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第一章 第十話 竹内凹蔵の市街地ステージ初めての探索

 ミノタウロスの巣からスタートした竹内凹蔵たちは、まず、巣の中を探索することにした。

 と、言っても、まだ当人たちは、ここがミノタウロスの巣であること自体知らない。


「それにしても、ミノタウロスがいっぱいいますね」

 工藤が言った。

 竹内凹蔵たちの近くを一体のミノタウロスが通りかかる。

「すみません。ここはどこ?」

 渡辺が通りすがりのミノタウロスに聞いた。

「ん。お前たちは新人か? ここはミノタウロスの巣だよ。掟とかルールとかは、あそこにいる物知りミノタウロスに聞くと良い」

 通りすがりのミノタウロスは、物知りミノタウロスを指差して教えてくれる。

「思ったより、親切ですね」

 工藤が言った。



 カルマ都合で市街地ステージからスタートしたプレイヤーであっても、必ずしもみんなが凶悪な悪党ではない。

 例えば、プライマリーバランス黒字化目標を守ることによって、日本国は衰退し貧困化した。だから、「プライマリーバランス黒字化目標を守るべきだ」と信じて、その政策を支持した人間は、日本国を滅亡へと導いたメンバーと言える。

 しかしながら、プライマリーバランス黒字化目標を守ることが正しいと騙されていた人たちは、善意で守ることが正しいと信じて支持していただけで、悪意で亡国の手助けをしたわけではないのだ。むしろ、善人で無知であったがために騙され、悪事に加担しただけなのだ。


「あんたが物知りミノタウロスか?」

 渡辺が聞いた。

「ああ、その通りだが。何か用か?」

 物知りミノタウロスは、愛想がいい。

「あんたから掟やルールを聞けといわれたんだけど」

 渡辺が言った。

「掟は簡単だ。巣の中の住人と巣の中でトラブルを起こすな。他には、ミノタウロス以外にこの巣のありかを教えるな。他人のアイテムなどを奪ったり、だまし取ったりするな。巣の中でエサを確保しようとするな。つまりエサは巣の外で確保しろ。だな。これらが守られるからこそ、すべてのミノタウロスがここで安心して休息をとることができる。あと、ルールと言うか、武器や防具などの入手は、ここで模擬戦をやってもらう。模擬戦を受けると武器や防具がもらえる。武器や防具を入手したあと、戦闘訓練も受けられる。模擬戦も戦闘訓練も実践程ではないが、経験値がもらえる。リスクなしで経験値がゲットできる方法だから、うまく活用してくれ」

 物知りミノタウロスは言った。

「このゲームはどうするとクリアなんだ」

 竹内が聞いた。

「このゲームをクリアするためには、ダンジョンステージをクリアする必要があるな。だが、その前に市街地ステージをクリアする必要があるぞ。市街地ステージをクリアするには、ステータス画面のカルマゲージを青くする必要がある」

「そのカルマゲージはどうすると見れるんだ」

「ステータス画面にある。ステータス画面は、ゲーム端末を出すと見れて、ゲーム端末はゲーム端末オープンと言うと出せるぞ」

 竹内たちは、三人ともゲーム端末オープンを言うとゲーム端末を出せる。そして、ステータス画面を見ると、カルマゲージが表示されていて、右半分が赤く左半分が青かった。

「カルマゲージは一日で全体を青くする必要がある。カルマゲージは毎朝四時にリセットされるから気を付けろよ」

「リセットされるという事は、あと少しで全部青と言うところで次の日になるとその日の努力は無駄になるってことか?」

「無駄になると言えば、無駄だが、赤より青が多いと翌日は青を増やしやすくなる。だから、青が多い日をずっと続けていれば、累積的にどんどんクリアしやすくなる。逆に言うと、赤が多い日が続くとクリアしにくくなる」

 竹内たち三人は、唖然とする。

「だが、青を多くする方法は確か……」

 竹内が言葉が途中までしか出なかった。

「モンスターを攻撃したり、攻撃を受けたりすると青が増える。他には、他人に情報を伝えたり、アイテムをプレゼントしたり、すると青が増える」

「情報を伝えたり、アイテムをプレゼントしても青が増えるのか。それは良いことを聞いた」

 竹内が言った。

「仲間内だけで、アイテムを交換し合っても青は増えないぞ。あくまでも自分で汗水たらして入手した物じゃないと青は増えないからな」

 物知りミノタウロスがそう言うと、竹内は残念そうにする。

「早速だ。武器を入手するために模擬戦をやって行くと良い」


 竹内たち三人は、早速模擬戦をする。武器は両手用のバトルアックスを選択しする。

 いかにもCGと言う感じの青いミノタウロスが現れ、戦闘が始まる。


 模擬戦が終ると、竹内たち三人はバトルアックスをもらう。

「防具はまだ装備できないから、あとやるとしたら戦闘訓練を受けていくと良い。あと、エサの確保は腹が完全に減る前の方が良いぞ。腹が減ったら力が出なくなる。すると自分が相手のエサになるからな」

