目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第69話 初代様の実力

 咲さんは初代様を厳しい目で見つめながら六道ホンを取り出し、片手でナンバーを入力する。


『Standing by』


 電子音声。


 そして咲さんは高く六道ホンを掲げて宣言した。


「変身! 六道シックスプリンセス!」


 咲さんの叫びに反応する六道ホン。


『Complete』


 そして赤い六道プリンセス……バーサーカープリンセスに変身した咲さんは飛び出した。

 右手に握った刀を両手に持ち直し、八相に構えて。


「おおおお!」


 雄叫びをあけながら迫る咲さん。

 初代様は動かない。


 半身で構え。

 まるで居合腰のように腰を落とす。


 そして


「阿比須族滅流! 繰手狩一撃クリテカルヒット!」


 咲さんの奥義の袈裟斬り。

 それが初代様を襲う。


 上から迫る刃を待ち受ける初代様。

 その初代様が繰り出す奥義は……


「阿比須族滅流奥義! 繰手狩一撃クリテカルヒット!」


 奇しくも同じ。


 初代様は踏み込み。

 斬り上げるように咲さんの刀を握る手首を狙う。


 手刀でだ。


 鋭い一撃だ。

 侍の斬撃そのもの。


 けれども所詮手刀。

 鉄身五身の相手では無い。


 ……そのはずだった。


 次の瞬間。

 咲さんの手首が、両方とも切断されてブッ飛んだ。


「!」


 咲さんは悲鳴をあげなかった。

 ただ攻撃をそこで中止し、跳び退る。


「……鉄身五身をしているからと、防御が成ったと思い込んだか? 甘いわ」


 初代様は酷薄な笑みを浮かべて、咲さんの未熟さを指摘する。


「プリンセス再生能力……!」


 咲さんは驚愕を表情に浮かべて。

 特殊技能プリンセススキルの名前を口にして再生。

 切断面から骨が伸び、筋繊維が纏わりつき、手を形成してゆく。

 そしてまだ再生しきっていない両の手で、徒手での構えを取りながらこう言った。


「私の常駐鉄身五身は、対戦車ライフルをも弾くのに……!」


 冷や汗を流しながら。


 常駐……?

 ということは、咲さん、実は24時間365日、休みなしで鉄身五身やってたの!?


 ……何のためか分からないけど、これが上級の阿比須の使い手ってこと……?


 私の数歩先を行く女性……咲さん。

 そのさらに上をいく、優子……初代様!


「対戦車らいふるとやらがどれほどのものか知らぬが、鉄身五身で守った身体を、同じ鉄身五身で守った手刀で打ち破った。単純な理屈じゃ」


 初代様の、未熟者を叱責する熟練者の言葉。

 私は絶望的な気分になる。


 そんな人間が妖魔獣になってしまった……!


 恐ろしすぎる!


 そこに


「咲ーッ!」


 少年の声がした。

 切羽詰まった。


 咲さんはそれに反応し、振り向いた。


 そこにいたのは、可愛い小学生男子。

 美少年。鬼畜ショタの疑いがもたれる咲さんの恋人……いや婚約者。


 萬田君。


「トモくん! 危ない!」


 そんな言葉。

 だけど彼はそれは一切無視し


 走りながら六道ホンを取り出して、変身コードを撃ち込み


『Standing by』


 萬田君は高く六道ホンを掲げて宣言した。


「変身! 六道シックスプリンセス!」


『Complete』


 そして光に包まれ、彼は初代様に突っ込んでいった。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?