何の話だろう、という顔でみんな集まった。昨日大変だったので、そのことについてかな、くらいの気持ちだった。
全員集まった時、御岳は伊達の横に立った。その様子からすると、昨日の事とは違う話であることはすぐにピンときた。
「みんな、これから御岳君が話をする」
伊達が言った。その時、みんなは御岳が入院のために郷里に帰った時のことを思い出した。
「先生。御岳さん、また入院するんですか?」
龍田が尋ねた。心配の様子が顔に浮かんだ。
「病気、再発したんですか?」
高山も聞いた。他のメンバーも同じ思いだった。
「いや、そうじゃないんだ。みんな、聞いてくれ」
御岳が口を開いた。みんなが自分のことを心配してくれることを嬉しく思いつつも、話の趣旨は異なるのできちんと切り出した。
「退院してから東京に戻り、もう一度内弟子として修行してきたが、このたび、先生とも相談して、卒業させていただくことになった」
全員、驚いた表情になった。病気の時もびっくりしたが、そこには治ればまた一緒にやれるという希望があった。そしてその通り、御岳は戻ってきた。まだ復帰してからの日は浅いが今、一緒にやっているというのは事実だ。
だが、卒業というのはここからいなくなることを意味する。そしてそこには復帰という言葉はないのだ。
「えーっ、そんな。戻ってからまだ間がないじゃないですか」
「昨日のことが理由ですか?」
「もうここに戻らないんですか?」
「御岳さんがいなくなるというのは、想像できません。何でそう思ったんですか?」
口々に理由を尋ねた。言葉は違ってもみんな御岳のことを思っての内容なので、一旦質問を止めてもらい、御岳は理由を話し始めた。
「俺が内弟子にしてもらったのは、空手より整体に興味があったからだ。しかし、先生の整体は武道がベースということを知り、お話を伺う中で武道にも興味を持った。そして先生の整体術を理解するには、武道修行も必要だと分かって内弟子にしていただいた。…3年以上になるが、驚きと感動の連続だった」