「何のこれしき……ッ!」
ヒューマンプリンセスのロボパンチを、生身で押し返し、ビルとロボの拳の隙間から這い出そうとするフレアー。
フレアーは血まみれで、息も上がっていた。
無傷では無い……!
必死の形相。
ロボの拳につっかえ棒のように腕を立て、押し返そうとする。
そこに
刃が閃いた。
その一閃で、フレアーの2本の腕が肘のところで切り離される。
「なっ!」
驚愕するフレアー。
押し返すものが無くなり、ロボの拳はフレアーを押し潰す。
……刃を振るった者。
それは赤い六道プリンセス。
「バーサーカープリンセス!」
バーサーカープリンセス……阿修羅咲復活ッ!! 阿修羅咲復活ッ!! 阿修羅咲復活ッ!! 阿修羅咲復活ッ!!
「この星を舐めるなよッ!」
刀を真下から真上へと斬り上げた姿勢で。
完全復活を果たした咲さんは、狂戦士……いや獣王の風格でそう言い放つ。
「咲避けろ! フレアーだけは許せない!」
さらにそこに少年の声。
それは黄色の六道プリンセス。
グラトニープリンセス……萬田君!
「プリンセスヒデリガミサンレーザー!!」
グラトニープリンセスの突き出した両掌から、輝く球体が生まれ、そこから6000度の熱線が発射される。
それは壁にロボの拳でめり込んでいるフレアーを直撃し。
「アアアアアアアアアーッ!!」
フレアーの絶叫。
斬撃、重圧、超高熱。
三位一体の攻撃により、吐き出されるもの。
それはしばらく、呪いのように長く続き。
やがて、消えてしまった。
……勝った。勝ったよ!
知的生物の天敵をやっつけたぞ……!
やった……やったよ……!
ウオオオオオオオオオッ!
思わず洩れる勝利の雄叫び。
ひとしきり叫んで
「……咲さん、ありがとう。萬田君……ありがとう」
私はここに駆けつけてくれた2人に、心からのお礼を口にする。
お礼を口にしながら、私は咲さんに駆け寄った。
咲さんは
「ここで参加しないと私の六道プリンセスの存在意義が無いし」
そう言って、頼もしい笑顔を見せてくれた。
そして私を抱きしめ
「いーい阿比須の技だったよ」
……咲さんッッ!
私は、かつて自分の上を行っていた
「咲、閻魔さん」
萬田君も駆け寄って来る。
「萬田君もありがとう」
もう1回、お礼を言う私。
「僕だって六道プリンセスさ。可愛いだけじゃ無いのがボーイズの約束だって前にも言ったよね」
そう、笑顔で言う萬田君。
……そういえば。
聞いていないな。
ここで訊くの、マナー的にどうなのかな?
そんなこと、ちょっと思ったんだけど。
人類の天敵を討ち果たした高揚感で、私はつい思い切ってしまった。
前から気になっていたから。
「咲さん、萬田君」
「何?」
「何かな?」
笑顔の2人。
そんな2人に
「……ふたりはどこで出会ったの?」
何でこの2人、恋人同士になったんだろう?
前から気になっていたんだけど。
するとふたりは笑顔で
「暗い夜道」
そう答え、こう続けた。
「トモくんがいきなり、後ろからスタンガンで襲って来たんだよね」
「……だって僕は咲がどうしても欲しかったんだ」
にこやかに。
えーと……
自分でも理解できるくらい、サーッと血の気が引いていく。
高揚感が消え、一気に落ち着いていく私。
……訊かなきゃ良かった。
「トモくんでなければ寸刻みにして殺してたよ」
「僕はそれを覚悟してたけどね」
笑い合いながら、そんなことを思い出として語っている……!
……アカン。
このひとたちの馴れ初めは、訊いちゃダメな気がする……!
「花蓮ちゃん! やったね!」
最終形態の春香ちゃんが、私に向かって蜘蛛の歩みで移動してくる。
……私の一番のおともだちで、一番最初に六道プリンセスとして仲間になった女の子。
「うん……これで、六道プリンセスとしての使命も終わり……」
さっきのうっかり質問の失敗を誤魔化すように。
そう彼女に笑顔で応え、勝利をさらにもっと祝おうと思ったときだった。
……ヒューマンプリンセスのロボットアームが吹き飛んだ。
その下の存在が破裂的エネルギーを放って吹き飛ばしたのか。
そこに居たのは傷だらけの妖魔神帝フレアー……。
彼女は死んでいなかった。
けれど……
その姿は腕は肘から先が無く。
そしてその、さっきまで黒かった長い髪の毛は……
真っ白に、変色していた。