お弁当はお母さんが作るものだ!
それを、国生さん自身にひっくり返させるなんて!
そこにどれだけの苦しみがあるのか、想像できないなんて!
許せない!
だから私は許せなかった。
そんなことを、恐怖で縛って無理矢理命じて強行させたこいつらが!
「お弁当が何だよ! お前何マジになってんの!?」
九相がそう、半笑いで言うんだけど。
「阿比須真拳奥義! 前歯粉砕!」
私はそこで正拳突きを繰り出した。
前歯を折って、相手の心を折ることに最適化された突き。
九相の前歯が粉砕され、消失した。
「あぎゃあああああ!」
悲鳴を上げて、のたうち回る。
血もだけど、涙も流している。
だけど私は許せなかった。
「謝って! 国生さんに謝って!」
私は彼らにそう言い放つ。
すると
「……こ、国生はお前がお茶汲みから助けてやったやつだぞ……? そんな奴が、その恩を忘れてお前に攻撃したのはいいのかよ?」
そんなことを言って来た。
だから言ったよ。
「知ってるよ!」
知ってるに決まってる!
彼女は毎日、こいつらの下働きをさせられていた!
このゴミみたいな奴らに!
許せなかったから、助けた!
それだけ!
でも、彼女はきっと、私に恩を感じてしまったと思う!
それなのに、恐怖で支配されて、その恩を仇で返してしまった!
それがどれだけ苦しいか、お前たちには分からないのか!
「他人を恐怖で縛って、絶対にしたくないことを無理矢理させたお前たちは、人間社会に存在を許されないゴミクズよ!」
そう、言い切ったとき。
「閻魔、死ねええええ!」
ガラ、と教室が開いて。
私目掛けて、背後からナイフを持った私服の男子が襲って来た。
だが、私は
「阿比須真拳奥義! 過剰防衛!」
「ぐぎゃああ!」
振り向きざまに男子のナイフを蹴りで蹴り飛ばし、軸足を切り替えてハイキックで頭部を蹴り飛ばして返り討ちにした。
私の上段蹴りを受けて教室の床のタイルに叩きつけられた私服の男子……それは停学を3年喰らった汚礼だった。
床にぶざまに倒れ伏す汚礼。
私は言った。
「停学3年は長いかもしれないけど、それは自分の醜い心を見つめ直す機会だと思って、反省することもできないのかッ!」
だけど。
汚礼は全く反省せず、私を憎々し気に睨みながら、身を起こした。
そして
「ち……畜生……! 正義を振りかざして俺たちを全否定しやがって……! お前がいるせいで、俺たちに居場所がねえじゃねえか……!」
そんなことを言い
「許さねえ……許さねえぇぇぇぇっ!」
怨嗟。
呪いの籠った叫び。
そんな叫びを放ったとき。
その場の空間が、歪んだ。
そしてそこから、緑色の髪のクールな美形男子が出現してきたんだ……。