「……やぁ、呼んだ?」
空間の歪みから現れた緑色の髪の大人の男性……
濃緑色の魔術師のローブみたいな服を着た、冷たい印象を受けるハンサムなんだけど……
口調は、なんだかフレンドリー。
体型は手や足を見た感じ、痩せ型。
あまり筋肉がついてない男性だ。
私のお父さんと戦ったら、多分数秒で絶命してしまうと思う。
「何なの、あなた……?」
私は彼にそう訊ねる。
すると彼は私に気づき
「……僕はアビ。妖魔神三人衆の1人……」
「阿比須真拳奥義! 大腿骨開放骨折!」
アビと名乗った男性に、私は一瞬で間合いを詰め、必殺のローキックを繰り出した。
なんか分かんないけど、間違いなくこの男の人は敵!
敵は即倒す! 当然!
……しかし。
それは空を切る。
「!」
驚愕する私に、彼は笑った。
「僕らは精神生命体。物理攻撃は無効さ」
楽しそうに。
……そうだった。
確かバキがそんなことを言っていたっけ……!
私がバックステップで間合いを離し、彼に対する対応を必死で考えていると。
彼は言った。
汚礼に。
「……そこのキミ、この女の子を殺したいかい?」
そう、優しい笑顔で訊ねたんだ。
すると
「……殺したい!」
迷わず、そう口にしたんだ。
汚礼は。
「俺たちのことを全く理解しようとせず、ただ一方的に否定して、消そうとするムカツク女! 許せねえ! 殺したい!」
「俺もだ!」
「俺もだよ! お前ら!」
……五味山、九相、汚礼。
3人が、口を揃える。
私を、殺したい、って。
するとアビはその答えに
「いい殺意だ……いい妖魔獣になるよキミたち」
満足そうにそう言い、その両手を高く掲げた。
そしてこう宣言する。
「妖魔神帝フレアー様! どうかこの3人の子羊に、恨みを成就する奇跡の力を与えて下さい!」
アビの掲げた両手の間に、白い光の球が出現し、膨張し……
……破裂した!
その破裂した光が3つに割れ、3人の不良たちの口の中に飛び込んでいく。
すると
「おあああああああ!」
「うぎいいいいい……」
「ぽぎいいいいいい!」
メキメキメキと音を立て、3人の姿が変わっていった。
人間の姿から……怪物の姿に。
五味山は腕が複数ある筋肉バキバキの成人男性の姿。
そして九相は、真剣を握り、大きく隆起した筋肉を持つ、角の生えた成人男性の姿。
最後に汚礼は、身体中に彫刻刀を生やしたハリネズミのような人間の姿。
ウオオオオオオオオオ!!
3人は、吼える。
それを確認し、満足そうに笑うアビ。
「……思った通り。立派な妖魔獣だ! 素晴らしいよキミたち!」
そして賞賛する。
その言葉に応え、3体の妖魔獣と化した3人は
「閻魔死ねええええ!」
……一斉に、私に襲い掛かって来た。