「必殺ってお金を貰って悪人を退治するあれ?」
たまにお正月に特別番組でやってる時代劇だよね?
昔の作品だったと思うんだけど。
「そう!」
国生さんは嬉しそうだ。
うーむ……
なんかこれは下手に触ると不味い気がする。
けど。
……一方的に打ち切ってしまうのもなぁ。
仲間なんだし。
なので
「好きになる切欠ってあったのかな?」
昔の作品なのに、という感じで私は訊いた。
すると……
「話すと長くなるから、後で良いかな?」
国生さんの方から、切り替えを言われる。
まあ勉強しに来たわけだしね。
一緒に勉強する。
小さなテーブルで、座布団2つ。
向かい合って座りながら。
国生さんは小説を書いてるだけあってかな。
国語の相談に関する返答が的確だったと思う。
その辺指摘すると。
「いや、その辺は国語の成績と関係ないよ。まぁ、流石に0点だったら話は別だけど」
意味の伝わる文章が書けたら小説は書けるしね。
そう言うんだ。
「何で普段小説書いてるの?」
「そこのお古のノートパソコン」
机の上の古めのノーパソを視線で示して
半分壊れてて、ネットに繋げられないし、起動時に変な音が鳴るけど、メモ帳がまだ生きてるから小説は書けるんだよね。
データは外部にとっておけば消えないし。
そんなことを楽しそうに。
……なんだか、ちょっと打ち解けて来た気がした。
「必殺を好きになる切欠って?」
「無印仕置人の、人間のクズやお払いを見たことかな」
あれを見たとき、とんでもないざまぁを見てしまったよ!
って、エックスでポストしてしまった。
そんなことを熱く語る国生さん。
英語の単語の暗記合戦をしてるときに。
雑談で。
「どこが良かったの?」
「とことんまで、依頼人の気持ちに寄り添って、ただ悪党を倒すだけで終わらなかったところだよ!」
何を破壊したら本当に思い知らせることができるか。
いや、すごいんだよ!
後で1回見ようね!
そんなことを早口で。
……よっぽど面白かったんだろうなぁ。
そして数学の勉強に入り。
1時間くらい経過したとき。
「そろそろ休憩しない?」
国生さんの提案。
うん、そろそろ休憩はありだよね。
「私、飲み物淹れてくるよ」
席を立ちながら国生さん。
私は手伝おうとしたが
「良いから」
そう言われて、押し止められる。
そのときだった。
ブーンって。
国生さんのスマホが鳴ったんだ。
「……お母さん?」
そう言って、電話を取る。
もしもし?
国生さんは電話でそう言って。
次の瞬間、国生さんはその顔に驚きと悲しみ、そして怒りの混じった複雑な感情を浮かべていた。