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第16話 みんなスキルに無我夢中

テレビを見てると、木村からメールが入った。

SNSでくれればいいのに。

そう思いつつも、今俺は悪質な粘着垢に張り付かれていたんだと思い出してありがたくメールを開封する。


中身は『検証大成功』世界にスキルを徹底お届けなる文章とダウンロードサイトのパスワードだった。

どうやら先行公開をしてるみたいだ。


その中身は、転移を使って世界を渡った者は、確定でスキルを発現するというものだった。

ただし一度定着したスキルは何度渡ってもリセットできずにそのままらしい。


なお、地球内で何度転移してもスキルを賜ることはないようだ。

俺はありがたがって使ってるスキルだけど、世間はそんな大袈裟に見てるってことねー。


だいたい動画を見終わった後に再びメールが来る。

どうやら俺に確認させてアーカイブ化させていいかのチェックをしてほしいそうだった。


一応俺を気遣ってくれてるんだよな、こいつなりに。

なんせこれが明るみになれば俺に人が群がるのが目に見えてるもん。

両親にだって迷惑をかける事になる。


だから俺は『公開場所を学校周辺にのみ絞ってならOK』とした。

ルーム枠はレベル上限さえ上がればワンチャン増えていく。

でも一気に来られても対処できないので、クラスメイトや学校の生徒を優先するのならOKとした。


正直社会人とか混ざって来られると枠組みを組むだけで何通り?

とかになって俺の仕事量が増えすぎなんだよ。

そして今回の検証を当てにするなら何日間の体験サービスにして売り出す会社が立ち上がる可能性が高い。

もちろん俺を雇い入れてのサービス業だ。


その為にも社員にスキルの配布とかし出すに決まってるし、異世界を安全に旅行させるとかわけわからんこと言い出す輩は絶対に出てくる。

ここら辺は前もって家族とも相談済みだ。

何なら家族経営で運営しちゃう?

なんて話も出てきてる。


ただそうすると親戚が絶対に一枚噛ませろって乗り込んでくるのが目に見えていた。

うちの親戚、両親を見ればわかるけど我の強い人しか居ないから。


ま、それはそれだ。

スマホを消して風呂に入って勉強を終わらせてから就寝した。


そして翌日。

いつも通り学校に転移で向かうと、案の定昨日の後輩君の噂を聞きつけた先輩方や先生達が屯している。

いや、大人は遠慮してくんねぇ?


「悪いな磯貝、上司命令は絶対なんだ」

「嫌な制度だなぁ縦社会」

「本当にすまないと思っている」


ちなみに平謝りしているのは担任の桂木先生だったりする。

ことの経緯は週一で異世界に商業をしに行ってるのを咎められた。

休日に異世界に普及してないマッチやらゴムホースならを大量に買い付けてアイテムボックスに入れてる場面を目撃されてしまったようだ。


あんた、もう教師やめちまえよ。


当然教師は副業は禁止されている。

休日の息抜きとはいえ、異世界で私腹をこやしているのは子供の手本となる大人としてどうなのかとキツく叱られたのだそうな。


「だからって何で他の先生方まで出張ってくるんです? 教頭や校長先生まで」

「そのスキルが人体に影響がないか、大人である我々が身をもって検証するためだ」

「つって、桂木先生が羨ましかっらだけだったりして」


おい、木村。燃料を注ぐな。

案の定図星だったそうだ。

なお、漫画や小説のようなステータスで肉体強化! なんて真似はできないと伝えるとひどくがっかりされた。

年配の方は身体のあちこちガタが来てるってとーちゃんも言ってたからな。まぁ、気持ちはわかるよ。


「取り敢えず異世界に向かわせるのは吝かではありません」

「おお、では年長者を代表して我々から!」

「ちなみに一度転移してるのでみなさんスキルは賜っている可能性もあるのですが、気づいてなかったりします?」

「は? 聞いてないぞ桂木君!」

「おい、磯貝。余計なことは言わなくていいんだ!」


あ、この人。俺に責任を押し付けて一回学校ごと転移したのを有耶無耶にしようとしてたな?


「磯貝、そこは俺も一度検証したんだが、王女様曰く本人が一度自覚することによって発現するタイプもあるから再度飛ばないとわからんこともあるようだぞ? こっちで魔法が使えず、向こうだと使える。魔法タイプだとこっちじゃうんともすんとも言わないからさ」

「それを先に言え!」


もう授業どころじゃないくらい生徒が集まったので、俺は自棄になって再度学校の校舎ごと転移した。


もうどーにでもなーれ!


ちなみに安全を確保してレグザル王国付近はやめておいた。

なーんかちょっと嫌な予感がしてさ。


「先生、ガッシュ付近に転移するから、近所の人に挨拶回り頼んでくれるー?」

「おまっ、よりによって校舎ごと飛ぶやつがあるか!」

「一度やってるし平気でしょ? それに順番待ちにしちゃうと絶対文句言う奴でるじゃん。でも一時間後にまた戻るので後腐れないように放送部と提携とるようにしてください。こんな感じでよろしいでしょうか?」


教頭先生が挙手する。


「外に出ることは敵わんのか?」

「やめておいた方がいいとだけ。スキルを使いたい気持ちはわかります。でも今回はスキルを獲得するまでに留めておいてください。お楽しみは後にとっておく。大人たちが俺たちによく行ってる言葉です。大人のあなたたちが守れないとは言いませんよね?」

「ぐぬぬ、正論だ。今回は緊急措置とする。ほら、皆クラスに戻って席に着きなさい。彼は我々にチャンスを与えてくれるようだぞ」


校長先生の声に、それこそ校舎が揺れるほどの歓喜の声が溢れかえった。


あとはハズレスキルを引いてもめげない心を持って欲しいものだ。

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