「ヒロシ君! ついにやったよ!」
「どうしたんですか、博士? テトリスの長い棒の使い方をマスターしたんですか?」
「違う! ワシはついに発明したんだよ!」
「えっ、中島知子と松嶋尚美の顔写真で作ったオセロですか?」
「違うよ! 盤面が全部埋まった時、気持ち悪いだろう! そうではない。筋肉注射だ!」
「いや、昔からあるでしょ! ずしーんて痛い注射ですよね?」
「そっちじゃない! 筋肉
「何すか、それ? まるで筋肉注射じゃないですか?」
「だから、そう言っているだろう! これは画期的な発明だよ」
「筋肉を注射すると、どうなるんですか?」
「ふっふっふ。見たまえ。こうなるんだ!」
博士は、引き裂くように白衣を脱ぎ捨てた。
「ああっ! もったいない。白衣は高いんすから」
「そっちじゃなーい! ワシの体を見たまえ」
「ぬおっ! 博士が炎のマッチョマンに!」
「うははははは。これが筋肉注射の威力だ!」
「ぐぅっ! 白髪ハゲの爺マッチョは実写版オセロより気持ち悪いですね」
「うっせえわ! この発明の影響を考えて見たまえ!」
「老人ホームがマッチョで一杯になるんですか?」
「何で年寄り限定で考えるんだ? この商品はお子様からご老人まで幅広くお使いいただけるのだ!」
「えっ? アイドルグループもですか?」
「乃木坂だろうと欅坂だろうと、すべての坂は
「えーっ! それは嫌ですよー!」
「どうしてじゃ? 美しい筋肉を誇示して見せてくれるかもしれんぞ?」
「アイドルが超絶マッチョになったら、握手会の度に手を骨折しちゃいますよ」
「ええい、うるさい! ならば、お前もマッチョにしてやる!」
「うぎゃーっ! か、体が硬くなってきた?」
「あ、間違えた。これは人間を蝋人形にする注射だった」
「てめぇーっ! 馬鹿博士! 脳みそも筋肉か!」
「その通り! 既に脳にも注射済みだ!」
「だっ、だめだこりゃ……」
<了>