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第20話 あまりにも理不尽なこと

「ええっ! す、すぐ行きます!」


 電話に何かを聞き、取り乱している国生さん。


 私も慌てた。


 ど、どうしよう……!?


「何があったの!?」


 とりあえず捻り出せたのはこの言葉で。


 電話を切って、私に視線を向けてきた国生さんに言ったんだ。


 すると


「お母さんが頭おかしい人に襲われた!」


 えええっ!?




 テスト勉強や必殺シリーズどころじゃない。

 私たちは病院に急いだ。


 国生さんの家は共働きで。


 阿比須町の町役場で働いているお父さん。

 そして看護師のお母さん。


 ウチと同じかな……


 ウチは武術家と裁判官の共働きなんだけど。


 阿比須中央病院。

 この町で一番大きな病院。

 呼び出されたのはそこらしく。


「国生春香です!」


 受付で名前を名乗ると


「ああ、国生流子こくしょうりゅうこさんの娘さんですか」


 受付の女性は淡々と返答し


「8番の前の部屋に行ってください」


 指示を出した。




 言われた部屋に駆け込んだ。

 本来は病院で走るのは良く無いんだけど。


 すると


「あ、春香」


 1人で丸椅子に座っていた女性が普通に返してきた。


 ……変質者に襲われた割には、平気そう。


 国生さんのお母さんは……

 何と言うか、見た目が若かった。


 国生さんが14才だから、所謂アラフォーのはずなんだけど。


 なんだか、まだ30才ギリギリに見える。

 30才くらいの国生さん。

 例えるなら


「お母さん!? 大丈夫なの!?」


 慌てた国生さんがお母さんに駆け寄った。

 国生さんのお母さんは


「ああ、大丈夫よ。ショック状態で調子悪かっただけだから」


 小さく微笑みながら。


 で、何があったか教えてくれた。




「救急搬送されてきた患者が襲ってきたって……」


 訊いた話はとんでもない話で。


 なんでも、国生さんのお母さんが仕事で、救急搬送された男性を処置したそうなんだけど。


 後日、その救急搬送の代金を払いに、勤めている病院に来たそうなんだけど。

 その男性。


 そのときに、偶然お母さんを見かけたらしい。


 そしたら


 いきなりプロポーズされた。


 ……は?


 なんでよ、と思ってしまう。


 男が言うには、救急搬送でのきめ細かい治療に惚れてしまった。

 看護師のお嫁さんは逃すなと聞いている。

 俺と結婚して欲しい、だって。


 国生さんのお母さんは


「いえ、無理です。私はすでに結婚してて子供もいますから」


 そう言って断ったんだけど


 男は


「じゃあなんであんなに優しく看護した!?」


揶揄からかったのか!? ふざけるな!」


「すぐに離婚して俺と結婚しろ!」


 そう言って暴れ出し。

 警察が出動する事態に。


 でそのまた後日。

 つまり今日。


 国生さんのお母さんは勤務先の病院で襲われたそうなんだ。


 ……刃物を持ったその男に。

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