俺は思い出したことを一気に話した。
エンドとルキルくんは続きを待っているのか、黙ってこっちを見ている。
「……それで、気が付いたらシロキさんの身体になっていて、鏡の空間を見ても、自分が何でそこにいるかも何も思い出せなかった。ただ『炎の地獄に行け』という言葉が頭の中で響いていて、俺は身体が覚えている炎の地獄へ続く扉を開けたんだよ」
エンドがわかった、というように頷いた。
「一遍にたくさん思い出したようだが、大丈夫か」
気がつけばエンドの腕を跡が付くほど強く掴んでいた。
「なあ、お前、今俺のことどう思ってる」
「どうって、お前だと思ってる。心配するな、全部上手く行くまでついていてやるから」
だったら少しくらい上手く行かない状況が永遠に続いた方がいいな、とエンドにもたれかかりながら俺は思う。
「ルキルくんには本当に悪いことをしたよ。シロキさんの身体、俺が絶対に受け取らなければ良かったんだ。俺の意志が弱かったから、シロキさんの思いに負けてしまって……」
ルキルくんの大好きなシロキさんの身体を自分なんかが使っているこの現状が、無性に申し訳なくて頭を下げた。
「カドさんは何も悪くないじゃないですか。それにカドさんに身体をあげるのはシロキさんの願いだったから、叶えてくれて僕は嬉しいんですよ」
意外なことにルキルくんは今までで一番かわいらしく笑った。
「カドさんが自由に動きまわること、カドさんが誰かに、何かに触れること、カドさんの笑顔、泣き顔、困り顔、それが見たいってシロキさんが言ってました。うらやましいな、カドさんは。きれいなシロキさんの身体をもらって、夢にまでみられて」
「それじゃ夢、叶ったうちに入らないじゃないか。俺に身体をくれて自分は極楽に行ってしまったら、シロキさんにはどうやって俺に触れるんだよ。本当にシロキさんは馬鹿だな……」