一週間、マリアは気持ちが落ち着かず背中に羽が生えたみたいに、ふわふわしている気分で過ごした。
その一方で、そんな自分に嫌悪し、肩を落として聖堂で懺悔をする。それを日に数回繰り返したりもした。
シスターたちはマリアを憐れみ、いつも優しく接してくれている。だだ彼女にとってシスターたちの優しさは、針で何度も体を突かれるのと同じ意味合いを持っていた。
神がシスターたちを使って、善意の心でマリアに詰責してきていると考えていた。
優しい声掛け、時に抱擁をしてくれるが、マリアはいつも自分に、そんな価値がないと改めて思い知らされる気分だった。
自分の容姿が嫌になったマリアは、自らを汚した。そうすることで、人を遠ざけまた、自分へと罰の一つとした。
自分は、罪深い人間だと理解していたからだ。それなのに人間の性で、鳥坂鳥坂に会ってからは、この人なら分ってくれるかもしれない。それは何もない砂漠から突如水が湧きだしたかのようであった。
出会いは数分にも満たなかったのに、何時間も鳥坂を見ていた感覚だった。
鳥坂と出会ってからマリアは毎日、その姿を求めて公園に出向いた。
初めはシスターの許可をもらっていたが、あまりにも毎日出掛けるから、理由を聞かれた。
一瞬だけあった人間を、公園で待つためとは言えずに突っ立てると、理由がないのであれば許可できないと言い渡されてしまった。
それ以来、わざわざシスターたちに報告をせずに、勝手に出ては公園に向った。
やがてシスターたちも諦めたのか、怒られはするが、徐々に諦めが混じってきて、怒りが緩和されていく。
そして雨の日、やっと鳥坂に再会できたのだ。
暖簾みたいになっている、髪の隙間から見た鳥坂の目には驚きが浮かんでいたが、瞳のもっと奥にあったのは、優しさと悲しみだとマリアは感じた。だから鳥坂は、マリアの心を捕らえて、何かを変えてくれるかもしれないと思った。
それからは離れまいと、鳥坂の服を握ることで、自分に縛り付けた。
交番に連れ行かれ時、初めて彼の名前を知る。離れるのが嫌で抵抗したが、子供の我儘が通る訳もない。でも鳥坂がまた会ったら相手をしてくれるというので、手を離した。
しかしそれから待っても会いにきてもくれず、交番で話していた名前を頼りに、家を探し始めた。
手掛かりは、名前と乗っていた車。鳥坂という名前は珍しいのか件数はなく、直ぐに見つけ出せた。
運がいいのか、その日は鳥坂の家で泊まれる嬉しい誤算もあったが、一人の女性の元に連れて行かれた。
その人は髪の長いスラッとした綺麗な人だったが、男だと紹介された。
それにはマリアも驚いた。胡蝶が男というのにではなく、美しいのに女性ではないという現実にだ。
次に鳥坂に身を綺麗にしろと言われ、渋々と風呂に入る嵌めになった。
でもこの決断は今となってはよかったと思っている。細い糸だが、繋がりを作ることに成功した。
そして約束通り、二人はマリアを迎えに来てくれたのだ。