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第6話

 ドルフの言葉に驚いたのか、目を見開いてエアルは固まっている。それにしても本当に綺麗なアースアイだ。これも真正の魔女の特徴なのか? いやそもそもエアルが話していた純白の魔女……


「エアルは純白の魔女、だよな?」


 我に返ったドルフの目と鼻の先に、顔を赤くしたエアルがいた。


「す、すまない! 本当に綺麗な目で、思わず見入ってしまった」

「い、いえ……大丈夫です」


 何か気まずいなあ。自分は瞳フェチだったか? ドルフはエアルの胸元に視線を移した。

 いや、自分ははおっぱい派だな。触れるなら揉みたいし、顔を埋められるなら埋めたいしな。

 ふむふむと一人で腕を組んで、ドルフは納得していた。


「あ、あの」

「ん?」

「その私が純白の魔女というのですが、それは違うかと」

「だって真っ白で、医務室で鏡を見た時は驚いていただろう? もともとエアルは真っ白じゃなかったんだろ? ならエアルが純白の魔女を引き継いだってのが、妥当だろう」

「純白の魔女を引き継ぐには、儀式と精霊たちの許しと祝福が」

「その精霊たちが、エアルが純白の魔女になるのを許したんじゃないか? 確かに話しを聞く限り色々と面倒な手続きがあるみたいだが、緊急事態だったから全てをすっ飛ばした可能性はあるだろう」

「でも」

「その証拠が、今のエアルの姿じゃないのか? 純白の魔女しか使えない魔法とかはないのか?」


 しばらく悩んだエアルが「ありますが」と弱弱しい声で答えた。


「ならやってみればいい」


 少し悩んで「やってみます」と答えたエアルは胸元に手を組むと、何かを唱え始めた。


「輝く稲光、愚者たる者に1粒の抱擁を静けさに訴えて…ティルゼロ」


 ふわっと風が吹き一面が光り始める。


「え?」


 次の瞬間、芝生が伸び始めて花が辺り一面に咲き誇った。


「マジかよ」


 道になっている場所にも花が咲いて、四方見える限り花畑に変化している。


「うそ――私、純白の魔女の力を継承しているみたいです」


 どこからか「な、何だコレは!」「うぎゃーーー! 花が、花が急に咲き始めたんだけどーー! 花粉がヤバい! 目があぁぁぁーーーっ!」花粉症の人ご愁傷様ですと、心の中でそっと手を合わせる。


 防御魔法をさっき見せてもらったが、これは本当に凄い。砂漠化にも一役買えるんじゃないか? ドルフが魔法のメカニズムさせ分かれば、この世を劇的に変えられると確信した。


「エアルは純白の魔女を引き継いだみたいだな」

「はい。なんだか信じられませんが」

「なあエアル。頼みがある。どうか君その魔法のメカニズムを、研究させてくれないか? 特に防御に関する魔法をだ。そのメカニズムが分かれば、この国を国民を外敵や災害から守れるんだ。頼む! エアル!」


 ドルフはその場で土下座をして懇願した。


「ド、ドルフさん。頭を上げてください」

「君が良いというまで上げない。協力してくれるなら、身の安全を保障するし俺が君の面倒を責任を持ってみる! だから協力して欲しい!」

「ドルフさん……お願いです。顔を上げてください」


 顔を上げると、膝をついたエアルが微笑んでいた。


「私にできる事なら協力します」

「ありがとう! エアル! 君は女神だよ! 愛してる!」


 ドルフはエアルを思いっきり抱きしめて、喜びを爆発させた。


「あ、あの、ド、ドルフさん」

「これでシールド完成に光が見えてきたぞ! エアル、俺が君を守るからな!」

「へ?! は、はい」


 よし! そうなれば、エアルの体の構造を調べてみたい。それと魔法を使ったときのエネルギーの動きがどうなっているのか。とりあえず健康診断を兼ねて検査をして結果を見てみよう。しなければいけない事は一気に増えたドルフだったが胸は恋している高校生みたいに高なっていた。


「とりあえずエアルが住む場所だな」

「ドルフさんと一緒で構いませんけど」


 ドルフの顔は無表情になった。自分と一緒に暮らすと言うことだよな。

 それってエアルはどいう意味で言っているんだ? そんなに紳士に見えるって事か? 紳士でも生の女性を目の前にすれば興奮はするぞ? 元気モリモリなんだが。


 一気に色んな事が駆け巡ったドルフだったが、すっかり忘れていた事があった。


「エアル。俺、そもそも部屋にほとんど帰ってないわ」

「え?」


 部屋はある。それもこの敷地内に。国の重要人物でもあるドルフは普通にマンションに住んでいた事もあったが、ハニートラップを含め部屋を荒らされたり誘拐まがいな事もあり、国が施設内に住居スペースを作ってくれたのだ。


 まあそうなると、敷地内に部屋あるからいつでも帰れるという気持ちから、気付けば研究室で生活をしていた。

 二十四時間稼働の食堂にシャワー室も館内にはある。買い物もネットで、受取は施設の警備室がしてくれる。寝るのもソファアで十分。


「うん。そうだな。俺の部屋に住んでも、全く問題はないじゃないか」


 でも掃除はしないと……駄目だろうな。いつから帰ってないか、もう覚えていない。多分、虫とか湧いていない、と思う。ちょっと考えるとドルフの背筋に悪寒が走った。


「エアル、部屋に案内するよ。その後は色々手続きをして、そうだなぁ……本格的に動くは、明日からになるな。構わないかな?」

「私は大丈夫です。ドルフさんに身体を預けたのも同じなので」

「あのエアル」

「はい! 何ですか?」


 こうも無邪気な笑顔で返事をされると、ちょっとその言い方はイヤらしいぞ? とも言えない。


 ドルフは「アハハハ。何もない。部屋に案内するよ」と、施設内の住居施設に向かった。


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