★妖魔神帝フレアー目線
そこで一息をついた。
……高揚感。
アビ、ノロジー、マイン……
見てるか?
大量に知的生物が住んでいる星。
地球。
この星を見つけたときは、皆で喜び、祝ったのに。
蓋を開ければ、大切な家臣を全て失うという、あまりにも悲惨な結果。
涙が零れる。
今更ながら。
知的生物は宇宙でも発生確率が非常に低い。
生まれれば奇跡。そう言っても差し支えない。
だから……どれほど嬉しかったか。
この青い星を見つけたときは!
それを……それを……!
今、妾の腹は満ちている。
とても満ち足りた気分だ。
……でも、妾だけでなく家臣たちの腹を満たしてやりたかった。
いや、妾の腹など実のところどうでもいい。
家臣の腹こそ、妾は満たしたかったのだ……!
何故、この場に家臣たちが居ないのだ……!?
許せぬ。下等生物ども……。
下等生物に生まれたなら、捕食者に喰われるは必定。
何故それを受け入れぬ?
宇宙の理に背く我欲の徒ども……!
許せぬ……許せぬ……許せぬ……許せぬ……許せぬ……!
妾は眼下の青い星を呪いの籠った目で睨みつけた。
覚悟しろ……!
人間ども……!
「見つけたーッ!」
妾が家臣たちのために、下等生物どもへの復讐を決意深くしているとき。
地球の大気圏を突破して、宇宙空間に出てくる人影があった。
その人影は何故か空気の無いこの宇宙空間で生命を維持しており。
空気が無いこの空間で、何故か声を発することが出来た。
そして妾は、その人影の名前を知っていた。
「……閻魔花蓮……いや、ヘルプリンセス……!」
★ここから主人公目線
「……閻魔花蓮……いや、ヘルプリンセス……!」
私の目の前で、最後の妖魔神であり、その帝王である存在が、私を見つめて言葉を発している。
ようやく見つけた妖魔神の帝王は、宇宙空間にまで逃げていた。
ここに至るまでどれだけ大変だったか。
でも……
妖魔神帝フレアー……!
ようやく見つけたよ!
この姿にチカラとして確実に混じっているノロジーが、あなたの居場所を教えてくれた。
私は私を憎悪の籠った目で見つめ、私を間違った名前で呼んだフレアーに
「今の私はヘルプリンセスじゃ無いよ!」
訂正する言葉を掛ける。
「ヘルプリンセスで無いなら何だというのだ?」
……理想的な返し。
だから私は名乗った。
妖魔神帝フレアーを討つに相応しい戦士の名として。
「私は
私の名乗り。
それを受け。
フレアーの表情が歪んだ。
激しい憎悪で。
「何が伝説の戦士だ……! 妾たちに牙を剥く、自然の摂理に従わぬ傲慢な下等生物どもよッ!」
そしてフレアーはその手に握った大鎌で、剣術の八相に似た構えを取り。
翼を広げて私に向かう。
「妖魔神帝フレアー! あなたが捕食した人間の魂……返してもらうよッ!」
私も背中の翼を広げ。指を突き付け。
羽ばたいて突撃し、正面からフレアーを迎え撃った。
こうして。
妖魔神と人類。
2つの知的生物の、その生存権を賭けた死合が開始された。
観客など誰一人として居ない、冷たい宇宙空間で。