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第31話 夏休み前の訪問者

「今日で1学期は終了です。皆さん、阿比須中学の生徒としての自覚を持ち、生活リズムを崩さないように気を付けてください」


 今日は1学期最終日。

 体育館で終業式。


 生徒会長が壇上で生徒会からの連絡事項を喋ってる。

 生徒に絶大な人気がある人。


 名前は確か……天野先輩。


 見た目が……ハッキリ言って女子大生。


 身長がね……170センチはあるんだよね。

 中3なのに。


 髪型も顔つきも大人びてて、見た目どうみても20才くらいに見える。

 見た感じ、肩に掛かる程度の位置で髪を切り揃えた、良い大学に通ってるお姉さん。


「最近、服装面で指導を受ける生徒の数が増えています。校則が厳しくなる要因になります。そこを肝に命じてください」


 声も堂々としてて、まるでどっかの女社長みたい。

 実際、家が超お金持ちって話だ。


 色々、憧れるよねぇ……


「生徒会長ー! 好きだー!」


「ババア結婚しろ!」


 ……男子がテンションのままに、意味不明のヤジを飛ばしてる。

 まあ、気持ちは分からなくも無いんだけど。


 ……しかし、話が長いな。

 この後、校長先生の話もあるんだよねぇ。




「やっと終業式終わったよ」


 教室。

 私が自分の席で潰れていると


「まあ、長かったよね。生徒会長の話も長かったけど、校長先生の話はもっと長かった」


 国生さんが私の傍に来る。

 楽しそうだ。


 夏休みの計画でも立てているのかな?


「国生さんは夏休み何をするの?」


「宿題と読書と執筆」


 あと、六道シックスプリンセスの活動。

 これは小声で。


 ……なるほど。


「中3になったらこうはいかないから、やれるだけやりたいよ」


 本当に楽しそうに言う。


 最近、ちょっとだけ宣伝しなくても読んでくれる人が出て来たんだよね。

 そう嬉しそうに言う。


 ……充実してる感じするなぁ。


「閻魔さんは?」


 んーと……


「例年なら、山籠もりなんだけど……」


 飛騨の山で、熊と稽古。

 熊と戦い、熊を食べて生活する。


 それが私の夏休みの過ごし方。

 夏休みの前半で宿題を終わらせて、後半は飛騨で過ごすんだ。


 ……でもさぁ。


「今年は六道シックスプリンセスしなきゃいけないから、この阿比須町から離れられないよねぇ」


「……んー」


 私の言葉に、国生さんは少し考える仕草をして


「そうでもない気もするんだけどなぁ」


 だって、毎回浄化に3分掛かってないし、苦戦もしてないし。

 ぶっちゃけ、プリンセスは1人居たら十分じゃない?


 ……そうかなぁ?


 ……そうかも。


 こないだの200以上の暴走族妖魔獣も、多分ビーストプリンセス単騎で十分だったと思うし。

 だったら私、例年通り2週間くらい山籠もりしていいのかな?


 咲さんに、修行の面で先を完全に行かれてるのも実は少し悔しいんだよね。

 咲さんの場合、鉄身五身てつみごしんをやった場合の防御力、明らかに私と違うもん。

 あの人、ショットガンやサブマシンガンで撃たれても無傷でいられるから。

 私だったらちょっと怪我してしまうのに。


 女の子だからということで許して貰って来た「千尋の谷に飛び降りる」修行、やるときが来てるのかなぁ……?


「でも……ちょっと寂しいかな」


 ぼそ。


 国生さんがそんなことを。


 えっと……?


 私がちょっと驚いて国生さんを見ると

 国生さんは


「あ、ゴメン。ちょっと声に出てた」


 そう言って侘びた。



 そのときだった。



 ガララ、と教室の引き戸が開き。

 誰か入って来た。


 皆、驚く。


 私も見る。

 見て、驚いた。


「閻魔さんと国生さんね」


 訪問者。

 それは2人いて。


 まず1人は髪を肩に掛かる程度で切りそろえた、絶妙なプロポーションの高身長女性。

 これで中3だなんて信じられない。


 この学校の生徒会長の、天野先輩。


「ちょっとええかな?」


 大阪弁の女性。

 ……この人も生徒会長に並ぶほど、背が高い。


 で……


 胸がメチャデカイ。


 なにこれ……?

 Hカップ?


 JCなのに?


 私たち2人の目が点になった。


 会長同様に制服のセーラー服着てるから、間違いなくJCなんだろうけど。

 目付きはちょっと眠そうで、髪型はおさげ。

 長めの髪を後ろで三つ編みにして下げてる。


 すると、会長がいきなり切り出した。


「いきなりで申し訳ないんだけど、私の家に来て欲しいの」


 会長の言葉。

 えええ?


 何でですか?

 私たち、別に生徒会の役員でも無いですし、会長と関わりもないですよね?


 そう思って口を開きかけると


 スッと巨乳さんが身を寄せてきて


 こう、私に囁いたんだ。


「ウチらも六道シックスプリンセスやねん」

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