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第10話 テメェの信じた1つの道を、テメェのやり方で貫き通せ!

「えっ? し、士狼? どうしたんですか、急に泣き出して? お腹でも痛いんですか?」

「だ、大丈夫ししょー? どこか痛いの?」

「あぁ、心が痛いよ……」




 チクショウ!?


 俺の運命力が足りなかったばっかりに!


 全国のムッツリスケベのみんな……ごめんな?


 どうやら俺は主人公の器じゃなかったみたいだ!




「あの士狼? なんで顔をケガしているんですか?」

「ほ、ほんとだ!? ボクたちがお風呂に行っている間に何があったの!?」




 心配して俺に駆け寄る2人。


 その瞬間、我が家のシャンプーとは違った女の子らしい香りが『ふわっ♪』と鼻先をくすぐった。


 ハッ!? として顔をあげると……そこには失われたハズの桃源郷が広がっていた。


 湯上りのせいか、頬を蒸気させ俺をマジマジと見つめる2人。


 芽衣はしっとりと亜麻色の髪を濡らしながら、宝石のような大きな瞳で俺を捉える。


 母ちゃんから借りた寝巻きはサイズが合っていないのかブカブカで、なんだか普段よりも幼く見える癖に妙な色っぽさがあった。


 同じくラブリー☆マイエンジェルよこたんも寝巻きのサイズが合っていないのか、体のラインがハッキリと分かるくらいピチピチピッチのパッツパツ♪ で、胸の前でプリントされたクマさんが左右に引っ張られて「ひぎぃ!? もうらめぇ~っ!?」とエロマンガみたいな悲鳴をあげていた。


 その暴力的な色気を前に、気が付くと体中に走っていた痛みはどこかへ消え去り、心が洗われるかのように自然と笑みがこぼれ出る。


 おいおいコイツら、もしかして俺のことを誘ってやがるのか?


 我、夜戦に突入しちゃうか?




「……なんで急にゲス顔になるんですか士狼?」

「……ししょー? ちょっと怖いよ……?」

「そこのバカ息子のことは気にしなくていいぞ、2人とも。おいシロウ、そろそろ現実世界に戻ってこい」

「はわッ!? ハッ!」




 映りの悪くなったブラウン管テレビを直すかのように、ゴンッ! と俺の首筋に手刀を叩きこむマイマザー。


 その衝撃で妄想の世界に翼をひろげていた俺の意識がカムバック。


 そのまま現実世界へリボーン。


 おはよう世界☆ Good Morning World♪




「わ、ワリィ、ワリィ。ちょっと母ちゃんとじゃれ合っていてさ、何も問題ねぇよ。心配してくれて、ありがとよ2人とも」

「……爽やかに洋子のおっぱいをガン見しながら言うんじゃありませんよ。殺すぞ?」

「はぅわっ!?」




 母ちゃんには聞こえない声音で殺害予告を口にする生徒会長と、風呂上りの自分のデカパイを両手で隠そうとするマイ☆エンジェル。


 だが残念ながら爆乳わんの細腕では、そのたわわに実ったバイオ兵器を隠し切ることが出来ず、むしろより強調される形となって、今まで以上にくっきりハッキリと浮かび上がり……ほほぅ?


 まるで中学生の時に買ったエロいフィギュアのような格好になった爆乳わん娘に、心の中に住んでいた小さなシロウたちが「やったね!」と歓喜の声音をあげる。


 しかもマイ☆エンジェル……ノーブラじゃないかアレ!?


 なんというか左右の胸の中心部分がTシャツを押しのけて浮いているような?


 アレ絶対地区Bだよね!?


 お、おいおい! 目を凝らせば先端ポッチが見えるんじゃねぇの、コレ!?


 ぎょうッ! と心の中でつぶやきつつ目にオーラを集中させようとした矢先、いつの間にかは背後に回り込んでいた芽衣が、ぷにっ♪ とその小さな手で俺の目を塞いでしまった。




「いつまでデレデレしているつもりですか? このスケベめ」

「お、おまえ、俺の完璧なポーカーフェイスを見破るなんて……名探偵かよ?」

「なにが完璧なポーカーフェイスですか。不自然なくらい無表情のくせに、目だけは食い入るように洋子の胸ばかり見て」




 どこか責めるような声音で俺に抱き着く芽衣。


 だが残念なことに俺の背中からは「ぽよん♪」とか「ぷにゅっ♪」といった素敵な擬音を感じることはなかった。


 うぅ……ッ!? 頑張って、芽衣の女性ホルモン!


