下弦の月が照らしていた。
車のクラクションが鳴り響く。
カラスがカーカー鳴きながらビルとビルの間を飛び交っている。
路地裏のゴミ箱に寄り添ってぼろぼろになった制服を身にまとった女子高生が自分自身の体をギュッと抱きしめた。
冷たい風が吹きすさぶ。
寒い、寂しい、悲しい。
なんでこんな目に。
目から涙がとめどもなく
流れ落ちる。
声を押し殺して静かに泣く。
靴の音が聞こえた。
誰かがこちらに近づいてくる。
恐い。
逃げたい。
震えた足がびくともしない。
ぼんやりとした電灯の下に誰かがかがんだ。
「何してるの?」
飴玉の棒を口からタバコのように出して、真っ黒いスーツを着た青年が、女子高生の顔を覗いた。
肩に触れようとするとビクッと恐れて離れた。
「………」
「服、ぼろぼろじゃんねー。誰がこんなことするんだろね」
ネクタイを整えて、ふーとため息をつく。
髪色が金色で瞳はブルーのカラーコンタクトを入れていた。
涙が溢れてよく見えていなかったが男でも肌は白かった。
さっきまで怖かったのに、少し落ち着いた。
青年は、黒いジャケットを脱いで、女子高生にふんわりとかけてあげた。
外は寒い。
でもジャケットはほんわか暖かかった。
「泣かないでって言うより泣くまで泣いた方がいいだろ、多分」
飴玉をバリバリと食べて、食べ終えた飴玉の棒をポケットに入れた。
ズボンのポケットからタバコを取り出した。高級そうなライターを出して火をつけた。
煙を上に向かって吐く。
頬をポンポンポンと叩いて、煙で輪をたくさん作った。
女子高生はそれを見てクスッと笑った。
さっきまで泣いてたことが嘘のようだった。
「輪の中に輪は難しいんだぞ」
そう言いながら、タバコを吸って手品のように輪を何度も作った。思わず、拍手した。
笑顔が溢れた。
「もう1回する?」
「うん」
青年は女子高生の頬に流れた涙を指で拭った。頬を赤らめる。
「んじゃもう1回な」
ポンポンと頬を指でつついて輪を作る。
また拍手して喜んだ。
それが