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第43話 神様と悪魔

「気を付けて下さい」


 僕らから手を離したマツリくんが、立ったまま両膝に手をついて肩で息をしている。


「うん……なんか、ごめん」


「俺は見られていないと思うけど……」


 僕と違って、実態を隠していたナイトは少し心外そうな顔をしている。


「冗談じゃなく、シロキさんに見惚れてぼんやりしてしまって、魂が抜かれそうでした」


「そうなるかもな」


 ナイトが淡々と言う。


「何てことを言うんだよ」


 ナイトは何か言いたげな視線を僕に送ると、直ぐにマツリくんに向き直った。


「少し前から見てたが、お前、シロキとはよく話すな。俺とは目も合わせないのに。まだ俺のことを疑ってるのか?」


「そんなんじゃありません。あなた、シロキさんと似ているのに、何か緊張しちゃうんですよ」


 マツリくんが困った顔で言うので僕はかわいそうになる。


「おい、人間をいじめるなよ」


「いじめてないよ」


 マツリくんが恐る恐る言った。


「神様と悪魔って本当に仲が良いんですね。ナイトさんは鏡の悪魔ですよね。神様と悪魔は対になっているものなんですか?」


「そうではないよ」


 僕は答える。


「悪魔はそれぞれの地獄に属してるんだ。炎の地獄とか水の地獄とか石の地獄とかね。神様の数は地獄の数よりずっと多いから、全ての神様に対になる地獄がある訳じゃない。でも同じ属性の悪魔とは親和性が高いね。例えば、水の悪魔は海の神様や川の神様と雰囲気まで良く似ているよ」


「鏡は同じ名前の神様も悪魔も持っていて贅沢ですね」


 贅沢か、そうかも知れないな。


「ところでナイト、マツリくんをカドに入れろってどういうことだ」


 真顔でナイトを問い詰める。


「俺だって出来ればそんなことしたくない。でも、魂だけでも助けたいんだ」


「何からだよ」


「俺の地獄を奪ったやつらから」


 ああ、やっぱり。どうしよう、不穏な音が僕の中で鳴り響いて、鼓動が早くなる。


「何の話ですか……」


 マツリくんが怯えた様子で尋ねる。


 あまり感情を顔に出さないナイトが、微かに悲しそうな表情を浮かべて答えた。


「早い話、お前、死ぬんだよ」


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