そう提案する俺に、両親は答えを出しかねていた。
それがきっかけで余計疎遠になる。またはその親族が押しかけてきたりしないか?
その懸念が尽きない。
もういっそ地球ごと転移させられたら楽なのにな。
そうすれば地球で魔法が使えるようになるし。
あ、異世界で魔法が使えなくなって困る人達がでる?
それはどうでもいいっしょ。
俺のそんな思考はスキルによって叶えられ、次の日から日常でスキルが使えるようになったMP消費組は歓喜の声を挙げていた。
ただ、問題があるとすれば器物破損と電子機器の使用不可が目立つくらいか。
中でも電子機器の使用不可がとにかく痛いので、地球単位はやめて、地域単位で転移するのが良いのかもね。例えば日本だけ異世界に転移するとかさ。
願ったら出来た時はしこたま焦ったけど、まさかマジで使えるとは思えなかった。
そして俺の転移先に新しく『惑星クラセリア』と『地球』が追加された。
もう何でもありだよな、こうなると。