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禍祓怪異譚〜穢れた神歌〜
禍祓怪異譚〜穢れた神歌〜
碧絃(aoi)
ホラーホラーコレクション
2024年10月09日
公開日
5.9万字
連載中
主人公の蒼汰はある日、御澄宮司から除霊の手伝いを頼まれる。
何も聞かされずに神無村へ行った蒼汰だが、そこは16人も不可解な死を遂げている村だった。

調査をしている最中、蒼汰は紅凛(あかり)という8歳の少女と出会い、すぐに仲良くなる。しかし、紅凛はなぜか蒼汰が1人でいる時にしか現れない。不思議な少女の正体は——。

そして今回は、御澄宮司の様子が何だかおかしい。何度も、じっと目を見つめてきて、監視されているような気がする。誰を信じたらいいのか分からない、シリーズ2作目です。

プロローグ

 古い神社の境内で、巫女姿の幼い女の子が、赤い匣を持って立っている。


 匣に描かれているのは、鮮血のように真っ赤な椿の花だ。重なるようにたくさん描かれている。


 風が吹いたのか、女の子の髪が右へふわりと揺れた。映像をスローモーションにして見ているかのように、ゆっくりとした動きだ。


 子供たちが、巫女姿の女の子の前に駆け寄り、横一列に並ぶ。手に持っているのは、匣に描かれているのと同じ、赤い椿の花だ。




 かん かん かんなのカミさんは——。




 歌が聞こえてきた。わらべうたのような親しみのある旋律。子供たちは歌いながら、小さな巫女が持っている匣に、赤い椿の花を入れて行く。



 かん かん かんなのカミさんは

 赤い花ほしいともうします



 かん かん かんなのカミさんは

 白い花いらぬともうします



 赤いはこには 赤いれて

 白はちぎって すてましょう



 雨がなくとも おどりはならぬ

 花がなくとも おうたはならぬ



 かん かん かんなのカミさんにゃ

 赤いお花をあげましょう



 椿を匣の中に入れて行く子供たちは、楽しそうに笑っている。


 それなのに巫女姿の女の子は、何の表情もない。


 そして、女の子の目から、一粒の涙がこぼれ落ちた——。

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