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第77話 鉄身五身の常駐化

 鉄身五身の常駐化。

 これが出来ないと話にならない。


 咲さんも出来る。

 優子も出来る。


 そして絶対……お父さんも出来る。


 だからお父さんにお願いしたんだよね。

 私、鉄身五身の常駐化をしたいって


 そしたら


「……辛いぞ?」


 そう言われた。

 ものすごく心配そうだった。


 ……そんなに?


「そんなに辛いの?」


「……寝てるときも鉄身五身するということを軽く考えてはいけないよ」


 想像はしてたけど。

 ……やっぱり、寝てるときも?


 どうやってするの……?

 それ……?


 全く想像もつかないよ。




「じゃあ花蓮。鉄身五身の常駐化に向けての修行をするぞ」


「はい!」


 緑色のジャージ姿の私は、広っぱに突き立てた鉄柱に後ろ手に縛られて。

 立たされていた。


「まず、それには一定以上の鉄身五身の防御力が問われる」


 そう言って、お父さんが手にしていたのは銃器みたいなもの。

 口径は10センチはあったかもしれない。

 銃身は40センチくらいあった。


 ……なんかバズーカみたいに見える。


 それを示しながら説明してくれた。


「……これは鉄球を撃ち出す銃器。常駐化で要求されるはずの一定以上の鉄身五身の強度が無ければ大怪我は免れん」


 ……一定以上無いと怪我するのか。

 自然と私は息を飲み、即座に覚悟を決めた。


 その意思表示をする。


「よろしくお願いします!」


 私は鉄身五身に意識を集中させる。


 闘気を練り上げ、自分の身体の表面に集中させる……。

 そして私の身体を文字通り、鋼鉄の強度へと高めていく。


 そのときに


 優子に負けて悔しかったあのときのことを思い出した。

 なすすべもなくボコられて、左腕をへし折られて。

 友達の脚まで折られた。


 ……こんなの、悔しすぎるよ。


 姉より優れた妹はいない……!


 悔しさのあまり、そんなワードが頭の中を駆け巡る。


 ……そしてその怒りが、私の鉄身五身をさらに向こうの段階へと移行させた!


「ウオオオオオ!」


 私の雄叫び。

 それに合わせて、お父さん


「いくぞ!」


 ドカッ! っという発射音で、鉄球が撃ち出される。

 まるっきし砲丸だ。


 来い!


 受けきる!


 私の覚悟が、砲丸を弾く鉄身五身を完成させる。

 キイン! という音がし、砲丸が私の足下に転がる。


 ドカッ! ドカッ! ドカッ!


 連続で撃ち出されるけど、それは悉く私に弾かれて、私の足下に落ちていく。

 衝撃で揺れる私の身体。


 もっと連続でも耐えるよ!

 お父さん!


 そして


「……合格だ。これだけの防御力があれば、常駐化に向けての修行を開始しても大丈夫だ」


 お父さんはバズーカを下ろし。

 そう、私に言ってくれた。


「やったぁ!」


 嬉しい!


 優子! 今度はお姉ちゃんがあなたをボコってやるんだから!

 家に迷惑かけた上、お姉ちゃんの友達の脚を折ってごめんなさいと言わせてやる!

 地上最大の姉妹喧嘩だ!


 私がそんなことを思いながら、鉄柱から外して貰っていると。


 一部始終をずっと見ていた春香ちゃんがこう言ったんだ。


「……花蓮ちゃんのお父さん……」


 お父さんが、呼ばれたので春香ちゃんの方を向いた。

 すると


「……お願いです」


 続く春香ちゃんの言葉に。

 ……私は驚いた。お父さんも驚いたに違いない。


「私にも鉄身五身を教えてください!」


 春香ちゃんはそう言った。

 とても、強い瞳で。

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