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第25話 妖精ケンジャキと彼の六道プリンセス

「ゴメン遅れた」


 変な犬面妖精の登場に戸惑っている私のところに、馬面妖精のバキがやってきた。


「バキ、あれはあなたの仲間?」


 私は犬面妖精を指差す。

 すると。


「そうだよ。アイツはケンジャキ。……僕のライバルさ」


 ライバル……!


 妖精同士でも、そういうのあるんだね。

 私がそのことに驚いていると


「バギ、オデノブリンゼズダヂワザイギョーダ!」


 犬面がこっちに寄って来て、何か言っている。


 ……なんて言ったんだろうか?


「それはどうかな……? 僕の見つけた花蓮たちだって、素晴らしい逸材なんだぞ……?」


 ……なんか意思の疎通が成立している。

 どういうことなの?


 そして


 私がそう、2体の妖精の言い合いに戸惑っていると。


 男女のトイレ2つから、2つの人影が飛び出してきた。


 ひとりは赤。

 赤い六道シックスプリンセス。


 頭部以外の赤い全身タイツに、スカート、タンクトップみたいなものがついている。

 デザインにはフリルが入ってて、ギリ魔法少女に見える。

 そして両手両足に同色のグローブとブーツ。

 グローブの甲の部分に、剣と拳銃の意匠がある。


 変身者は……咲さん。

 顔がそのまんまだし……腰に日本刀を吊るしていたから。


 彼女は名乗った。


「阿修羅道の実行者! 殺戮の女神! バーサーカープリンセス!」




 もうひとりは黄色。

 黄色の六道シックスプリンセス。


 こっちは全身タイツではなく、チョッキみたいな感じで。

 でも胸元が見えていて、半ズボン。


 両手両足に同色のグローブ&ブーツ。

 そのグローブとブーツには、蠅、飛蝗、太陽、豚のエンブレムが。


 これは……萬田君だった。


 ……もしやと思ったけど……やっぱり。


 ちょっと待てや!


六道シックスプリンセスは6人の少女じゃ無かったの!?」


 私が指差して妖精2体にツッコむと


「……男の子でも10才から14才までは女の子みたいなものだよね?」


「オンドゥルソウオモッデルンディスヨ」


 ……なんか私の方が常識の無い異常者の差別主義者みたいな扱いを受けてしまう。

 おかしいな……私、何か間違ってるの?


「餓鬼道の体現者! 飽食の騎士! グラトニープリンセス!」




 変身後の見得切りと、名乗りが終わった後。


「……六道シックスプリンセスが現れやがったか……ならば」


 ノロジーは2人の敵の出現を認識し、対抗手段に出た。

 大きく両腕を広げ、叫ぶ。


「再度オーダーだ陛下! こいつにさらなる殺戮のパワーを!」



 ……ここにいるストーカー妖魔獣にさらなる力を与えたのだ。


 ノロジーの叫びに反応し、白く輝く球体が発生。

 それは瞬く間に膨張し……


 破裂!


 そのエネルギーは、全てストーカー妖魔獣に吸い込まれていく。


 達磨状態で暴れまわっていたストーカー妖魔獣は、その瞬間


「あがああああああ!」


 苦しみの声を上げ、変化していく。

 ただの達磨男性から……


 6メートル以上ある、紫色で人面のキングコブラに。


 キングコブラの特徴的な部分……首にある襟のような部分の縁に、刃物のような突起物がついている。

 普通に切れ味が良さそうで、刃物として使えそう。


 ……こいつ、厄介だ。


「シネシックスプリンセス!」


 変身したストーカー妖魔獣は、奇声を発した後、毒液を吐き出した。

 それは咲さん……バーサーカープリンセスを狙ったものだったけど、咲さんはその場を飛び退いて回避する。


 すると

 毒液が着弾した床が、シュウウという音と煙を上げて溶けてしまう。


 ……こいつ。

 猛毒の妖魔獣なんだ。


 倒さなきゃいけない。

 こんな奴を放置していたら、一体どれだけの被害が出るのか……?


 確か、動物が吐き出す毒のことを英語でベノムって言うんだっけ?

 だったらこいつは……毒を吐くストーカー妖魔獣だから……


「ベノ……ストーカー……そうよ! ベノストーカーだ!」


 私は目の前でとぐろを巻いて威嚇する巨大な人面キングコブラ妖魔獣を、そう命名した。

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