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第一章 第十七話 谷野工事の二回目のキャラメイキング

 谷野たちは、気が付くとお花畑に戻って来ていた。谷野たちは、ゲーム世界に四時間ぐらいいたはずであったが、お花畑は、数分と経っていなかった。その為、谷野たちがゲームを始める前とほとんど様子が変わらなかった。


 近くにいた警備員たちは谷野たちに気付く。

「お早いお帰りで」

 警備員の一人が言った。

「大きなお世話だ」

 取巻きの一人が言った。


「こんどもゴブリンの戦士で行くぞ」

 谷野は、全滅したのがとても悔しかったのだ。

 ゲーム端末のメニューを操作しても、使える種族、クラスには変化なかった。

 クラスメニューで戦士を選ぶとお花畑から姿を消す。


 谷野は、地面と天井だけが延々と広がっている、亜空間に再び来た。当然ながら、取り巻きの三十人はいない。

 取巻き達は、別々の同じような亜空間にいる。

 ”ゲーム内では、ゲーム内だけの名前を使っても良いですし、本名をそのまま使っても良いですがどうしますか?”

 ゲームシステムから問いかけられる。

「本名に決まっている」

 谷野は面倒なことを聞くなと思った。

 しばらく沈黙が漂う。

 ”ゲーム名、『谷野工事』で登録いたしました”

 ”市街地ステージからスタートします”

 ”善行を行うとカルマが良くなり、カルマゲージは青が広がります” 

 ”悪行を行うとカルマが悪くなり、カルマゲージは赤が広がります” 

 ”ステータス画面のカルマゲージの全体が青くなると市街地ステージクリア、真っ赤になるとゲームオーバーとなります”

 ”次に注意事項を説明します”

 ”人間を攻撃するとカルマが悪化します。ただし、自衛のための攻撃つまり反撃はセーフです”

 ”ちなみに、人間とはヒューマンだけでなく、エルフ、ドワーフ、ノーム、フェアリーも含まれるのでご注意ください”

 ”モンスターを攻撃するとカルマが改善します”

 ”攻撃を受けダメージを受けるとカルマが改善します”

 ”他の生き物を殺さないと食料が得られません。また、他人が生き物を殺した場合でも食料にできます”

 ”カルマゲージは毎日リセットされますが、前日の結果で青くなりやすくなったり、赤くなりやすくなったりします。つまり前日の結果は無駄になりません”

 ”ちなみに前回と同じ種族を選んだので、前回とは違うフィールドでのスタートとなります”

 ”ゲームをスタートしてもよろしいですか?”

 谷野にとっては三回目の説明であったので、軽く聞き流した。しかし、一部説明が追加されていたことに谷野は気付かなかった。

『前回と同じ種族を選んだので、前回とは違うフィールドでのスタートとなります』をサラッと聞き流し、理解していなかった。

「さっさと開始してくれ」

 谷野は、少しイラついたような口調で言った。


 すると、視界が真っ白になり、何も見えなくなる。


 谷野はゆっくり目を開くと、洞窟のようなゴブリンの巣に出た。谷野は辺りを見回す。

「どういう事だ? なんか前回の時と様子が違うような気がするのだが」

 同じ種族を選んだからフィールドが変わったからである。

 谷野が巣の様子をうかがっていると続々と取巻きたちがやって来る。

 取巻き三十人中二十九人がそろった。しかし、なかなか最後の一人がやって来なかった。


「先生。佐藤が現れません」

 取巻きの一人が言った。

 佐藤以外の取り巻きが集まってからすでに大分経つ。

「物知りゴブリンに聞いてみよう」

 巣の配置から何まで別モノなので、物知りゴブリンの居場所探しから始める必要があった。

 たまたま、谷野の仲間ではないゴブリンが通りかかる。

「物知りゴブリンの居場所を教えてくれないか?」

 谷野の取巻きの一人が、その通り掛かったゴブリンに聞いた。

「お前ら新人か。物知りゴブリンなら、あっちだぜ。なんなら案内するぜ」

 通りかかったゴブリンは指差しながら言った。

「ありがとう。頼む」

 通り掛かったゴブリンを先頭に、三十人でゾロゾロ物知りゴブリンのところへ行く。物知りゴブリンの近くまでくると、「あれが物知りゴブリンだ」と言って、通り掛かったゴブリンは行ってしまう。

「どうしたんだい。なんか困りごとかい?」

 物知りゴブリンが、谷野たちに聞いた。

「俺たちは三十一人の仲間で一緒にこのゲームに挑んでいるんだが、一人集まらないんだよ。どうしたら会える?」

 取巻きの一人が聞いた。

 物知りゴブリンは困った顔をしたのちしばらく動きが止まる。そして、再び普通に戻る。

「本来このゲームは、集団で一緒に攻略するゲームじゃないんだよ。ただ、このゲームの仕様バグ的ところがあって、同じ種族、同じクラスを選択したプレイヤーがほとんど同時にキャラクターを作ると同じフィールドの同じ巣に出てくる仕組みになっている。おそらくタイミングが一人だけズレたから別のフィールドに送られたのだろう」

