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第17話 国生さんと仲良くなりたい

「ここ、中間テストに出るからなー」


 先生が歴史の授業で重要キーワードを示したのでメモする。

 そういや来週からだっけ。


 中間テスト。

 というか、定期テスト。


 私にとっては死活問題だ。


 阿比須中学は、定期テストの結果を100位まで貼り出す。

 合計250人くらいの人数だから、ざっくり半分より上、って感じかな。


 で、何が拙いのかって?

 それは……私の名前がその貼り出された表に無いと、月のお小遣いが500円下がるんだよね。


 前のテストは100位に入れなかったから、今の私のお小遣い……2000円。

 今回も入れないと、1500円になっちゃう!


 それに関して、お母さんは


「ゼロになったら、次からは逆に500円貰うからね」


 そう言って、笑顔で私を脅す。

 ……もしそうなったら、お年玉が無くなっちゃう!


 なので私は気合を入れてキーワードをメモした。




「閻魔さん、週末に図書館に行って勉強しないですか?」


 放課後。

 帰る準備をしていたら。


 国生さんにそう声を掛けられた。


 ……なんか、まだ遠慮があるなぁ。


 特に2人きりのとき。

 仲間なのに。


 仲間って友達に限りなく近いものだよね?

 違うのかな?


 まぁ、いきなりフランクにしろっていうのも何か違う気がするな。

 気が遣えてないってことのような気がするし……


「うん、いいよ。何時に集合する?」


 そう、私は国生さんの提案に乗ることにした。




「10時集合で、図書館前……」


 阿比須町立図書館前。

 その入り口付近で。

 時計を見ながら、私は国生さんを待っていた。

 もうすぐ夏。


 白いシャツと、膝までの丈の灰色のズボン。

 そんなのを身に付け、私は国生さんを待っていた。

 バッグに黒のナップサックを持って来た。


 暑いなぁ……

 でもこれから、もっと暑くなるんだよね……。


 今日勉強するのは、社会科関係と、理科。

 他は家でやろう。


 数学は時間かかるし、自分との戦いだし。

 英語は暗記で自分との戦いだし……。


 国生さんはどんな格好で来るのかなぁ……?

 私、男の子みたいな恰好で来ちゃったけどさ……

 特にこの白シャツ。

 袖を肩までクルクル巻いてるから。

 余計なんか、男の子っぽい。


 そしてまた、時計を見る。

 あと15分……


 自分は30分前行動がいいかなと。

 もう15分待ってるんだけど……


 すると


「お待たせ閻魔さん」


 タッタッタ


 水色ワンピースの眼鏡の女の子が、ベージュ色の手提げ鞄持ってやってきた。

 ぶんぶん手を振りながら


「ごめんなさい。もっと早く出てくるべきだった」


 駆けつけて、荒い息。

 ハァハァ言ってる。


「いや、勝手に私が早く待ってただけだから」


 私はそう言って笑って。

 いざ、図書館に入ってみたら。


 ……なんか、自習スペースが全部埋まってた。

 賢そうな人たちが、一生懸命勉強している。


「……大人気だね」


「そうみたいですね……」


 ふたり、言葉に詰まる。


 色々考えた。

 どうすればいいか。


 私の家で勉強する……


 いやー……無いでしょ。


 あんな落書きだらけの家にヒトを呼ぶなんて。

 恥ずかしいし、きっとドン引きされる。


 だとしたら……


 ガストンみたいなファミレスで、ドリンクバーだけ頼んで勉強する?


 あー……


 迷惑行為かもしれないし。

 それをやると、きっとお店の人が困ると思うんだよね。

 苦情が言えなくて。


 だって……


 私のお父さんって世界に3人しかいない「腕力家」のひとりだから……

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