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第19話 一緒に勉強した

「必殺ってお金を貰って悪人を退治するあれ?」


 たまにお正月に特別番組でやってる時代劇だよね?

 昔の作品だったと思うんだけど。


「そう!」


 国生さんは嬉しそうだ。


 うーむ……

 なんかこれは下手に触ると不味い気がする。


 けど。


 ……一方的に打ち切ってしまうのもなぁ。

 仲間なんだし。


 なので


「好きになる切欠ってあったのかな?」


 昔の作品なのに、という感じで私は訊いた。


 すると……


「話すと長くなるから、後で良いかな?」


 国生さんの方から、切り替えを言われる。

 まあ勉強しに来たわけだしね。




 一緒に勉強する。

 小さなテーブルで、座布団2つ。

 向かい合って座りながら。


 国生さんは小説を書いてるだけあってかな。

 国語の相談に関する返答が的確だったと思う。


 その辺指摘すると。


「いや、その辺は国語の成績と関係ないよ。まぁ、流石に0点だったら話は別だけど」


 意味の伝わる文章が書けたら小説は書けるしね。

 そう言うんだ。


「何で普段小説書いてるの?」


「そこのお古のノートパソコン」


 机の上の古めのノーパソを視線で示して


 半分壊れてて、ネットに繋げられないし、起動時に変な音が鳴るけど、メモ帳がまだ生きてるから小説は書けるんだよね。

 データは外部にとっておけば消えないし。


 そんなことを楽しそうに。


 ……なんだか、ちょっと打ち解けて来た気がした。




「必殺を好きになる切欠って?」


「無印仕置人の、人間のクズやお払いを見たことかな」


 あれを見たとき、とんでもないざまぁを見てしまったよ!

 って、エックスでポストしてしまった。


 そんなことを熱く語る国生さん。

 英語の単語の暗記合戦をしてるときに。

 雑談で。


「どこが良かったの?」


「とことんまで、依頼人の気持ちに寄り添って、ただ悪党を倒すだけで終わらなかったところだよ!」


 何を破壊したら本当に思い知らせることができるか。

 いや、すごいんだよ!


 後で1回見ようね!


 そんなことを早口で。


 ……よっぽど面白かったんだろうなぁ。




 そして数学の勉強に入り。

 1時間くらい経過したとき。


「そろそろ休憩しない?」


 国生さんの提案。


 うん、そろそろ休憩はありだよね。


「私、飲み物淹れてくるよ」


 席を立ちながら国生さん。

 私は手伝おうとしたが


「良いから」


 そう言われて、押し止められる。


 そのときだった。


 ブーンって。

 国生さんのスマホが鳴ったんだ。


「……お母さん?」


 そう言って、電話を取る。

 もしもし?

 国生さんは電話でそう言って。


 次の瞬間、国生さんはその顔に驚きと悲しみ、そして怒りの混じった複雑な感情を浮かべていた。

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