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第2話 誕生! ヘルプリンセス!

「やだ」


「何で!?」


 バキと名乗った馬面の妖精。

 契約というキーワードを口にした。


 それは危ない。


「……死にそうなのを良いことに、私の魂を抜くつもりでしょう?」


「しないよ! 僕はそんな非道な真似はしない!」


 バキは泡食っている。

 その理由は


「くだらない難癖つけてごねないで! 本当に死ぬよ!? 早く契約するんだ!」


 バキは必死だった。

 曰く、私に死なれると戦士候補生が減ってしまうこと。

 曰く、私の余命はあと数分だということ。


 曰く……彼と契約すれば、プリンセスになる前の負傷は全てキャンセルされ、新しい肉体に転生することができること。

 新しい肉体は、絶対に病気にならないし、新陳代謝が一生落ちないということ。


 ……なんか後半が怪しい気がする。

 だけど……


 ゴホッ、ゴホッと咳き込む。

 ……血が出た。


 もう、あと数秒かな……


 死にたくないな……


 高校生になりたいし、女子大生にもなりたい。


 仕事もしてみたいし、結婚だってしたい。


 ……物事、100%保証されたことなんて、無いんだよね。

 そこに、私はこの年齢トシで思い当たってしまった。


 どっかで「えいや」は要るんだよ。


 よし……


 えいや!


「……契約するよ。私を六道シックスプリンセスにして」


 意を決して、口にした。

 その言葉。


 バキが、それを受けて


「おっけー! その言葉、助かるよ!」


 その言葉と同時に。

 バキが輝き。


 そして私は光になり。


 暴走する自動車の下から抜け出していく。


 同時に、急ブレーキを掛ける暴走自動車。

 光になった私は……人気のない田舎道路の真ん中に、出現していた。


 さっきまで自動車に引き摺られていた傷は全て癒え……

 衣装も変わっていた。

 ……黒を基調とした、へそだしルックの魔法少女衣装……。

 ところどころに、髑髏の意匠が入ってる。

 なんか、禍々しい。


 そこに


「……変身完了おめでとう。ヘルプリンセス」


 私の傍に、バキが蝶の羽根で羽ばたきながら佇み、私にそう呼び掛けた。


 ヘルプリンセス……それが私の六道シックスプリンセスネーム……!


 バキは続けた。


「キミは六道の、地獄道の力を受け継いだ六道シックスプリンセスだ。その力を全て引き出せば、八大地獄の能力を操ることが出来る!」


 八大地獄の力……!

 なんかよく分からないけど、すごい気がする!


「で、キミがその力を使ってやることは……」


 バキのその説明に連動するように。


 目の前で停車している、さっきまで私を引き摺っていた自動車が変形していく。

 普通の白い乗用車だったのに。


 車体に無数の棘が生え、肥大化。

 似ても似つかないものに変わっていく。


 それは……


 乗るためじゃない。

 人間を殺傷するための車……!


「あれは……?」


 私がそう、バキに訊ねると


「あれは妖魔獣。……妖魔神が地上に遣わした、人殺しを素体にして作り出した怪物だよ!」


 妖魔……獣?


 事態が飲み込みきれず、戸惑う私。

 そんな私に……


 その肥大化した殺人自動車が、急発進。

 そしてターンして、私めがけて突っ込んで来た!

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