===== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子・・・主人公。翻訳家。
大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。
愛宕寛治・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。
愛宕(白藤)みちる・・・愛宕の妻。交通課巡査。
依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。宅配便ドライバーをしている。
福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。
物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。モールで喫茶店を経営している。
逢坂栞・・・伝子の大学の翻訳部の同輩。物部とも同輩。美作あゆみ(みまさかあゆみ)というペンネームで童話を書いている。
南原蘭・・・南原の妹。美容室に勤めている、美容師見習い。
久保田刑事(久保田警部補)・・・愛宕の丸髷署先輩。相棒。
久保田(渡辺)あつこ警視・・・みちるの警察学校の同期。みちるより4つ年上。警部から昇格。
久保田管理官・・・久保田警部補の叔父。
橘なぎさ二佐・・・陸自隊員。叔父は副総監と小学校同級生。
中津警部補・・・警視庁刑事。現在は捜査四課。
鈴木校長・・・コロニーで流れてしまった運動会再開催を断行した、校長。
========================================
「助けてくれ・・・許してくれ・・・。」
物部が店を開けようとした時、表にバタンという音がした。物部は店を開けずに、杖を突いて路上に出ると、人が倒れていて、人だかりが出来ていた。よく見ると、後頭部に血が滲んでいる。
「誰か救急車呼んだか?しょうがないな。」野次馬の中からは自分から行動を起こす者はいなかった。物部は救急車を呼んだ。
救急車の中で、その男は譫言のように繰り返した。「助けてくれ。許してくれ。」
「何だろうな?あなた、お知り合いですか?」「いや、他人です。モールでコーヒーショップ出してるんです。表が騒がしいから出たら、この人が倒れていて。」
「所持品は?」「付近見渡しましたが、落ちているものは無かったです。ポケットにもないんですか?」「ええ。」
救急車は本庄病院に到着した。苦労して物部が出ると、本庄院長が迎えた。「おや。物部さん。お知り合いかな?」「いえ、院長。行き倒れです。」「兎に角、中へ運びましょう。後で来て下さい。」
物部が看護師に呼ばれて来た病室には、頭に包帯を巻かれた男がベッドで点滴を受けていた。「あ、物部さんが救急車呼んだんですって?」と愛宕が寄ってきた。
「行きがかり上な。」「所持品は?救急隊員にも尋ねられたが、倒れていた場所付近には何も無かった。まあ、野次馬がパクった可能性もあるが。ポケットにも何も無かったと救急隊員は言っていたが。ここに入院したり通院したりしていれば話は早いが、まさかな。」
「副部長。遅くなりました。」「ああ。高遠。大文字。」
「見覚えのある患者じゃない、と看護師長は言っています。通院はどうでしょうね。」
「そうだ、下着とか服には?入院とかしていれば、タグに名前書くんじゃないか?」
「そう思って、衣類を持ってきて貰いました。愛宕さん、何か書いているような気がするんですが。」と高遠は言った。
横からひょいと顔を出した男が「調べてみよう。」と言った。井関だった。「え?なんで?」「なんで?本庄先生は監察医でもあるんだ。」「お願いします。」と久保田刑事が後ろから井関に頼んだ。
