放課後になった。
約束通り、私たちは屋上に上がった。
最近は施錠されているところが多いらしいけど、ウチの中学校はそうじゃない。
時間制限はあるけど、基本開放されている。
屋上。
学校生活部の屋上菜園がある以外は、ベンチしか無い殺風景な場所。
今日は、学校生活部の活動が無いのか、人気が全く無かった。
そんなところで国生さんと一緒に、屋上のベンチに腰掛ける。
まだまだ日の高い、青空の下。
「よく来てくれたね」
私たちを呼び出した馬面妖精バキが
「これから話すことはとても大切なことだ。よく聞いてくれ」
……何かな?
バキの話は、こうだった。
まず、私たちは基本、他人の記憶に残らないらしい。
私たちが
例え目の前で変身しても、だ。
その場合、私たちがどっかにさっさと逃げて、入れ替わりに六道プリンセスが現れた。
こういう風に映るそうだ。
認識阻害という六道プリンセスの基本能力らしい。
ただし。
これは機械には通用しない。
機械で変身シーンを撮られるとアウト。
正体がバレる。
なので、周囲に監視カメラが無いかどうかは、今後は気をつけてくれと言われた。
あと、例外の存在。
私たちのことが記憶に残る人種の存在だ。
それは……六道プリンセス本人と、六道プリンセス候補生。
そして……体育教師、用務員、コンビニ店長、自分のストーカー、ヤリチン学生。
この後者の5種の人間には、私たちのことが記憶に残る。
絶対に気を付けろと言われた。
過去、何人もの魔法少女を名乗った女の子たちが、この5種類の人間の餌食になった悲しい歴史があったらしい。
酷い話だよ。
「……皆を守るために戦うのに、同じ人間にそんな酷い目に遭わされるなんて……その子たち、ものすごく辛かっただろうね……」
国生さんはそう言って、悲しい顔をした。
優しいね……国生さんは……。
「あと、これは僕らの内輪の話なんだけど」
重い話の後。
バキは自分たちの話をはじめた。
……まあ、前からバキは「僕たち」って言い方してたから、予想はしてたけど。
こっちの世界に来た冥府の妖精って、バキだけじゃ無いんだって。
合計3体。
バキと、ケンジャキと、シシガミの3体。
どんな姿をしているのか気にはなったけど、別に今どうしても知らないといけない情報でも無いし。
私は聞かなかった。
「……ちなみに、それぞれ2名ずつ六道プリンセスを探し出すノルマがあって」
バキは、一番最後にノルマを達成したんだそう。
つまり……
「他の六道プリンセスは、すでに選ばれて妖魔獣と戦っているの?」
そう、国生さんが纏めると。
バキは黙って頷いた。