どうしてそこから言うんだよ。あせって取り繕うと思ったが、既にマツリくんの顔から血の気が引いている。
「ナイトお前、少し人の気持ち考えろよ。マツリくん、一時的に身体を――実態を失くすだけだよ。君の魂は残るし、身体も取り戻す方法はあるから安心し――」
「どうだろうな」
ナイトはマツリくんに恨みでもあるのか。
「何なんだよ、お前」
僕は思わず声に力を込めた。
「こいつらの魂、今回が最終で間違えないか? 俺には見えないから、お前に会ったら聞こうと思ってた」
僕に判別をさせるのも目的の一つか。
「……そうだよ、最終だ」
「じゃあ余計に魂まで破壊されるわけにはいかないよな。身体だって今と同じには……」
マツリくんの頬に涙がつたっていた。
「二人とも、本当に何の話をしてるんですか」
たまらずマツリくんを胸に抱き寄せる。
「ごめん、今の話はこっちの都合なんだ。ただ、君のことは僕が守る。神様が約束しているんだから信じて」
マツリくんと彼を抱く僕に、話の物騒さとは裏腹の優しい目を向けたナイトが言う。
「なあ、マツリ、お前の兄さんを殺したやつらを覚えてるだろ。あいつらが今はお前を狙ってるんだ。あいつらをどうにかするまで、お前を安全な場所に匿いたい。それがシロキの門の中だ。大丈夫、門の中はシロキもそいつの使いもいる、悪くないぞ」
腕の中でマツリくんが小さな、でもしっかりした声で答えた。
「はい」
もう泣き止んだのか、こんな説明で納得できるのか。
「それからもう一つ大事なことを伝えておく」
ナイトが何を言うか、僕には想像がついた。
さっき覗いたマツリくんの魂があまりに強かったから。
「マツリ、俺はイサリの魂をお前の中に入れたんだ」
「え?」
「お前は兄さんを良く守ってるって言っただろ? お前の魂の中に入れて保管したんだ。お前の兄さんは身体を失ったが、正確にはまだちゃんとそこにいる。あいつらに奪われるところだった魂がな」
ナイトがマツリくんの胸の辺りを指す。
「お前の魂が消えれば、兄さんも完全に消える。俺は二人とも助けたい」
「わかりました。兄さんの魂を守れるなら、僕の身体はどうなっても構いません。でも何で幽霊は僕たち兄弟にそこまで拘るんですか。何で僕たちの魂は狙われているの? 僕たちが何をしたって言うんですか」
決心が早いな。前からお兄さんの魂を自分の中に感じていたのだろうか。最終では自分の死期もわかるものだったか? 自分の時の記憶はないからわからない。でもまだ、幽霊につけ狙らわれてる理由はわかっていないようだ。説明しなきゃ。
「それは君の中の……」
後ろに気配を感じ、マツリくんを庇って振り返った。思ったより早かったな。まだ話は終わっていないのに。