「揃ったか。大文字伝子の行くところ事件あり。そう睨んで覗いてみたんだ、実は。」井関は笑って出て行った。
「大文字さん。名前が分かり次第公開捜査をします。大文字さん達も何か手がかりがあったら教えて下さい。」
「という訳だ。俺たちは保護者じゃないしな。たまには店に来いよ。大文字の車なら、タクシー代が浮くし。」「そっちがメインだろう?」「ははは。」
物部のコーヒーショップ。
「行き倒れねえ。何か犯罪のにおいがしますけど。」「どんなにおいだよ。」と、高遠の言葉に伝子は突っ込んだ。
「いや。俺も高遠に賛成だ。どういう経緯があったとしても、財布くらいは持っているだろ、普通は。」
「私は、物部が聞いた譫言が気になるな。タグに名前らしきものがあったのなら、公開捜査で何か情報集まるかな?」と伝子はあくびをしながら言った。
「何だ、寝不足か?濃い目のコーヒーにするか、大文字。」「ああ、助かる。」
「昨日、締め切りでね。今朝、原稿送ったとこです。」と高遠が言った。「原稿、ファックスで送るのか?」「昔はね。今はね、副部長。メールですよ、暗号付きの。」
「便利な世の中になったものだな。」客が入って来たので、伝子達は引き上げることにした。
伝子のマンション。「あつこ。今日、久保田さん、張り切っていたぞ。」「蘭ちゃんに貰った男性用のファンデーションで誤魔化せるようになったから。平手打ちしたら、紅葉の手の痕残るし、グーパンチは青たん。でも、今度から金けりするから。」
「基本的に喧嘩しなければいいのでは?渡辺警視。」と高遠がたしなめた。
「あつこ。グーパンチの原因は?」「火の中に飛び込んだから。」
「妊娠したんだから、無茶しないでくれって言われましたか?」横から高遠が割り込んだ。
「言われたわ。でも、あの場合は仕方ないでしょ。警察官なんだから分かる筈。」と言うあつこに「お前が悪い。聞いてないのか?久保田さんのご両親の話。」「子供の頃、二人とも殉職したって聞いたわ。私も早く親を亡くしたから、意気投合したのよ。」
「伝子さん。」「いい。私から話す。久保田さんのご両親は『火の中に飛び込んで』殉職されたそうだ、愛宕から聞いたんだが。だから、愛宕はみちると結婚する時に何度も念押しした。二人とも警察官だと、家族が犠牲になるかも知れない、って。普通の家庭は築けないかも知れないって。詰まり、久保田さんは『一般論で危ない』って言ったんじゃない。」
「じゃあ、どう言えば良かったの、おねえさま。妊娠中だから、ヌンチャク投げるだけにしろ、っておねえさまに言われたから、そうしたのに。」「自重します、が優等生的な答ですね。」と。また高遠は割り込んで言った。
「おねえさまの所はどうなの?喧嘩しないの?」「泣く。」「僕が降参する。終わり。」
「へええ。」とあつこが言っていると後ろから「泣くんだ。先輩が。」「泣くんだ。先輩が。」と言って依田と福本が入って来た。
「暇だなあ、お前ら。いっちょ手合わせするか?」「まだ死にたくない。」と二人は応えた。
「仲いいなあ。前から思っているんだけど。何で?」とあつこは言った。
「あつこは部活やったことないのか?」「ないわ。」「じゃ、今やればいい。今も部活やっているようなもんだから。」「ははははは。」あつこは高笑いした。
「何か盛り上がっています?」と、愛宕とみちるが入って来た。「今、お前の悪口言ってたところさ。」と伝子がさらっと言った。
「またまたあ。ほんとなんですか?警視。」「さあ。」
「今、久保田管理官が記者会見しています。公開捜査です。彼の名前はアンダーシャツのタグから『タジマ』と判明しました。はい、これ、高遠さん。何か手がかりあれば、警察へ。あ、家出人リストと照合可能か?という意見が出て、体の特徴を改めて病院で調べて貰っています。ほくろとか、あざとかあれば、例えば銭湯で見かけた人がいるかも知れないので。」と、ポスターを高遠に私ながら愛宕は説明した。