 物知りミノタウロスが言った。

「エサって、もしかして倒したモンスターの事か?」

 渡辺が疑問に思い聞いた。

「それがこの世界のルールだ」




 竹内たち三人は、斧を持って巣の外、市街地に出る。市街地は、一軒家が多い住宅街であった。そして、たまに○○ハイツと言った名前のアパートもあった。

 市街地を歩いていると、人間とチラホラ遭遇する。しかし、竹内たちに気が付くと、人間たちはすぐに逃げ出す。

「なんか気分悪いな」

 工藤がイラついて言った。

「人間にしてみたら、我々が化物だからだろう。とにかく、エサを探そう」

 渡辺も腹が減ってきたのを自覚する。

 しばらく歩いていると、ゴブリン五体の集団と遭遇する。

 ゴブリンたちも竹内たちを見て、数的優位であるため、戦闘を選んだ。


 竹内に一体、工藤と渡辺に二体ずつゴブリンが襲う。

 竹内たちは、無理やりゴブリンに攻撃を当てようと大振りするため、なかなか当たらない。それに対して、ゴブリンは竹内たちに小さなダメージだが、確実に与えていく。

 しかし、工藤の攻撃がまぐれ当たりすると、一撃でゴブリンを倒してしまう。すると竹内も渡辺も立て続けに攻撃が当たり、一撃で倒す。すると残った二体は、敗走する。

「初対戦で初勝利だ」

 竹内たちは自分が倒したゴブリンを一体ずつ食べた。すると戦闘で負傷した傷もあっという間に回復していく。生で食べているのに、美味しく感じた。体の痛みもなくなり、良い感じであった。

「まだ、腹いっぱいではないな。もっと食べ物を見つけよう」

 竹内が言うと、取り巻き二人も同意する。



 竹内たちは、食料を求めて市街地を彷徨う。

 すると、人間より背が低い毛むくじゃらの小人、ドワーフ三人と遭遇する。

 三人のドワーフは、竹内たちに気付くとすぐに逃げ出す。

「あれはモンスターだよな?」

 竹内が聞いたが、工藤と渡辺は首を傾げる。

「あれを食べよう」

 竹内は言うと走り出す。取巻きの二人も少し遅れて走り出す。



 竹内たちは、ドワーフたちを追いかけまわした。

 ドワーフたちは、頑張って逃げた。そして、庭のある戸建て敷地内に逃げ込んだ。

 竹内は建物を左回りに、工藤と渡辺は右回りに入って行く。

 ドワーフたちが逃げ込んだ建物は、壁で囲まれているため、挟み撃ちされてしまう。


 ドワーフたちは、ダメもとで一人側の竹内の方へ三人で攻撃をする。全員竹内に攻撃を命中させたが、大したダメージを与えられなかった。

「先生に何をするんだ!」

 工藤と渡辺は、ドワーフを背後からバトルアックスで叩き斬る。哀れドワーフ二人は一撃で死亡。残った一人を竹内が叩き斬った。残りの一人も哀れにも一撃で死亡。

「手こずらせやがって!」

 竹内たちは、自分が倒したドワーフを食べ始める。

「これは、さっきのモンスターより美味いな」

 竹内がそう言うと、取り巻きの二人も同意する。

 竹内たちは、ドワーフを貪り食った。



 竹内たちは、ドワーフを食い終わると、腹いっぱいになった。満足したので巣に帰ることにする。

 巣に帰ると、情報集めのために、物知りミノタウロスの元へ行く。

「何か良い情報はないか?」

 渡辺が聞いた。

「食事は済んだようだな。だったら、ステータス画面でカルマゲージとレベルのチェックをするんだ」

 物知りミノタウロスは竹内たちにアドバイスする。

 竹内たちは、ステータス画面を見ると、二レベルにアップしていることに気付く。

「やったレベルアップだ!」

 工藤が言うと、三人全員レベルアップしており喜び、三人でハイタッチする。

「レベルアップすると、今持っている武器より強い武器を模擬戦するともらえるようになる。マメにチェックしておくと良いだろう」

 物知りミノタウロスそう言うと、三人ともガッツポーズする。

「次はカルマゲージをチェックすると良いだろう」

 三人はカルマゲージをチェックすると、工藤と渡辺が驚く。

「カルマゲージの赤が広がっている!」

 しかし、竹内は首を傾げる。

「あまり変化ないようだが」

 竹内は一応言葉に出して言った。

「良ければ俺に見せてもらっても良いかい?」

 物知りミノタウロスは、聞いた。

 工藤と渡辺のカルマゲージは赤の領域が広がっていて、竹内のカルマゲージは、ほぼ真ん中のままに見える。

「三人とも一緒に行動、一緒に狩りをしたんだよな?」

 竹内たちは、三人別々に頷く。

「という事は、あまり変化のないあんたも目盛りが小さいだけで、悪化していると見た方が良い」

「そうなのか? 俺の前世の活動のお陰で悪化しなくて済んでいるだけじゃないのか?」

 竹内がそう言うと、工藤と渡辺は驚く。



 実は、これがカルマゲージの恐ろしいところである。

 前世での悪行が多いと、市街地の行動によるカルマゲージの変動が小さくなる。その為、自分の行動がカルマにとって、良いことをやっているのか、悪いことをやっているのか、分かり難くなるのだ。



「あんたたちは、一体何を食べて来たんだ?」

 物知りミノタウロスは怪訝な顔をして聞く。

「緑色の肌の小人のモンスターと、髭面の小人のモンスターを食べた」

 渡辺が答える。

 物知りミノタウロスは、フリップを取り出す。

「これは食べたか?」

 ゴブリンが写った写真を見せる。

「ああ、これと似た奴を食べた」

 渡辺が答える。

「これは食べたか?」

 ドワーフが写った社員を見せる。

「ああ、これと似た奴を食べた」

 今回も渡辺が答える。

「この緑色の肌の小人はゴブリンと言って、殺しても良いモンスター。この髭面の小人はドワーフと言って、人間と同じで殺してはいけない人間の一種だ」


 この後、竹内たちは、殺して良いモンスターと殺してはいけない人間を物知りミノタウロスから習う。

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