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第102話 戦い終わって戻って来る日常

国生春香こくしょうはるか目線



 花蓮ちゃん……!


 私はずっと祈っていた。

 親友の勝利は、信じていたけれど。


 突然、妖魔神帝フレアーに魂を食べられた人たちが蘇生したとき。


 花蓮ちゃんが勝ったんだ!


 そう思った。


 だからずっと待っていた。


 でも、なかなか戻ってこない。


 ……まさか、花蓮ちゃんはフレアーと刺し違えて……?


 そう思ってしまった瞬間。


 そんなことあるはずない!

 六道シックスプリンセスのチカラを全て備えた六道リクドウプリンセスになった花蓮ちゃんが、妖魔神なんかに負けるはずない!

 ありえない!


 祈り続けた。

 花蓮ちゃんが無事帰ってきますように……


 そしたら


 空の向こうに、点が見えた。

 その点がぐんぐん大きくなる。


 その点は2枚の翼を備えていた。


 そして顔が確認できたとき。

 私は涙を流していた。


「花蓮ちゃん!」


 花蓮ちゃんは帰還して大きく羽ばたき、舞い降りてくる。

 戦士の帰還。

 その足先が地上に触れた。


 その瞬間、変身が解除された。


 一瞬の輝きと共にセーラー服姿に戻ったんだ。


 私は彼女に抱き着いていた。


 すごい!


 たった1人で、妖魔神帝フレアーを倒したんだ!

 あの、究極の肉体を乗っ取り、究極生命体に成り果てた人類の天敵に!


 すごいよ!


 あのとき……

 私をイジメから解放してくれたときから、花蓮ちゃんは私のヒーローだよ!


「ただいま。フレアーは倒したよ。……時間掛かってゴメンネ」


 そう、はにかみながら。

 花蓮ちゃんは私たちに勝利を伝えてくれた。



★主人公目線



 妖魔神を全滅させて1カ月経った。


 あれから、六道プリンセスとしての活動は一切無い。

 私は元のように、普通のJCに戻った。

 日常が帰って来たんだ。


「ただいまー」


 今朝も日課のロードワークを終えて、庭でのトレーニングも済ませたので、シャワーに直行する。

 汗で汚れたウェアを脱いで、裸で浴室に入ろうとすると


「あ、お姉ちゃん。先に使ってるよ」


 浴室に先客がいた。


 義妹の優子だ。

 小学生の女の子。


 彼女は一時期14才の肉体に成長し、国会前と国会議事堂で殺戮を繰り返し。

 その結果、腕力家の称号を得てしまったんだけど。


 それ、今も継続中。


 あの決戦の後、7才の肉体に戻って、阿比須小学校に戻ったけど。


 学校で優子様呼ばわりされているらしい。


 ……小学生の在り方としてマズいのでは。


 まあ私も「花蓮様」って呼ばれているんだけど。

 ……他人のこと言えないか。


 ああ、なんで優子が元に戻れたかと言うと。

 あの後、天野先輩と飛馬先輩の


 プリンセス死者蘇生


 プリンセス人体錬成


 の合わせ技で、新しく7才の肉体を作って貰って、そこから復活したんだよね。

 魂は普通に在ったから。


 流石は神の力と人間の力を操れるプリンセスだ。


 そのことを褒めると


「まあ、地獄道と畜生道と比較したら生温いクズ道かもしれないけど、こういうサポートは出来るから」


「右に同じや」


 言いながら天野先輩と飛馬先輩は、春香ちゃんのことをチラチラと見つめていた。




「お姉ちゃん、じゃあ後よろしく」


 シャワーを浴び終えた優子は、バスタオル入れからバスタオルを引っ張り出し。

 その7才の未成熟な肢体についた水滴をふき取っていく。


 全然肉がついてないけど、だからこそ可愛い感じ。


 入れ替わりに、私が入る。


 そのすれ違いざまに


「お姉ちゃん……我、日々ぐんぐん実力が伸びてるのを実感しているから、7年後覚えててね!」


 底抜けに明るい声でそう言われた。


 優子も朝のトレーニングしてるんだけど、私と一緒にはしてないんだよね。


 なんでも「いずれ仕合う相手と、稽古の内容を見せ合ってどうするの?」だって。

 東京でボコられて、前歯折られた上にすっぽんぽんにされた屈辱は忘れて無いよ。人類を救うことには協力したけどさぁ。

 そんなことを言われてしまった……。


 ……まぁ、7年後の話なんだし。

 そのときは私は21才で、今よりもっと強くなってるから、また返り討ちにしたらいいか。


 そう思い直し、私は浴室に入り、シャワーの栓を捻ってお湯を出した。

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