「エンド、何を考えてるの」
腕の中のカドから声をかけられ、俺は我に返った。
「ちょっと情報が多くて混乱していた。なあ、それにしてもシロキさんとお前、同じ顔なのに中に入っている魂が違うだけで、印象もずいぶん変わるな」
造形より感情や意志の方が印象を作ることを思い知らされる。
「エンド、シロキさんに会ったんだよな。どうだった? シロキさん」
「どうって、そうだな、ものすごく色っぽい神様だった」
「お前、シロキさんをいやらしい目で見るなよ、神様だぞ。罰が当たっても知らないからな」
カドが睨む。
「そんな意味じゃないよ。印象が揺らいでいて掴みどころがない。笑いそうで笑わない、泣きそうで泣かない、怒りそうで怒らない、そんな危うい瞬間を切り取ったような神様だった。色気ってそういうことだろ。やっぱりお前とは違うな」
「エンドにはそう映るのか。シロキさんは優柔不断でだらしなくて、優し過ぎる神様だよ」
カドの無邪気な表情を見て、俺は確かめたくなる。
「お前、鏡の悪魔のことも思い出したか? シロキさんの記憶だと、お前らの間でかなり辛いことがあったようだが」
「そこまではまだ……かなり昔の話だろ。ナイトのことは思いだせる。いつも俺に優しかった。でも……お前の言い方を借りれば色っぽいのはナイトだよ。いつもすごく傷ついてるみたいだった。何も言わないし、表情にも出さないけど。俺にはシロキさんと違った意味で大切だった。いや今でも大切だ」
その悪魔に会ってみたいな。シロキさんの憧れでカドを甘やかす悪魔か、どんなやつだろう。
「そうか。それじゃ物足りないだろうが、しばらく俺で我慢してくれ。近い将来、シロキさんとその悪魔とまた再会できるまでの間だ」
「そんな、それまでの間とか言うなよ……いやだよ、ずっと一緒にいてよ」
カドが本気で焦った顔をする。鏡の悪魔の気持ちがわかるな。自然と笑みがこぼれてしまう。
「お前が好きなだけ一緒にいてやるよ。鏡の悪魔とも気が合いそうだ」