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離婚からの溺愛で私、幸せになりました。 つがいのオナガ
雫石しま
恋愛現代恋愛
2024年10月06日
公開日
4.4万字
完結
 金沢中警察署勤務 警視正、久我 隼人(36歳)はコンビネーションを組む、竹村誠 警部(60歳)の一人娘、竹村 真昼(27歳)に密かに想いを寄せていた。  ある日、竹村警部から「娘が夫のDVと不貞が原因で離婚するかもしれん」と聞かされ久我の心中は穏やかではなかった。  真昼を救いだそうと考えた久我だが、そこに自分が居るべきなのかと思い悩む。また、真昼も実直な久我に惹かれてゆく。  然し乍ら二人の距離は縮まらず、竹村の画策により距離を縮める二人。淡い恋心は溺愛へと変わり、それはやがて家族愛へと形を変える。  久我隼人と真昼の物語。

第1話

 私の名前は久我隼人くがはやと、石川県金沢市出身。久我家の三男で歳の離れた兄の背を見て育ち、小学校三年生の授業参観で読み上げた作文で「警察官になる」と断言していた。


はやちゃん、お外で遊んできたら?」

「良いんです、算数のドリルを終わらせたいので」

「そんなに勉強しなくても良いのに」

「いえ、お気遣いは結構です」

「そう?」

「はい」


 母親が差し入れてくれたオレンジジュースを飲みながら一日中勉学に励んだ。金沢市立紫錦しきん中学校、石川県立いずみ高等学校に入学してもその生活リズムを変える事はなく目標は京都大学合格、ゆくゆくは国家公務員試験突破、警察キャリアの道を志した。


「隼人さん、お友だちは居るの?」

「はい」

「あの、不躾でごめんなさいね、女の子のお友だちは」

「必要ありません」


 父親に似て身長は183㎝と高く見栄えは良い、細くて垂れた目、少し綻んだような薄い唇は和かな風貌で女子大学生からの誘いも多かった。だがそれらは全て断った。あまりに冷淡で男色では無いかと陰で噂されていたらしい。


 下らない。


 惜しくも一年間浪人したが京都大学に合格、ところが何を勘違いしたのか京都大学大学院理学研究科に進んでしまい慌てて国家公務員試験を受験した。


「うん、問題ない」


 私は理想通りの人生を歩み晴れて警察官になったが京都府民の気質に合わず、のんびりとした石川県金沢市に戻って来た。勤務先は石川県警察本部、キャリアは警部補からスタートし二年後には警部に昇格する。


 ところがそこで順風満帆な人生に黒い染みが付いた。


「久我くん、君、見合いをしてみんかね」


 ある日、廊下ですれ違いざまに上役に肩を叩かれた。


「は?」


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