「ば、馬鹿な……! これほど悍ましい心を持った妖魔獣が、一方的に浄化された……!? 信じられねぇ……!」
筋肉男ノロジーは私たちの浄化に、恐れ戦いていた。
……私たちは伝説の戦士なんだッ! こんなのわけないよッ!
「何度でも来なよ」
バーサーカープリンセスこと、咲さんが進み出て、言った。
この中で一番の年長者だからかな。
代表として。
「来るたびに浄化されて他責思考を無くした真人間が増えていくだけだから……」
これは、グラトニープリンセスこと萬田君。
そっと、咲さんの傍を確保しつつ。
……あの2人……心の底で繋がってる感じだ。
ドキドキしてしまう。
成人向けの2人だよね。
そんなことを思っていたら
「そ、そうだよッ! 私も閻魔さんと一緒に、何度来ても戦うよ! びょ、秒殺してやるから!」
ビーストプリンセスの国生さん。
うん……そうだね。
「そういうわけだから。絶対に、妖魔獣の餌食になる人を出したりしないよ……私たちが居る限り!」
そして私は啖呵を切った。
それに対しノロジーは
「お、覚えていやがれ! 俺様はこの屈辱を忘れないッ!」
そう言い残し。
空間の歪みに消えて行った……
そして。
その後警察が駆けつけてきて。
妖魔獣から人間に戻った達磨男性は、再逮捕された。
「この達磨、どうやって逃亡したんだ?」
「市民の皆さん、お騒がせしました」
駆け付けた警察の人たちが私たちに頭を下げて連行していく。
連れていかれるとき、達磨男性は
「この世の全ての不都合は、本人の能力不足が原因……俺はその努力を全くしていなかった。これに気づくのが遅すぎたよ……今からでも間に合うだろうか……?」
……他責思考を無くし、自責しまくりながら、泣きながら連れていかれた。
前よりはマシな人間になって欲しいよ。
達磨になっても、執念があれば鉄の義手義足を動かす術を身に着けられる。
確か、ゼスモスって言うんだっけ。
だから私は警察の人に
「あの人を閉じ込める留置所は灼熱のサウナ部屋にしてあげてください」
ってお願いした。
灼熱のサウナ部屋で覚醒を促す。
それがゼスモスの習得法だったはず。
警察の人は
「了解しました閻魔様」
……受け入れてくれた。
頑張るんだよ。おじさん。
これまで頑張らなかった分、必死でね。
私はそう、心でエールを送ったんだ。
その後、国生さんのお母さんと一緒に国生さんの家に戻って。
家のリビングで録画を見たんだ。
国生さんのおススメの「人間のクズやお払い」の。
……なるほど。
見てて思った。
これは単純に悪党の命を取るだけでは、頼み人の恨みは晴れないよね。
確かに。
だからマトから全てを奪い取って思い知らせたのか。
マトの誇りである、自分自身の強さを。
私は仕置人たちの残酷さと理解力の高さ、頼み人への共感性に唸ってしまう。
そんな私の様子に国生さんは
「閻魔さんにもこれの良さを理解してもらえて嬉しい」
そう言って、私の隣で微笑んでいた。
本当に嬉しそうで。
私が国生さんの好きなものを理解したことが、国生さんの喜びになった。
そこに喜びがあったんだ。
だから
もっと知りたいと思った。
国生さんってどんな女の子なの?