「愛宕さん、衣類からタグ以外には?てがかりないですか?匂いとか。」「クスリ関係ならマトリの管轄だけど、それはないことは分かっています。」
「雲を掴む話だな。」「ああ。高遠さん。写真送っておきますから、例のLinenのグループに声かけて貰えませんか?若者はあまりテレビ見ないらしいし。」と愛宕が頼むと、「勿論、いいですよ。この際、愛宕さんも我々の方のLinenのグループに入って下さいよ。久保田刑事も久保田管理官も入ってるんですよ。」
「えええっ!そうなんですか。でも、どうやるんだろう?」「そういうのはね、『恋女房』に任せなさい。」とみちるが言った。「みちるちゃん。随分古風な表現ですね。」
「ふふふ。」「ああ。インターネットでも公開するように、管理官に言っておいたよ。」
正体不明の男のことは、それから一週間。進展が無かった。
一週間後。以前、ミニ運動会があった小学校。交通安全教室に福本達が演技し、壇上から依田が案内していた。
「お疲れ様でした。」と、校長は愛宕や久保田刑事に礼を言った。「久しぶりに緊張しているって言っていましたが、無事終わりましたね。」と、久保田刑事が応えた。
「皆さん、ボランティアだそうですね。」「ええ。今までは警察官だけで対処して来ましたが、どうしても堅苦しくてね。生徒さんも詰まらなそうですし。そこで、『愛宕の知り合いの方々』にお願いすることになったんです。」
「つまらないと言えば、今までPTAも有名無実で、つまらない組織だったようです。私の教育方針に賛同してくれた父兄が、自主的に低学年の『補習』を申し出てくれて、校内で『ミニ塾』的なことを行っております。無論、ボランティアです。それと、警備のことを注意されたので、新たに警備会社と契約して、生徒達の安全に取り組んでおります。」
「流石、校長。隙がないですね。」「ありがとうございます。」
「久保田警部補。引き上げの準備が出来ました。」と依田が言ってきた。依田は何か新鮮な感じがしていた。今まで『習慣』で、久保田刑事と何となく呼んで来たが、本来『刑事』とは主に刑事事件を扱う警察官の『通称』であって、役職ではない。
先日、管理官に注意されて、身内以外の場合は正式に警部補と呼ぶことにした。階級は出逢った頃は巡査部長だったが、警部補に昇進しているのだし、改めるのは当然だ。
因みに、管理官というのは警察組織の仕事の職階であり、身分を現す階級とは違う。久保田管理官の階級は『警視』で、渡辺警視とは同等の身分ではある。が、渡辺警視が渡辺副総監の直属の部下で、警視庁警察庁どの部署にも指揮権を持つ特殊な身分で、久保田警視は地域を総括する身分の為、伝子達は敢えて職階の方の管理官と呼んでいる。管理官の方も否定しない。
そして、新たな仲間として登場している、橘二佐も橘陸将直属の部下で、陸上自衛隊では特殊な位置付けで、渡辺警視と似た立場である。
久保田警部補の車。愛宕が同乗している。「なあ、愛宕。」「夫婦喧嘩は犬も食わない、ですか。」「まだ何も言ってないぞ。」「でも、奥さんのことでしょ。何年相棒やってると思います?ウチのみちるも危ない任務はやらせたくは無かった。でも、先輩が多分脅しだけに終わるだろう、って言ってくれたから、放火犯を取り押さえるチームに参加をさせました。大文字先輩に認められた、って喜んでましたね。」
「大文字さんを全幅で信頼する人は多い。そういう私もファンかも知れない。」
「久保田先輩。制服で見えないけど、僕の場合はつねられています。痣だらけです。でも、愛しています。」「のろけか。でも、『既婚者の先輩』として、ありがたく拝聴しておくよ。あ。寄ってくか。」
伝子のマンション。愛宕と久保田警部補が到着すると、高遠が「丁度今、知らせようとしていたところです、警部補。」と言った。
