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第21話 お泊り


 洗濯した航太の服をハンガーにかけて、カーテンレールで干す。

 外は嵐だから、家の中で乾かすしかない。

 エアコンの温風を使って……。

 一晩じゃ乾きそうにないな。


 風呂から出てきた航太に、俺の持っているスエットを手渡す。


「ほら、これ。着ておけよ」

「あ、うん」


 当然と言えば、当然のことなのだが。

 俺たちは男同士だから、恥ずかしがる素振りなど見せない。

 ずっとタオルで頭をごしごしと拭いている。


 どうしても、視線が彼の胸部に行きがちだ。

 ピンク色のつぼみへ、目が行ってしまいそう。

 可愛い……と思う俺は、変態なのだろうか?


  ※


 『えぇ……現在、福岡市内には暴風、豪雨の警報が発表されております。外に出ることは極力、避けてください』


 二人して肩を並べ、テレビの画面を眺める。

 流れている映像は大きな川で、洪水を起こしていた。


「すごい雨だね、おっさん」

「ああ……」


 着替え終わった航太とテレビを見ているが、どうも頭に入って来ない。

 適当に相づちを打っているだけ。

 それもそのはず。


 彼の着ている、服装の刺激が強いからだ。

 俺が渡したのは上下のスエットなのだが、トップスしか着ていない。

 ボトムスはウエストが大きすぎて落ちてしまう、と返された。


 おまけに、彼の下着はずぶ濡れだから、現在はカーテンレールにかけてある。

 水色のカラーブリーフ。

 つまり今の彼は、ノーパン。

 一応、俺が持っているトランクスを渡してみたが、これも大きすぎて落ちてしまうそうだ。


 体育座りをしながら、航太がリモコンを手に取る。

 色々とチャンネルを変えるが、どこも同じような災害番組ばかり。


「はぁ~ つまんないなぁ」

「ところで航太。お前、綾さんに何も言わなくていいのか?」

「え、なんで?」

「だって……お隣りとは言え、一人息子のお前が、何時間も他人の家にいるなんてさ」

「なんだ、そんなことか。別に母ちゃんなら怒んないよ」


 どこまでも放任主義なんだな。

 なんだか、航太がかわいそうだ。


「ねぇ、おっさん」

「ん? どうした?」

「あのさ、今晩。泊めてくれない?」

「なっ!?」


 驚く俺を無視して、首をかしげる航太。


「いいでしょ? 外は嵐だし……」


 なんて、いっちょ前に上目遣いでおねだりしてきた。

 さっさと帰そうと思ったのに。


  ※


 航太は俺からスマホを借りると、母親の綾さんに電話をかけていた。

 どうやら二つ返事で、許可を得たようだ。

 しかし本当にあの母親は、我が子に無関心なんだな。

 今も隣りの部屋から、男との笑い声が聞こえてくるぐらい。


 とりあえず、布団はひとつしか無いから、航太へ譲ることにした。

 万が一……なんてことはないと思うが、間違いがあってはならない。


「航太、お前が布団を使え。俺は畳で寝られるから」


 そう言うと、彼は顔を真っ赤にして怒り始める。


「なんでだよ! 一緒に寝ろよ!」

「いや……男二人がくっついて寝るなんて、気持ち悪いだろ?」

「良いじゃん! オレとおっさんは、と、友達だろ!?」

「う、う~ん。そうだけど……」


 もう夜も遅いし、彼を興奮させてはいけないと思い。

 言われた通り、シングル布団の中に二人して入ってみる。

 思った以上に中は狭く、お互いの身体がぴったりとくっついてしまう。


「おやすみ、おっさん……」


 と耳元で囁く航太。

 ふと視線を右手にやると、嬉しそうに微笑む彼の横顔があった。

 安心しきっている。

 よっぽど、俺のことを信頼しているようだな。


 ~10分後~


「……」


 全然、眠れない。

 この布団へ誰かが入ることを、許したのは”あいつ”ぐらいだ。

 数年ぶりに人肌を感じた相手が男とはな……。


 でも、航太のやつ。

 起きている時は、つんけんしているくせに。寝ている時はえらく甘えん坊だ。

 今も俺の右腕に抱きついて、離さない。


「おっさん……オレと、ずっと一緒にいて」

「!?」


 その言葉に耳を疑ったが、すぐに寝言だと判明した。

 瞼を閉じているから。


 しかし、こいつも色々と苦労しているんだろう。

 友情に飢えているようだ。


「んん……」


 うなされていると思ったら、次の瞬間。思わぬ行動に走る。

 自身の右脚を、俺の腹の上にのせてきた。

 膝をすりすりと、こすり付けてくる。


「くっ!」


 堪えきれなくなった俺は、布団から飛び出す。


「はぁはぁ……どうかしている」


 こんな幼い少年に興奮するなんて……。

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