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第11話

 行った実験結果を政府に提出すると、すぐに政府の重鎮や官僚がやってきて、再度実験を彼らの前で行った。

 短い時間とは言え、それはそれは凄い喜びようだった。


 そして報告書には対戦闘、防空などの広域範囲への実用は難しく、実用化するにはかなりの年月が必要だと記載していた。しかし馬鹿どもは目の前で見た結果が全てだと勘違いし、防空や対ミサイルでは現状では作れないと言っても「完成したのも同然じゃないか」と聞く耳を持たない。


「聞けってんだ! 低知能どもが! 報告書を読んでここに来たのか?! 防空、対ミサイル用にを作るにはまだまだ時間が掛かるって書いてんだろ? 急いでも作れねえもんは作れねえんだよ! 分かったか!」


 ドルフの怒鳴りながら、再度現状を説明しなければならなかった。後で怒られるだろうが、知った事じゃない! 自分がいなければ、この研究が進まない。それがドルフにとっては最大の盾でもあった。


 演説に呆気に取られていた一団の初老の議員が、顔を真っ赤にして怒鳴り始めた。


「て、て、低脳だと、ワシらの事を馬鹿だと言ったな!」

「俺からしたら馬鹿だが? 俺のIQは281だ。俺よりあんたらは頭がいいのか?」


 オロオロする議員もいれば、あまりこの騒ぎに関心がなさそうな議員、頷いている議員といた。


「まあまあ。ドルフ教授の報告書には確かに、今まさにおっしゃっていた事が書かれていました。それでも治安維持や国民の財産を守れるほどの性能はある。ですね? 申し遅れました。私は田中です」


 田中と名乗った議員は、まだ三〇過ぎくらいで若い。だからしっかり報告書を読んできたのだろう。話しが通じそうな人間がいて、ドルフはホッとした。



 政府要人が帰り、研究室のソファで横になっているとエアルがやってきた。


「お疲れ様です。ハーブティを入れてきました」

「ありがとう」


 わざわざコップまで持って来て、水筒から移し替えて注いでいる。すっきりとした爽やかな香りがしてきた。起きあがったドルフは、エアルが入れくれたハーブティに口を付けた。


「ん。美味いな」


 体が中から温まって、頭がスッキリしてきた。


「良かったです。精霊たちも少し力を貸してくれたんですよ」

「え? 精霊が?」

「はい。ドルフさんが疲れているようだからって、精霊たちが祝福を入れてくれています」

「精霊たちは、俺になぜ優しいんだ?」


 ボッ! 顔を真っ赤にしたエアルの口が、魚みたいにパクパクしている。例え魚でもエアルはきっと美人でモテる違いない。美人な魚かあーー思い浮かないな!


 馬鹿な想像をしていたドルフにエアルは「お、お、夫になる人、なので」と叫ぶように言い放った。


 何で精霊が知っているんだ?! と思わず周りも確認をしながら頭の中で、そうだった! 見えないしエアルの周りにいても俺には分からないじゃないか! と動揺していた。そもそも室井にはバレている。


 室井にバレるのと精霊にバレるのとは、なーーんか違うんだよな。何ていうか、エアルの親に見られた感覚? みたいな。

 ドルフは座りなおし、姿勢を正した。


「そ、そうだな。えっと精霊さんたち、ドルフ大井と申します。エアルさんを必ず幸せにしますので、よろしくお願いいたします」


 精霊が見えないドルフは、何もない空間に向かって頭を下げた。

 何か気恥ずかしいなあと、ドルフが顔を上げると、頬を薄っすらと染めたエアルが陽だまりのように微笑んでいた。



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