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 みんなで見舞いに行ってから3週間ほど経った頃、御岳から連絡があった。退院の日が決まった、という連絡だ。病後の体力回復ということで、退院後しばらくは実家暮らしになるが、これで大きな山は越えた。内弟子復帰は体力の回復次第だが、おそらく2~3ヶ月くらい先になるだろう。

 しかし、これで今後の流れが見えてきた。またみんな揃った形で内弟子修行ができる、ということで雰囲気が大きく変わり、みんな明るくなった。

 今いる内弟子たちは、これまで以上に毎日の稽古に打ちこんだ。

 そこから数日経った頃、龍田の様子がちょっとおかしい。

 いつもの龍田のような元気がないのだ。

 普段ははしゃぎすぎて注意されるくらい陽気な性格だが、ここ数日、他の内弟子との会話もない。一応稽古はするものの、これまでのような迫力を感じない。伊達からのアドバイスも、あまり耳に入っていないようだ。病気が分かった時の御岳のようにうなだれ、目にも精気がない。うつろな感じで、上を見上げては溜め息をつき、下を見ては姿勢の曲がりが気になる。声をかけても返ってくるのは生返事だ。

「龍田さん、恋でもしたんですか?」

 ある日の稽古後、堀田が声をかけた。いくら何でも龍田まで病気ということはないだろう、という気持ちから、ついからかうような質問をした。

「…だったらいいけどね…」

 力のない返事だった。今まであれば、そこから良い意味での絡み合いが始まるところだが、そういう元気もない。

 何かおかしい。たまたま堀田がからかうように話しかけたことにも反応がないことは他の内弟子も見ていたが、その様子に心配した。

 もし病気ならば、御岳のことがあるから治すために一生懸命になるだろうし、まず伊達に相談するだろうということは、だれもが考えていた。それがないということは、他の心配事なのだろうが、事情が分からないうちは何もできない。

 しかし、心に引っかかることがあるのは事実のようだ。

 こんな時、御岳がいればまず最初に相談するのだろうが、あいにくまだ入院中だ。病人に相談するようなことはできない。それよりも、御岳が帰ってきた時、元気に迎えなければならない。迎える側がしょぼくれていてはいけないのだ。

 そうなると、やはり伊達に相談するしかない。

 松池が伊達のところへ行った。伊達はすでに事務所のほうに行っていたので、そこで2人だけで話すようにした。

「先生。ここ数日、龍田君の様子が変なんです。何か病気とかではないのでしょうか。心配です。他のメンバーも同じように心配しています」

 先ほどの堀田とのやり取りも含め、ここ数日の堀田の様子について話し始めた。伊達も心配そうな顔で聞いている。

「稽古を見ていて何かおかしい、ということは気づいていた。本人から相談があれば、と思い様子を見ていたが、君たちも感じるようになったか。…では、直接尋ねてみないといけないな。本来なら長男格の御岳君に相談して、その上でというのが流れになるのだろうが、今はいないので私が聞いてみよう。君たちも何か龍田君と話すようなことがあれば、その都度教えてくれ」

 伊達はそう言い、龍田に事務所に来るよう、松池に言伝をした。


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