「久保田さん、町外れのゲーセンで見かけた学生がいるらしい。」と、伝子が言った。
「ああ。先月オープンした?なかなか公開捜査でも情報が集まらなかったのに。」と警部補が言うと、「学校サボったのに、積極的に手は挙げないでしょう。」と高遠が応えた。
「兎に角、寄って良かった。学生に聞かなくても店員は覚えているだろう。愛宕、聞き込みだ。白藤に知らせておけ。『おつねり』予防にな。」
二人が去ると、「『おつねり?』って?」と伝子が首を傾げた、「きっと、警察用語ですよ。隠語ってやつ。」
「それにしても、青木君の情報力相変わらず凄いなあ。」「3つのLinenのグループに入っているらしいですよ、我々の以外に。ラグビー部の部活もあるのに、時間割いてくれたんですね。今度、管理官に言って、なんかご褒美あげようか。」「ですね。」
ゲームセンター。愛宕と警部補が聞き込みをしている。「そりゃ目立ちますよ。学校サボって来ている学生野放しなんて言って取り締まらないで下さいよ。」
「まあ、今回はギブアンドテイクで行こうや。それで、どの位いたんだ?行き倒れの3日前の日。」「3時間位かな。これです。」「何だ、この変なめがね。」「VRゴーグルって言って下さい。このゴーグル被ってゲームするんですよ。おっさん、いや中年男性がやっているから、学生達が彼には見えないことをいいことに、すぐ側まで来てじろじろ見てましたね。」
「それで、終わった後は?」「20代後半くらいかな?彼にポンポンと肩を叩いて、ひそひそ話して出て行きました。」「服装は?」と愛宕が割って質問をした。
「あの公開された時の服装じゃなかったですよ。ケツポケットに大きな財布が見えましたね。」「その財布の特徴は?」「一言じゃ言えないなあ。革財布ってことくらいか。」
「その、一緒に出て行った男の特徴は?」「一言じゃ言えないなあ。」
「じゃ、痕で似顔絵の得意な『婦警さん』が来るから、よろしく頼むよ。」と警部補が言った。
警部補の車。「似顔絵の得意な婦警さん、ってみちるのことですか、先輩。」「他にいる?生活安全課に。」「いません。」「似顔絵得意でなくてもいいんだよ、あいつが鼻の下長くしてベラベラしゃべれば。特徴を聞き出せば、後は情報課で処理してくれる。」
翌日の午前。ゲームセンター。
警部補の言う通り、店員はべらべらとしゃべり出した。
みちるは、スケッチブックに描く一方、メモ帳に特徴を書いた。すぐに署に戻り、情報課の道上にPCで似顔絵を作成して貰った。すぐにとって返して、ゲームセンターの店員に似顔絵のプリントを見せた。
「流石、婦警さん。紙よりコンピュータの絵の方が得意だったんだね。そっくりだよ。ねえ。ちょっと時間割いてよ、お礼にコーヒー奢るからさ。」「主人と相談しますわ。オホホ。」「主人です。」「その上司です。」と、後ろから愛宕と警部補が顔を見せた。
「白藤。署に連絡。」「はい。」と言って、みちるはゲームセンターの外に出て、確認済みの報告をした。
「僕の奥さん、口説いた?危なかったねえ。先輩、この間入院した奴、覚えてます?」「あ?全治2ヶ月の?女を怒らすと、怖いなあ。」と警部補は意味深なこと言った。
「えと、俺、お役に立ちましたよね。そろそろ交代の時間なんで、仕事に戻ってもいいですか?」
「あ。ご協力ありありがとう。」
午後。伝子のマンション。
中津刑事、いや、中津警部補がやってきた。連れがいるようなので、「中津さん、その方は?」と伝子が尋ねた。
「紹介します。捜査二課の時の後輩の南方警部補です。これからは、大文字コネクションの繋ぎ、連絡係です。」「大文字コネクション?何です。」「あれ、正式名じゃなかったのかな?久保田管理官が言っておられましたが。」
「紹介だけですか?中津刑事。いや、中津警部補。」と、高遠が尋ねた。
