外から小鳥のさえずりが聞こえてくる。
本棚には難しい文字が書かれたものがたくさん並んでいる。散らかった床やテーブルの上、モノトーンで統一されていた。窓から車のクラクションの音、遠くでサイレンがなり、高架橋を走る電車の音が響いている。
ベッドの上、ふとんを蹴飛ばし、紺色のボクサーパンツ一つ履いて、ぼりぼりと太ももをかく。古い扇風機がゴキゴキとまわりながら動いている。枕の近くに置いていたテレビのリモコンをつかみ、赤いボタンを押した。あくびをして、トイレに向かう。水の流れる音がした。
テレビから最新のニュースが流れてくる。
「……次のニュースです。本日、未明に都内のアパート1室で鋭利な刃物により体中を刺された1人の男性の遺体が発見されました。警視庁によると、死亡推定時刻は、午前2時~午前3時であり、犯人は未だ逃走中。凶器とされる刃物は見つかっておりません。警察は犯人の行方を追っており、事件の真相を調べております……」
新人アナウンサーが真剣な顔つきでニュース原稿を読んでいた。冷蔵庫の扉を開けて、ミネラルウォーターをガブガブ飲んだ。
「また物騒な事件か……俺には関係ないな、きっと……」
青年は、スマホをいじり、勇者を倒すゲームに夢中になった。それをやっていたかと思うと次はパズルゲームをして、快感を得た。時間を無駄にすることなく、いろんなゲームに費やした。FPSのゲームは、見ず知らずの人と交流ができて、楽しめるが、声を出さずに文字で応答する。この青年は、恥ずかしがり屋でもある。
ゲームに夢中になっていると、スマホに着信が入った。表示画面には『鬼』と表示されている。通話開始ボタンをタップした。
「
「嫌です。ニュース見てません」
テーブルにスマホを置いて、スピーカーに設定する。
「お前なぁ!! たださえ、遅刻してるんだからこんな優しい職場ありがたいと思え。いいから、今すぐ来い!!」
タバコに火をつけて鬼という電話主に返事もしない。無視し続ける。
「……お前、無視してるだろ。知ってるぞ。もう、お前の作戦は筒抜けだ。そして、抵抗はできないぞ」
その言葉を発してすぐに土御門の家のドアが大きな音を出して、大きく開いた。
「土御門 迅!!
上司の『鬼』は、迅の耳を引っ張って外に連れ出した。
「いたたたたた……行きますから。マジやめてくださいって本当に。警察突き出しますよ!」
「バカか!? お前が警察の人間だろ。仕事しろ!」
「ちっ……」
「上司に舌打ちすんじゃねぇ、あとで覚えておけよ?」
迅は『鬼』に目で殺された。迅の部屋の隅の方ではソーラーパネルで動くぱんだのおもちゃが静かに動いていた。
近所の交差点では救急車のサイレンが響いている。