 諦めたら、そこで豊胸ほうきょう終了ですよ?




「確かに、これはちょっとセクシー過ぎるだわさ。でもこれ以上の大きなサイズは、お母ちゃんもチワも持って無いし……しょうがない。ごめんね、ヨウコちゃん? シロウの服を持ってくるから、ソレで我慢してくれない?」

「し、ししょーの服でふか!? は、はひっ! だ、大丈夫でふっ! も、問題ないでふっ!」




 でふでふっ! と、不気味に噛みながら「でゅふふふ」と気持ち悪く笑うマイ☆エンジェル。


 目を塞がれている手前、爆乳わん娘がどんな表情をしているのか分からないが、何故か脳裏に例の変態仮面の姿がよぎって背筋が震えた。


 そのまま2人分の足跡が遠ざかっていくのを耳にしていると、ようやく芽衣の手から解放される俺。




「よし、2人とも行ったわね。もう目を開けてもいいわよ」

「開けるも何も、おまえが塞いでるんじゃねぇか。……って、なんだよ? その目は?」

「別に? ただ洋子のお風呂上りの姿が見れて良かったわねって思っただけで、他意はないわよ」




 だったら、なんでそんな湿った瞳を俺に向けるんだよ?


 なんだか、どことなく責められている気分になるんですけど?


 落ち着かないんですけど?


 母ちゃんが居なくなったからか、素に戻った芽衣がやけに刺々しい口調で俺に絡んでくる。


 なんでコイツ、こんなに不機嫌なんだ? ……って、はっは~ん? なるほどなぁ。


 さては妹と自分の戦闘力バストの差に絶望……いえ何でもないです。


 だから、そんな殺人鬼のような目で見ないでください。


 怖い……超怖い。




「ふふっ、どこ見てんだ貴様? 殺すぞ?」

「しゅ、しゅみません……」




 ガッ! と片手で頬を掴まれ、強制的にタコ唇にされてしまう俺。


 なんでこの女は、イチイチやることがヤクザチックなのだろうか?


 前前前世はヤーさんだったのかな?


 そのぶきっちょな笑顔めがけてやってきたのかな?




「これだから彼女の居ない童貞はたちが悪いのよ」

「あぁん!? テメェ今、童貞をバカにしたな!?」




「はぁ……」とため息をこぼす芽衣を、ジロリッ! と睨みつけてやる。


 俺は「冗談じゃない!」とばかりに、烈火の如く口をひらいた。




「言っておくがな、俺は半端な気持ちで童貞やってねぇから! 本気で童貞やってから!」

「本気で童貞やってるって何よ? テンパリ過ぎて日本語がおかしくなっているじゃない、アンタ……」




 呆れた声音をあげるメリケン処女。


 くそ、このアマ!?


 ふざけたことをのたまいやがって! 


 だいたい俺らの歳で童貞なんて普通のことだから。


 逆に童貞じゃない奴の方が心配だね、俺は。


 だってそうだろう? 


 自分の貞操すら守れない男が、愛する人を守れるワケがないだろう?


 そう力説してやりたかったが、芽衣が「話は終わりだ」とばかりに、これみよがしに俺の前で小さくため息をこぼした。




「ハァ、もういいわ。アンタがおかしいのは今に始まったことじゃないし」

「それはお互い様だと思う……」

「うるさいわね。いいからホラ、士狼も早くお風呂に入っちゃいなさい」

「OKおかん」

「誰が『おかん』だ?」




 芽衣から解放された俺はいそいそと居間からお風呂場へ移動。


 ……する前に、床に落ちていたペットボトルを拾い上げ、ニチャリとほくそ笑んだ。


 ふふっ、どうやら母ちゃんも俺のもう1つの狙いには気がつかなかったようだな。


 そう今、我が家のお風呂場は現役ぴちぴち女子校生のダシが染み出た宝島となっていることに!


 飲むも良し、学校の奴らに売りさばくのも良しと、まさに一繋ぎの大秘宝である。


 クックックッ、さぁ行こう!


秘湯ひとう、現役女子校生原水』を我が手に!


 世はまさに大海賊時代!




「あっ、そうだ士狼。今、お湯を張り替えているから、溢れないうちにお湯を止めといてね?」




 瞬間、俺はペットボトルを床に叩きつけていた。

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