「いや。あの似顔絵の人物、分かりましたよ。3年前、コロニーの事業推進金という、受給金があったでしょ、政府からの個人事業主用の援助金。あれの詐欺グループの主犯格。ひげ取ったらすぐに判明しました。黒幕が分からずじまいで、奴は逃亡中の筈でしたが。」
「確か経営ゼミナールとか言って、手下を養成していたんでしたね。で、総額何億も欺し取った。」と、高遠が言った。「そうです。ですから、入院中の男は、その主犯格の仲間かも知れない。ゲーセンで声かけたのは、偶然再会したのかも。」と、今度は南方が応えた。そこへ、物部が入って来た。中津が南方を紹介した。物部が高遠の近くにあった似顔絵を見て叫んだ。「あ。こいつ。野次馬の中にいたぞ。」
「そういうことか。物部が倒れている彼を発見した時、近くの野次馬の中にこの男を見たのなら、謎は簡単だ。誰も救急車を呼ぼうとしなかったんだろ、物部。」
「そうだ。付近には野次馬以外はいなかった。いつもなら10時に開店するんだが、煎餅の通販の顧客リストが欲しい、って藤井さんに言われて早めに店に行ったんだ。9時頃だから、通勤や通学の人間もいないし、モールの店はウチ同様10時開店が多いからな。」
「彼の所持品も落ちていなかった。野次馬は何人だ?」「8人。その男を含めて。」
「つまり、『行き倒れ』なんかじゃなかった。物部は殺人未遂の現場に居合わせた。そういうことだ。奴らはすぐに凶器と所持品を隠した。物部は気づかなかった。そして、救急車が行った後、彼らは逃げた、隠れた。学。久保田管理官にLinenで送れ。今夜をチャンスにしよう、と。」と、伝子はにやりと笑って高遠に言った。
本庄病院。夜半。
病室に男が忍び込んだ。男が毛布を剥ぎ取ろうとした時、「そこまでだ!」という声がした。
振り向いてナイフを振りかざそうとした男は伝子に大外刈りで脚を払われ、『送襟絞(おくりえりじめ)』で落とされた。
明かりが点けられ、「技あり、一本!」という声が響いた。久保田管理官だった。
通りかかった看護師に「しーっ!」と叱られた。「申し訳ない。」
取調室。
久保田警部補、南方警部補が詐欺グループ主犯格の鳴海五郎に対峙している。傍らに久保田管理官がいる。愛宕が書記をしている。
「彼が意識を取り戻し、怪我は回復傾向だという報道は、わざと流したんだよ。まず、彼は誰だ。」
「小田裕次郎。俺の相棒でリーダーだった。奴は持ち逃げした。再会したら記憶喪失になっていた。仲間とリンチして、金のありかを吐かせようとしていた。よろけて仲間のバッグの上に転んだ。仲間はボーリングが趣味で、ボーリングバッグに玉が入っていた。これだけは信じてくれ。頭の傷は事故なんだ。お節介な奴が出てきて救急車呼んだから、退散するしかなかったんだ。殴る蹴るする前に事故が起きたんだ。信じてくれ。」
「で、ナイフで殺す気だったのか?金のありかは聞き出せなくなるのに。」
「勿論、脅して聞き出す積もりだった。あの婦人警官は強いな。」
「奴は気を失う前に数回、『助けてくれ。許してくれ』と言ったそうだ。記憶を取り戻したんだろうな。だが、意識不明のままだ。」「回復するのか?」「神のみぞ知る、だな。さ、仲間のことを聞こうか。」
翌日。伝子のマンション。「物部。警察から感謝状くれるらしいぞ。」「現金がいいな。」「贅沢言うなよ。」
二人の会話に依田が割って入った。「副部長。大活躍だったじゃないっすか。人命救助に事件解決。」「おだてても、煎餅くらいしか出ないぞ、依田。」
「僕も煎餅でいいから、おだてさせて下さい。我らの副部長は、やはり心根の優しい人だった。そうですよね、逢坂先輩。」と福本が言うと、「私は知ってたわよ。週に2回くらいだけど、一緒に寝てるんだから。知らなかった?私たち、結婚するのよ。」
「えええええええええええええええ?」一同は、おったまげた。
―完―