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第21話 謎の女子高生

「俺の愛を搾取しやがって! 思い知れ!」


 その男はカッターナイフを振り上げて襲い掛かって来たらしい。

 いきなりだったので、国生さんのお母さんは動けなくて。


 そのままだと、顔を切りつけられていたらしい。


 けれども


 その場にいた女子高生……

 何でも、待合で椅子に座っていたブレザーの女子高生がカッ飛んで来て


 腰に吊るしていた日本刀を抜き放ち、男の手に持ったカッターナイフを一刀で破壊したそうだ。


 その女子高生は……


 わりと背が高くて、髪が超長い人だったそうで。

 国生さんのお母さんより高身長だったそうだ。

 で、凛とした感じで、力強さを感じる綺麗めの少女だったらしい。


 で、刀の切っ先を突きつけながら冷たい目で言った。


「……何で看護師さんを襲ったの?」


 その様子に気圧されていた男は、少し躊躇していたけど


 こう言ったらしい。


 国生さんのお母さんを指差しながら


「その女が既婚者の癖に俺に優しくして俺の愛を搾取しようとしやがったからだ!」


 その言葉を聞いた瞬間。


 女子高生は凍えるくらいに冷たい声でこう言ったらしい。


「……そう」


 そして刀を握り直し


 剣が閃いた。

 凛とした声を発しながら


阿比須族滅流あびすぞくめつりゅう奥義! 達磨山河転倒だるまさんがころんだ!」


 その掛け声が終わるとき。


 女子高生の姿はその男の背後に行き過ぎていて


 女子高生が納刀した瞬間。


 一瞬にして男の両手両足が切断され、達磨トルソーになっていた。




「そんなことがあってねぇ」


 国生さんのお母さん、苦笑い。


「手足を無くしてだるまさんになった男の人を、警察に引き渡したら、精神的に参ってしまって倒れちゃったのよ」


 事故の救急対応くらい普段やってるのにねぇ。どうしたのかしら情けない。


 苦笑しながら国生さんのお母さん。


「怪我無くて良かったよ!」


 国生さんがお母さんに抱き着く。

 メチャメチャ心配してたもんね。

 当たり前だよ。


 国生さんに抱き着かれているお母さんは


「今日は特別に帰って良いって言われたわ。暴漢の襲撃を受けた記憶を、お酒でも飲んで忘れて下さい、だって」


 ……なるほど。

 国生さんのお母さん、私服だもんね。


 看護師さんで、病院で。

 ついでに勤務中に襲われて。


 その状況なら、ここがその現場の病院で、継続勤務なら看護師さんの服だよね。

 それが違うんだから、そういうことなんだろう。


「……その女子高生の人は?」


 弾かれたように顔を上げ、国生さん。


 ああ、そういえば。


 話を聞いた限りでは、正当防衛は成立しないし。

 武器を破壊した後、だるまさん。

 これは断じて正当防衛じゃない。


 だから、逮捕されちゃったんだろうか?


 ……やったことは正しいとは思うけど。

 そうでもしなきゃ、ストーカーをやめないもんね。


 だけど国生さんのお母さん曰く


「えっと、今小学生のオトコノコの診察に付き添ってる」


 ……え~?

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