 物知りゴブリンは丁寧に説明したが、谷野たちはその説明をほとんど理解できなかった。

「結論から言うと、会えないというのが答えだ」

 谷野たちは驚き、抗議する。

「意味が分からない。同じ市街地ステージ何だろ。会えないなんておかしいだろ」

 取巻きが抗議する。

「会えないモノは会えないの。例えば、スポーツクラブとテニスコートの関係みたいなもんだよ。同じスポーツクラブにテニスコードが複数あるのを想像してみ。同じスポーツクラブでテニスをすることになっても、使用するテニスコートが違えば、一緒にプレイはできないだろ。違うフィールド同士のプレイヤーが一緒になることはない」

 物知りゴブリンは面倒くさそうに言う。

「それじゃあ、佐藤はどうして違うフィールドとやらに行ったんだよ」

 取巻きの一人が聞いた。

「同じ種族、同じクラスを選んだのであれば、運悪くタイミングがズレたんだろうよ」

 物知りゴブリンは、肩を竦めて言った。

 谷野たちは、ここにいない佐藤を叱る。

 そもそもルールや仕様を知らない中で叱るのは無体であるのだが、ここにいない人間を叱るのも意味がない。

「はぐれてしまった仲間と合流することを考えるより、新しい仲間を集めた方が良い。三十人もいても一緒にこのフィールドに来たという事は、全員同じクラスなんだろ。だったら、違うクラスの仲間を巣の中から集めた方が良いぞ。その方が冒険の幅が広がる」

 谷野たちは憮然とする。


 谷野たちは、しばらく相談したのち、武器を揃えるために模擬戦を行うことにする。

 模擬戦は、やっぱり、青いCGのようなゴブリンとの戦いであった。今回は三十名中、十名の取巻きが一回で合格し、ショートソードを手に入れた。谷野を含む二十名は、また鬼教官がやってきて一回目のチャレンジの時と同じように猛特訓を受けることになる。

 猛特訓が不要な十名は、遊んで待っているのも時間がもったいないので、ヨロイをもらう模擬戦を受ける。それでも時間が、余るので、盾をもらう模擬戦を受ける。鬼教官の猛特訓を受けた者と、それ以外の者との間で、装備の差が出来てしまった。

「お前ら強そうだな」

 谷野が、装備がそろった十人の取巻きに行った。

「大丈夫ですよ。先生もすぐに揃えられます。それまで、微力ながら俺たちが先生を守ります」

 装備の揃った取巻きの一人が言った。

「そんな事より、食料を獲りに行きませんか? 小腹が空いてきました。完全に腹がすく前に食料を確保しましょう」

 谷野と一緒に猛特訓を受けた取巻きが言った。

 谷野は食料を確保することにした。




 市街地にでると、戸建ての住宅が並ぶ住宅街でる。初めて来たばかりの場所なので警戒しながら進む。すると無防備に歩いている三人組の人間を見つける。

「あいつらを殺して食べよう」

 谷野が言った。

「カルマゲージが悪化しますが、よろしいですか?」

 取巻きの一人が聞く。

「構わん。どうせ大して悪化しない」

 谷野の言葉には、全員逆らわない。

 谷野の取巻きたちは、人間を襲撃する。


 数に任せて、あっという間に人間三人を倒す。そして三十人が仲良く分けたが、大人数の空腹は満たさなかった。その為、さらに、市街地を彷徨う。

 その為、何度か少人数の人間と遭遇し、その都度襲い食べたが、三十人と言う人数全員の腹を満たすのは大変だった。

 最後にミノタウロス一体と遭遇し、やっぱり数にモノを言わせて、死者を出さずになんとか倒す。そして、なんとか三十人の腹を満たすことができた。

「腹を満たすことはできましたが、大ダメージを受け、回復していない者が多数います。一旦、巣に戻ってケガが回復していない者は安静にし、余力のある者は、模擬戦をしてはどうかと」

 取巻きの一人が提案する。それと言うのも、谷野自身もミノタウロスの攻撃を受け、ダメージを負っていたからだ。

「それは良い考えだ。そうしよう」




 谷野たちは、なんのトラブルもなく、巣に戻れた。

 そこで、ダメージが大きいチームと小さいチームに分かれた。

 ダメージが大きいチームは休憩をし、ダメージか少ないチームは模擬戦をして装備を整えることにした。

 チーム分けをして気付いたが、ダメージが少ないチームは模擬戦を上手く合格し、装備がそろっている十人と他二人であった。

 そして、谷野自身は最後のミノタウロスとの戦いで、ミノタウロスの攻撃を受けてしまい大ダメージを受けていた。その為、休憩するチームに居た。

 模擬戦をするチームは、早速装備を強化していくことになる。なぜなら、谷野たちは全員、食料確保のために人間やモンスターと戦ってきたため、二レベルにアップしていた。

 その為、模擬戦するチームは、武器、ヨロイ、盾を強化する。そして、休憩チームに不要になったヨロイや盾を渡す。それでも、もらえずにいる者もいたが。


 この後、食料確保以外は、模擬戦を中心とした経験値稼ぎをし、可能な限り装備を充実を行っていく。

 確かに、模擬戦は安全に経験値稼げるが、経験値稼ぎとしては決して効率は良いとは言えない。しかしながら、装備を充実させることは、経験値を得ること以上のメリットがあることに、谷野たちは気付いた。

 しかし、これはゲームであっても、腹は減る。食料を確実に確保するためには、実践が必要な場合が多い。その実践のリスクを軽減するのが、武器であり、防具なのだ。

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