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第28話 引きこもりVTuberの最期 参

 赤い皮膚の筋肉がむき出しになる。黄金の時計を3つも背中に乗せて、胡坐をかいて空中に体を浮かばせていた。 角が2つ、鋭い牙を光らせた体の細い赤い鬼が現れた。


時空金剛鬼じくうこんごうき 赤い色の皮膚に角が2つ、鋭い牙に背中に黄金に輝く丸い時計を三つもつけている鬼だ。目の前に現れた人を異次元空間に飛ばす力を持つ。過去・現代・未来の時間の操作をできる。背中の時計を3つを空中で飛ばして凶器として使う。この時計にあたると皮膚もろとろ切り刻まれてまう。時速100㎞に近いスピードで飛んでくる。


「警戒しろ!!」


 鬼柳の一言を聞いて迅は一瞬で空間はフルカラーから灰色へと変化していった。札を構えて念を閉じる前に時空金剛鬼の力で取り込まれてしまった。


 景色は芹斗の地下室ではない。

 小さい体の男の子が虫取り網を持って、立っている。映画を見ているように後ろ姿が見えた。姿形は見たことある。この男の子は迅の子どもの時の姿だった。辺りは田んぼが広がって、遠くには堤防が見える。まっすぐ続く獣道に小学生の友達が走って逃げていくのが見えた。迅は、友達から嫌われていた。ほかの子と違う力を持つことにみんなは気持ちわるがっていた。霊感が強い。除霊も小さい頃からできていた。


 土御門家の伝統を守るために祖父から教わっていた。神社の神主の孫だということも世間に知れ渡っていた。霊力が強いせいか妖怪や鬼に集まりやすかった。除霊という行為を理解できない子どもたちは見えないものに何をしているんだとうらやましいという思いから嫉妬心が強くいじめに発展していった。

 迅自身がお化けだから気持ちわるいものが寄って来るだのありもしない噂を流されて、上級生にも石をなげられ、 上靴を隠されて、職員室でスリッパを借りる毎日だった。教室に行くと黒板の日直欄には「じん死ね」と言う言葉をチョークで書かれた。誰も注意しない。PTA会長の息子だと分かると、先生も見て見ぬふり。


 辛く長く苦しい時期を過ごしてきた。友達はだれもいない。神社にも被害をこうむり、鳥居にらくがきされることもあった。目をつむりたくなる。呼吸が乱れる。嫌な思いがたくさん集まって来ると、いつも邪悪な念がたまってくる。

 小さな体の迅の背中には、酒吞童子が憑依する。乱暴で最強のお酒の好きな鬼だ。


「お前は憎いやつがいるのか」

「……悔しい。腹が立つ。今すぐに僕をいじめたやつをこらしめてやりたい」


 沸々と湧き出る憎い心が邪悪な念となって現れて来る。現代の迅が過去の迅に力の解放をやめさそうとする。透明な画面にどんどんとたたくが、それは未来の迅には何もすることができない。一体何を見せられているのか。忘れていた酒吞童子と出会いを思い出した。迅の中に入ってる闇の力を見せられたのだ。


「やめろーーー!! その力を手に入れるんじゃない!!」


 未来の迅が過去の迅に叫ぶが、届かない。夢の世界のように手を伸ばしてもその場所には行けない。悔しい思いが残る。


 迅は手を伸ばす。映し出される映像は乱れていく。それと同時に迅の体は次々と血らだけになっていく。何かが当たっている。時空金剛鬼の浮かんで時計が何度も当たっている。力を奪われて行ってしまう。止めようがない。現実ではない札は真っ白で、唱えても力がない。祖父の力がない。時空金剛鬼に攻撃がいつまでもできない。札の字を書く筆や墨もない。迅は八方ふさがりになった。






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