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第27話 鬼畜ショタの猛攻

 怒りに燃えたビーストプリンセスが外に飛び出す。

 私も仲間だからそれに付き従うように飛び出した。


 ベノストーカーは病院前広場で。

 ホースキックのダメージからまだ立ち直れないようで、外で呻いて苦しんでいる。


 ビーストプリンセスがそこに言い放つ。


「お前の身勝手な欲望で他人を犠牲にするなんて許されるわけがないでしょ!」


 ベノストーカーはその言葉に対して


「俺は幸せになってはいけないと言うのか!? ヒトとして生まれたからには幸せになる権利がある!」


 そんな鳴き声を発する。


「何を!」


 ビーストプリンセスがその鳴き声を許せず、さらに攻撃をくわえようとするけど。

 私は言った


「ビーストプリンセス! まだ発狂りかいしていないからそれ以上はいけない!」


 このままさらに攻撃をくわえて、妖魔獣を爆散させる結果になったら。

 素体になった人間も死んでしまう。


 鳴き声が許せないので倒したい気持ちは分かるけど、それはいけないんだ。


 私の言葉に、ビーストプリンセスは悔しそうな表情を浮かべ、グッと堪えた。


 ……国生さん。


 心中を想像し、私も辛くなった。


 だけどそこに


「……人が幸せを目指す権利があるのは当然だけど、他人にも同じようにその権利があるんだよ。何でお前のために自分の幸せを破壊しなければいけないのかな?」


 グラトニープリンセスの、萬田くんの言葉があったんだ。




「そのぐらい、可哀想な俺のために努力して乗り越えるべきだ! お前らの幸せはたまたま運が良かったから掴めた幸せだろうが!」


 ……ふざけた鳴き声。


 何がだ


 お前は他人の頑張りや歴史を認めないのか。

 自分ばかりを憐れんで。


 許せない。

 思う存分阿比須真拳を振るってワカらせてやりたい衝動に駆られるよ。

 だけど


「……他人は努力しないで幸せを掴んだとでも言いたいのかな?」


「そうだ! 持って生まれた才能の結果だ! 才能の無い奴は頑張ってもダメなんだ!」


 そんなベノストーカーの鳴き声に、グラトニープリンセス・萬田くんは冷笑を浮かべたんだ。

 そしてこう言った。


「……ボクの父親は、家にキチンとお金を運んで来て、子供の将来を気に掛けて自分の人生のほとんどを子供に費やせば親の責任を果たしていると思ってるサイテーヤローなんだけど」


 ……は?

 私の目がテンになる。


 言ってる内容が理解できないし、話が見えない。

 全然最低じゃないじゃん。すごく立派じゃん。


 だけど続く内容で、萬田くんが何を言いたいのか分かった


「……それでも家族のために使った時間の残りで勉強して、今でも仕事に必要な資格をいっぱい取ってるし、学生時代は1日に7時間以上勉強をしたって言うんだよね……おじさんはそういう努力を否定するんだから、きっとそれ以上に頑張ったんだよね?」


 ニヤニヤ嗤いを浮かべながら。

 その言葉に、ベノストーカーは応えられなかった。


 そこに萬田くんは畳みかける


「あれれ? 何で黙っているの? 取得した資格の数は? 学生時代に日常的にやっていた勉強時間は? 教えてよおじさん?」


「ウ、ウルサイーッ!」


 叫ぶベノストーカー。


 そしてこう続ける


「努力できるのも才能ナンダ! 俺は悪くない、悪くないーっ!」


「自分に努力の才能が無いから努力できなかった。それ、結局他責だよね。自分で一生懸命になったこともないくせにそれで他人が積み重ねて獲得してきたものまで否定して……恥ずかしく無いの? おじさん、何歳? 5歳かな?」


 その言葉を萬田くんが発した瞬間だった。


「ダマレエエエエエ!!」


 ジャッ、と。

 ベノストーカーは萬田くんに毒液を吐き掛けた。


 溶解液。


 だけどそれは、颯爽と飛び込んで、萬田くんをお姫様抱っこで救出したバーサーカープリンセス……咲さんの活躍で阻まれる。


 咲さんの腕の中で、萬田くんはこちらを見て言い放った。


「妖魔獣が発狂りかいした! 今だよ!」


 ……よし!


 今こそ、浄化のときだよ!

 私たち、私と国生さんは頷き合い、飛び出して行った。

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