僕は一気に話して息をついた。
ファミドはシロキさんを思い出したのか、笑っているような表情を浮かべている。それに反してカドさんは苦しそうだ。
「シロキさん、鏡の神様……俺知ってるよ、シロキさんを、知ってる」
――でしょうね、カドさんは会った時からあからさまに神様を纏っている。
「その悪魔はどうして人間の世界にいたのか、何故ファミドは襲われたのか。ガジエアはどうして人間の世界にあったのか。ルキルくんとシロキさんのことがわかるほど、別の謎が湧いてくるな」
僕に答えを求める風でもなくエンドさんが呟いて、考えこんだ。
その腕はカドさんを支えている。
「ガジエアは普段、極楽にあることはエンドさんも知っていますよね? あれはもともと神様を殺すためではなく、神様を『解体』する時に使うものです。作成や再成の過程で……神様を敢えて切り刻んで、継ぎ足したり、捨てたり……その仕組みは僕も詳しくは知りませんが。神様は普通の刃物で切っても、自己の持つ修復機能で上手く切れなかったり、いびつに治癒しちゃったりして、むしろそれが作成の妨げになるのです。これが僕がさっき極楽についてあまり話したくなかった理由の一つです。あそこで行われていること……作成も再成も、その過程はかなり残酷なものです。あそここそ本来は地獄と呼ばれるべきかも知れない」
また嫌な記憶がよみがえって、もう一度呼吸を整える。
「話はそれましたが、ガジエアは四本存在します。あの時、悪魔が持ち去ったのはそのうちの一本。ファミドが襲われたのは……巻き添えだったのかも知れません」
「巻き添え?」
エンドさんが首を傾げる。
「はい、本当は神様を殺したかったんだと思います」
太陽が一番力を発揮する正午過ぎ。ファミドの体温もあり、暖かいはずなのにカドさんが小刻みに震えている。
エンドさんがいてくれて良かった。エンドさんは悪魔が神様を殺そうとしたかもしれない、と聞いても、少しも動揺していない。魂が乱れるのはカドさんのことだけか。記憶を取り戻したカドさんが壊れないように支えてあげられるだろうか。
二人が口をつぐんだのを良いことに、僕は話を再開する。本当は今、色々質問されたくないというのが本心だけれど。
「それじゃあ、最後にシロキさんとの約束と、いなくなってしまった時の話をしますね」