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第23話 腕力家・阿修羅咲というJK

「なので別に警察は問題ないのよ。警察は私を逮捕は出来ないし、しないから」


 ……なるほど。

 咲さんはあっけらかんとした調子でそんなことを言った。

 内容はとんでもないんだけど。


 国生さんは


「腕力家様に助けていただいて嬉しいです! 厄介なストーカーが今後の人生でお母さんを襲ってこない確約を貰えたようなものですし!」


 そう言って、ペコペコしてた。

 だよねー。


 ストーカー、両手両足無くして、他人を襲うことはもう物理的に出来ないし。


 しかし、よく生きてたな。

 国生さんのお母さんの口ぶりだと、生きてたみたいだし。

 なので


「しかしストーカーもよく生きてましたよね。両手両足切断されて。普通ショック死するんじゃないかと思うのに」


 私のそんな素朴な疑問に


「ああ、そこは大丈夫。阿比須族滅流奥義・達磨山河転倒だるまさんがころんだは、寝てる間に処罰対象の手足を切断して達磨さんにする奥義だから」


 カラカラと笑って咲さん。

 そのせいで、出血も痛みも無いらしい。

 咲さん曰く「痛みを与えぬ有情の奥義」だって。


 ……そうなんだ。


 だから死ななかったし、病院にも血の汚れが無かったんだね。

 良かったね。死ななくて。


 で……


 私はさらに、もうひとつの疑問について訊ねる。


「こちらは弟さんですか?」


 手を繋いでいる小学生のオトコノコ。

 可愛いけど、咲さんにあまり似てない気がしたんで。


 女の子と見紛うくらいカワイイ。


 すると


「ううん。私の恋人」


 ……即答。

 マジっすか……!


「どうも。咲の恋人の萬田智まんだともです」


 オトコノコは頭を下げて自己紹介をした。

 これって犯罪では? と思ったけど。


 ……ああ、この人法律の外の人だったっけ。

 じゃあいいのか。


 私は素直に納得する。


「今年結婚するのよ」


「僕としても男性のゴールデンタイムの間に咲と結ばれたいからね」


 そんなことを見つめ合いながら微笑み合い、言葉を交わす。


 ……その仕草に私は対等を感じた。

 これは私たちみたいな、一般的なJCは知らなくていい世界かな?


 思わず私は、いや私たちは赤面してしまった。

 なんかやらしい。


 そう思っていたら


 ……私たちの目の前で、2人の影が重なった。

 咲さんが屈んで、萬田くんに顔の位置を合わせて。


 私と国生さんは心底驚き、焦る。


 はわわわ! は、犯罪なのに!

 何をやっても許されるんだ本当に!


 だって周囲の人、見て見ぬふりしてるもの!


 腕力家様パネェ!

 私はそれを心の底から思い知ったんだ。


 そのときだった。


 突如、病院の玄関……エントランス?

 そっちの方で、強烈な破壊音と怒号と、悲鳴が聞こえてきたんだよね。


 何か騒ぎが起きている……


 ……な、何!?

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